“毒親育ち”が抱える悩み

子供の悪影響となる毒親はなぜなくならないのか。その要因の一つとして考えられるのが、毒親に育てられた子供自身が毒親になってしまう可能性があることだ。

編集部では、幼少期の子供は毒親的な考え方を無意識に受け継いでしまうことがあるといい、間違いに気付かなければ自分の子供にも同じように接し、気付いたとしても極端に真逆な接し方をしてしまうことがあるという話を以前紹介した。

(参考記事:なぜ人は「毒親」になってしまう? 背景には“親心と支配”の勘違いがあった

毒親育ち故に子育てに悩む人もいる(画像はイメージ)

実際、毒親育ちの子供には、大人になってからも「自分も毒親になるのでは」との恐怖があるという。編集部が「毒親」に関するエピソードを募集したところ、こうした経験談も寄せられた。

「自分で考えた進路は全て否定され、親が認めてくれる範囲の進路を選んできて、今、一応普通の家庭を築いているけど、自分に自信がなく、自分を生きていないようで辛い。自分の子育てを通して、心理学や毒親の本やブログを読んで、生きづらいのは育てられ方と気付き、今生き方考え方を見直しているところ。自分のなかで何でも育てられ方のせいにしている自分もいて、それが嫌。毒親は世代間で引き継がれると言うけど、自分の子育てを見て本当にそう思う。子供に引き継がせたくないので、今、向き合っている」(投稿者:もこちゃんさん)

たしかにこれは悩ましい問題だろう。こうした毒親の連鎖を断ち切る方法はあるのだろうか。

そこで、毒親に育てられ、自らも毒親になった経験をもつカウンセラー・高橋リエさんに、実情と自分自身が毒親から脱却するためのポイントを伺った。

長男の不登校がきっかけで「毒親だった」と自覚

――高橋さんが考える毒親とは、どんな親なの?

私の定義では、「子供の気持ちを思いやれず、不安のあまり、何でも自分の思い通りにコントロールせずにはいられない親」です。常に不安いっぱいで他人や世間への警戒心が強く、自分の不安を解消するために家族をコントロールします。心配性で過干渉になるのですね。

そして、「頑張らなければいけない」などの「ねばならない」という思い込みが強く、子供に強要しますし、自らもそれに忠実に生きていることが多いです。私は毒親のこうした思い込みを“昭和の強迫観念”と呼んでいます。

また、特徴的なのが悲しみや恐怖、喜びなどを感じない“感情まひ”の状態であることです。自分の気持ちにフタをして感じないようにしているため、子供の気持ちに共感したり、つらさに寄り添うことができず、すべて思考で処理して「こうであるべき」という正論で返すので、子供を傷付けてしまいます。
 

高橋リエさん

――ご自身が「毒親だった」と気付いた経緯は?

中学受験を終えた小学生の長男が不登校になったことでした。最初は子供の個性の問題だと思っていましたが、数々の失敗を経て長期化・悪化させてしまい、やっと「全部、私が問題なんだ」と腑に落ちました。そこから自分がどんなに異常だったか、それは自分個人の問題だけでなく、親やそのまた親から連鎖していたと分かったんです。


――自覚したご自身の問題とは?

私の毒は、親から受け継いだ「人より優秀でなければ生きていけない」「成果を出して評価されないと生きていけない」といった強烈な強迫観念でした。この強迫観念が無意識に子供を圧迫して、負担となっていたんです。

私は親に怒られたことがほとんどなく、勉強しなさいと言われたこともなかったため、自分が毒親育ちだと気付きませんでした。幼い頃から「いい子」でしたし、親の期待に応えてきたとも思います。ただそれは、怒られる前から親に強い恐怖を感じて、必死で我慢して、見捨てられないように努力していた、ということだったんですね。
 

毒親と自覚し、脱却するためのポイントとは?

――どのようにして、毒親から脱却した?

自分に根を張っていた強迫観念を手放すこと、不安や焦燥感をなくすこと、心から安心できるようになることを心がけました。強迫観念は恐怖の感情とセットになっているため、強迫観念が強いと常に身体が過緊張となっています。この緊張を緩めることから始めました。

こうした努力と「頑張って評価されなければいけない」などの思い込みを徹底的に洗い出すことを続けるうちに落ち着いてきて、ある日「いま、不安も焦りもないなあ」と実感できたんです。以来、不安にかられた反射的な言動や行動はなくなり、穏やかに過ごせるようになりました。

親としての課題はまだありますが、子供を一人の人格として尊重できるようになったと実感しています。毒が抜けて、普通になっただけとも言えますが。長男もだいぶ元気になり、自分なりの進路を決めてマイペースでやりたいことをやっています。


――毒親と気付いた場合、子供にどう接するべき?

