深い青と白を基調に描かれた、一枚の絵。中央にはキラキラと輝く樹木、手前には美しく流れる川がある。森の動物や鳥が、木や川を取り囲むように思い思いに過ごし、たくさん浮いた風船のようなものが、幻想的で落ち着いた空間をにぎやかに演出している。

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描いたのは、宮城県女川町出身の絵本作家・神田瑞季さん。神田さんは東日本大震災で祖父を亡くし、がれき処理場の壁に絵を描いたことをきっかけに、絵本作家の道を歩み始めた。
震災から11年半が経ち、作品にも変化が生まれているという。

“使命感が強かったのがだんだん柔らかく” 被災地で活動続ける女性

高橋咲良 アナウンサー:
瑞季さん、こんにちは素敵な作品。今回の個展のテーマは?

神田瑞季さん:
「青の世界」をテーマに制作しました

宮城県女川町出身の絵本作家・神田瑞季さん(27)。「女川を色で元気にしたい」と、2021年から、3月11日に合わせて女川町で個展を開いている。
今回の個展は初めての9月開催で、9月10日から始まっている。

神田瑞季さん:
(今回は)3月には出せない色というか。3月は絶対元気な色が良いなと思っていたので、3月とはまた違った雰囲気の、大人っぽくて落ち着いた雰囲気のものをお見せできる良い機会というふうに捉えています

神田さんは、今回の作品を石巻市の実家で制作した。これまでとは違うことが、1つある。

神田瑞季さん:
キャベツが嫌いです、キャベツをペーストにしたものが嫌いです(笑)

そう言って、娘の弓(きゆ)ちゃんに離乳食をあげる神田さん。2021年12月に出産した神田さんにとって、育児をしながら作品を制作するのは初めてのことだ。

高橋咲良 アナウンサー:
木々の周りにたくさんの動物たちがいて、何だか明るい感じ

神田瑞季さん:
落ち着いた感じにしたいけど、悲しい感じにはなりたくないなと思って。こういう動物が絵に出てきたのは、弓ちゃんが生まれてきた後から

2011年3月、女川中学校の3年生だった神田さんは、震災で祖父の明夫さんを亡くした。そうした中、「きれいな色で生きる希望を持てるように」と神田さんが始めたのが、がれき処理場の壁に絵を描くことだった。

神田瑞季さん:
壁画・木を描き始めた時からすると、今こういう絵を描いている、こういう雰囲気のものを描いている自分というのは、想像がつかなかったと思う。気持ち的にはすごく穏やかになった。
あの当時、伝えなきゃ届けなきゃという使命感みたいなものがすごく強かったけれど、だんだん柔らかくなっていったかな、自分自身も、というのをすごく感じる

震災から11年半 変化の中にも変わらぬ思い「きれいな色で元気を」

冒頭で紹介したのが、今回の個展のメイン作品「あおい森の物語」。森の中で生きるさまざまな動物たちの息吹が聞こえてくるようだ。

神田瑞季さん
穏やかだけど、にぎやかというところが、きっと自分の中でまた1つ、新しい表現なのかなと思います

震災から11年と半年、少しずつ変わっていく神田さんの作品。ただ、神田さんが絵を描くこと、そこには変わらない思いがある。

神田瑞季さん
色を届けることで、色には人の背中を押してくれるような力があると思うので、元気になってくれたら、少しでも楽しい気持ちになってくれたら

高橋咲良 アナウンサー:
そういう思いで、個展をはじめたんですもんね?

神田瑞季さん
そこは変わらずこれからも、そうあり続けると思います

(仙台放送)