長年、世界をフライトしてきた客室乗務員(CA)が、新型コロナウイルスの爆発的な流行で働く場を失い、全く畑の違う地方自治体へ。
下田美紀さん(36)と高田美津子さん(31)は、“自ら志願”して岡山県庁への出向を決めたという。

コロナでフライト激減...初めてのデスクワークに苦戦も

下田美紀さん:
月に80~90時間フライトしていたのが、7時間になった事があって

岡山・倉敷市出身で2012年に日本航空(JAL)に入社した下田美紀さんは、客室乗務員として世界中をフライトしていたが、コロナ禍で生活が激変した。

下田美紀さん:
会社からiPadを支給され、テレワークになった。内容は「JALの他部署の仕事を知ろう」とか…いろいろな勉強。最初の頃は「空いた時間で英語や中国語を学ぼう!」とモチベーションを保っていたが、1年近く続くと「本当にこれでいいのかな」と。もっと自分が知らない世界を勉強したいと思い始めた時、ちょうど出向の話があった

下田さんは、社内で募集があった“岡山県庁への出向”に応募。
新型コロナの流行開始から約1年たった2021年4月、社会人になって初めて故郷で、そして地上での勤務が始まった。

日本航空(JAL)の客室乗務員・下田美紀さん
日本航空(JAL)の客室乗務員・下田美紀さん
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志望動機に「フルーツが大好きなので、桃やブドウのPRに携わっていきたい」と書いた下田さんは、岡山県農林水産部の“対外戦略推進室”に配属された。
しかし、生まれて初めてのデスクワークで…

下田美紀さん:
最初の頃は、メールの(書き方の)ルールも全くわからなかった。CA時代は社外の人とメールをすることがなかったので…。皆さんに教えてもらい、場数を踏んで慣れていった

自分を成長させる期間「これを逃したらないチャンス」

一方、下田さんの1年後輩、高田美津子さんは大阪府出身。同じく“岡山県庁への出向”に応募した。初めての土地に行くことを決めた理由とは?

日本航空(JAL)の客室乗務員・高田美津子さん
日本航空(JAL)の客室乗務員・高田美津子さん

高田美津子さん:
夫が4年前から岡山県内で働いていた。コロナでフライトが減り、リフレッシュ休暇を取って岡山に来ていた。そんな時、「岡山県庁で働ける」と聞いて。1回も地上の間接部門にいたことがなかったし、すごくいいチャンスだと、これを逃したらないかもしれないと思って

ここは自分を成長させる期間だと思った高田さん。
県外から来たからこそわかる、岡山の良さが伝えられればと広報の仕事を希望。2021年4月、岡山県庁の“公聴広報課”に配属された。

高田美津子さん:
新鮮だったのはマイデスクがあったこと。職場が飛行機なので、これまでデスクはなかった

人間としても成長 “否定ではなく応援を”

それぞれの部署の仕事だけでなく、2人一緒にインスタグラムを使った情報発信もしている。
そこでフォトコンテストを実施、受賞した作品で、岡山県をPRする“空港の荷物タグ”も作った。

岡山県をPRする“空港の荷物タグ”
岡山県をPRする“空港の荷物タグ”

下田美紀さん:
県庁に来てすごいと思ったのは、「これをやりたい」と思ったら、すごく協力してくださって、後押しをしてくれる。JALに帰った時も、後輩がこれをしたいと言った時に、否定じゃなく応援してあげられるようになりたいと思った。先輩としての振る舞いを大きく学んだ

出向は1年の任期だったが、2人とも会社に「残りたい」と伝え、岡山県庁での2年目を迎えている。

下田美紀さん:
限られた期間で、できることを精いっぱいやりたい

高田美津子さん:
リラックスして働かせていただいているのが一番

「まだまだ岡山のために貢献を」

公聴広報課で県の公式SNSを担当する高田さん。「2023年2月に“晴れの国おかやま検定”があります!」とインタビュー中もPRに余念がない。
対外戦略推進室で、岡山県産の果物をPRする仕事の下田さん。上司は「コロナ禍で実現できていない、海外でのPRを下田さんにぜひ」と話す。まだまだ2人は岡山に貢献するつもり。

コロナ禍で多くの客室乗務員が全国各地に出向した。そして旅客需要が戻りつつある今、空に返ってきている。新しいスキルを身につけた客室乗務員がもてなす空の旅。
これまでとは何かが違うと、感じることがあるかもしれない。

(岡山放送)

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