静岡県の認定こども園で、園児が通園バスに取り残され死亡した事件を受けて、広島県内でも保育の現場と企業がミスを防ごうと努力を続けている。

“出欠確認・保護者への連絡は基本中の基本”  通知に現場は戸惑いも

広島市の認定こども園「くすの木」では平日の朝、送迎バスを1台走らせている。運転手と保育士の2人体制で、登園する園児と実際の乗車人数に差がないかダブルチェック。

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「1、2、3、4、5、6。6名。私もバスの中を見てきます」と点呼する保育士。園のマニュアルに沿って、バスを降りてからも点呼に車内の再点検と、余念がない。

認定こども園くすの木・中川寿恵 主任:
1回でも見落としがあってはいけないので、確認は何回でもした方がいいかなと思っています

静岡県の川崎幼稚園ホームページより
静岡県の川崎幼稚園ホームページより

9月5日、静岡県の認定こども園で、3歳の女の子が送迎バスに置き去りになり死亡した。園側は「バスから全員が降りたか確認していなかった」と説明し、ずさんな管理体制が問題になった。

認定こども園「くすの木」代表の堀江宗巨さんは安全管理について「ミスや間違いがあっても二重三重のチェックをして、どこかでわかるようになっています。朝、きちんと出欠を確認して、欠席の連絡がない場合は保護者の方に連絡をするというのは、基本中の基本なんですね」と話す。

静岡での事件が発生した後、広島県は安全管理の徹底を求める通知を出し、国も送迎バスを持つ園への緊急点検を決めた。

ただ、さらなる対応を求める雰囲気に、現場は戸惑いを見せる。

認定こども園くすの木・堀江宗巨 代表:
「安全管理の徹底を」という通達がまわってくるんですけど、普段からやっていますし、やっている保育園や幼稚園がほとんどなんですね。「これ以上、何をするんですか?」というのが、現場で一生懸命やっている我々にとっては正直、思うところです。
さらに厳しい基準に合わせざるを得ないとすれば、かなり現場の負担が増して疲弊してしまいます

“ヒューマンエラーの最後の砦” 自治体・保育施設が注目する最新機器

そんな中、新たな動きも出てきている。

自動車部品などを扱う商社「三洋貿易」(本社・東京)は、子どもの置き去り事件をなくすため、広島事務所のメンバーを中心に、ルクセンブルクの企業が開発した”検知センサー”を2023年度に国内導入しようと準備を進めている。

三洋貿易は2022年、幼稚園や保育園の送迎バスの運転手などを対象に「園児置き去り」に関する実態調査を行った。「直近1年間でバスに子どもを残す経験をしたことがある」と答えた人は267人中15人。
そのうち12人は子どもがバスの中にいるということを把握した上で、やむを得ずその場を離れたとのことだが、残りの3人は”無意識”に子どもをバスの中に置き去りにしたことがあるとのことだった。

三洋貿易は「センサーがヒューマンエラーに対して最後の砦になることができる」と期待を寄せている。

三洋貿易 営業グループ グループリーダー・太田直樹さん:
レーダーセンサーによって子どもを検知するシステムです。非常に精度が高く、加えて透過性がありますので、シートの下に入っている子どもでも検知することができます

センサーが車内にいる人を検知(提供:三洋貿易)
センサーが車内にいる人を検知(提供:三洋貿易)

センサーが”置き去り”を検知すると、事前に登録した人にメッセージが送信される仕組みだ。アメリカではすでに50台ほど利用されている。

9月5日の静岡での事件以降、三洋貿易には、国土交通省をはじめ、自治体や保育施設などから50件以上の問い合わせが寄せられているという。センサーの導入に向けて、2022年中に実証実験を行う予定だ。

三洋貿易 営業グループ グループリーダー・太田直樹さん:
広島県とも話をしているところです。まだこれから詳細を詰めていきますが、社会全体で子どもを守っていくということを我々も考えながら進めたいと思います

一方、保育の現場からは「日常的に職員と保護者が密に連絡を取り合う関係性がなければ、最新機器があっても再発防止は難しい」という指摘もある。
二度と悲劇が繰り返されぬよう、基本的な安全管理と最新機器を連携させ、社会の責任として子どもの命を守っていかなければならない。

(テレビ新広島)