毒親だと気付いたけど変われていない人は、「自分が思ったことを子供にそのまま言わない」と決めてください。そして「子供に〇〇させたい」と思うことは全て、自分が安心したいだけだと心してください。それは「私を安心させなさい!」と子供に命令しているのと同じです。

そして、子供を一人の独立した人格として尊重し、常に「いまどう感じているんだろう」と思いやってください。子供はちゃんと自分で考えています。親から指示・命令・提案をせずに、自分から言ってくるのを待つこと。子供の言うことを「そうなんだ、わかった」と受け入れること。これができれば、毒が子供に及ぶのを最小限に抑えられるはずです。
 

子供がどう感じているか思いやることが大切という(画像はイメージ)

毒親には世代間の違いも影響している

――毒親と気付ける人と気付けない人の違いはどこにあると思う?

一般的には強迫観念が強い人ほど、「私は正しい」という思い込みが強い人ほど、自分が毒親だとは気付きにくいと思います。ただ、強迫観念や思い込みが強くても気付ける人もいるので、家族や自分の問題を解決しようという意志が強い人は、変われると思います。

私個人としては、毒親の毒である不安や恐怖、感情まひは、戦争(敗戦)の後遺症だと考えています。戦時中や敗戦直後に子供だった世代に、毒親の特徴が顕著にみられるからです。彼らを第一世代とすると、私は第二世代、今の若い親が第三世代と言えるでしょうか。

この間に、日本は戦後の焼け野原から豊かな国へと急変貌し、ネット社会となりました。こうした社会背景の違いによる世代の差が、気付ける親と気付けない親を分けている気がします。


――第一、第二、第三の世代の違いとは?

まず、第一世代は自分が毒親だと気付くことはかなりまれだと思います。なぜなら子供がどんなに文句を言おうと、彼ら自身の子供時代がよほど苛酷だったからです。

そんな親の下で育った第二世代では、子供が精神を病むなどして追い詰められると自分の問題に気付くこともあるでしょう。ただ「私は正しい/いい親」という思い込みが強いと、どこまでも子供の問題だ、と考えてしまいがちです。

仮に「あなたは毒親だ」と非難されても、子供自身はそこそこ社会適応している。そんな場合も現実でなんとかなっているため、親は自分の問題を気付けないことが多いです。つまり、追い詰められて苦しまないと自分が毒親だとは気付きにくいのです。

第三世代以降は、物心ついたときからネット社会で情報が収集しやすいので、親の問題にも自分の問題にも気付きやすいと思います。中には子供をもつ前から、「このままでは自分は毒親になってしまうから、今のうちになんとかしたい」と考える人たちもいますね。
 

親よりも子供や自分を最優先に

――親が毒親な人に呼びかけたいことはある?

干渉やコントロールしてくる毒親が嫌な場合には、心理的・物理的な距離で境界線を引き、ご自身と家族を守る必要があります。親の支配下にいる限り、本来は子供に注ぐべきエネルギーを親に吸い取られてしまい、家族に害が及ぶからです。

親に罪悪感を感じて、距離をとれない人も多いですが、この罪悪感の正体は「親に嫌われるのが怖い」、つまり親が怖いから動けないのです。衣食住を提供してもらい、教育費を出してもらったことには感謝する。ただ、もう親を怖がる必要はないのですから、これ以上、自分が傷つかないよう、人生を支配されないよう、自分と家族を優先しよう。と決める必要があります。

毒親は常に交感神経が高ぶっていて過剰に警戒しているような状態なので、口で何を言おうと自分を守ることが最優先事項です。親にエネルギーを奪い取られないよう、子供が1番、自分と配偶者が2番、親は3番という優先順位で、物事の選択・決断をしていただければと思います。


――この場を借りて、伝えたいことはある?

これまで3000人を超える毒親育ち、子供で悩む毒親とお会いしてきましたが、時代の急激な変化に人々の価値観の変化が追いついていないことを痛感しています。「妻は夫に従い、子は親に従う」という価値観をひきずる世代は、子供にもその考えを刷り込みます。

そのため、職業選択や結婚相手、どこに住むかも、個人の自由だと憲法で定められているにもかかわらず、すべて親にお伺いをたてて、安全志向の親に従って生きてきた。そんな人が今も山ほどいるのです。それが本人の価値観と合わない場合、生きづらさが強まってきて、何かおかしいと気付いて親の問題にたどりつく。そういう人が多いのです。

毒親で悩む人は本来、自由志向なのだと思います。ぜひ、勇気を出して親の価値観に造反する。そんな“遅れてきた反抗期”で親の鳥カゴから脱出し、自由に羽ばたいてほしいと願います。
 

毒親は自分が毒親だと気付きにくいもの。自身の行動や言動を振り返ってみよう(画像はイメージ)

子供のことで不安や悩みを抱えるのは、親としてはむしろ当然かもしれない。だが、その感情のままに接すると、子供に圧力や負担を与えてしまうこともある。高橋さんの場合は、子供の不登校で気付くことになったが、そうしたきっかけがない家庭も多いはずだ。

心当たりがある親世代は、自分が安心したいがために子供を追い詰めていないか、自身の行動や言動を振り返ってみてほしい。
 

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