毒親ってどんな親?編集部にも経験談が寄せられる

皆さんは「毒親」という言葉を聞いたことがあるだろうか。ネグレクトや過干渉、暴力などのさまざまな行為によって、子供の成長に悪影響を及ぼす「毒になる親」のことだ。

言葉自体は以前からあったが、近ごろは国内でも認知が広まり、SNSなどでは自分の親が毒親だったと打ち明ける投稿をみるようになった。

子供にとって「毒になる親」のことを毒親という(画像はイメージ)
子供にとって「毒になる親」のことを毒親という(画像はイメージ)
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実際に編集部で「毒親」のエピソードを募集したところ、このような経験談も寄せられている。

「長女の私を愚痴のゴミ箱にした。10才頃から始まった。幼くも思春期だった。当時は母をかわいそうと思い同情していたが、思い返せばそれは虐待だった。父方の親族の悪口を言いながら、お前は父親にそっくりだと繰り返した。私を心配しているフリをして話しかけるが、わたしの話はほとんど聞かず、いつのまにか親族や近所の悪口を永遠に話続けられた。大学生になって初めて聞きたくない、嫌だと反抗したら、聞いてよ!と逆切れされた。現在40歳になるが、表面的に関係は保っているものの、母と話すことは恐怖である」(投稿者:メグさん)

また、罵声や暴力を日常的に浴びせられた結果、家族のつながりを失ったという人も。

「基本は出掛ける母の代わりに家に残り家事をこなしていた。兎に角家族の最優先事項は母の指示。従えないと逃げる事も許されず母のサンドバッグにされた。今は自立して家を出たが、母の許しを貰わずに勝手に独立した私を『あんな奴娘じゃない』と妹弟に言いふらし、妹弟に連絡を取る事さえ許さない。もし隠れて連絡を取ったと知られれば妹弟に怒りの矛先が向く。だから私はもう家族の誰とも連絡を取らないし、関わりたくもない」(投稿者:姐さん)

こうした経験談で特に目立つのが、毒親に育てられた子供は心に深い傷を負い、大人になってもその影響に苦しんでいるという点だ。毒親はなぜ生まれ、その背景には何があるのだろうか。

今回は自らも毒親と絶縁した経験を持ち、毒親・親子問題の専門家として活動する影宮竜也さんに、「毒親とは何か?」からお話を伺った。

影宮竜也さん
影宮竜也さん

毒親は子供を“ひとりの人格を持った人間”だと理解できない

毒親についてまず浮かぶのが、“毒親”と“普通の親”とは何が違う?という疑問だろう。
どんな家庭でも親子間で意見が対立したり、けんかしたりすることはあるはずだが、その全てが毒親とは限らないはずだ。一般的な親子関係とは、いったい何が違うのだろうか。

影宮さんによると、毒親は子供を“ひとりの人格を持った人間”だと理解できず、子供の人生を無自覚に思い通りに支配しようとする傾向があるという。実際には、下記のようなパターンの行為を繰り返すのが、毒親と呼べるとのことだ。

1.肉体的暴力や性的暴力を振るう親(体罰やしつけと称した折檻をする)
2.精神的暴力を振るう親(暴言などで否定・不安を子供の心に植え付ける)
3.過干渉する親(子供の行動を監視して先回りする。自主性を奪う)
4.ネグレクトする親(子供を放置して関心を持たない)
5.価値観への同意・強制を求める親(自身の勝手な価値観を押し付ける)

子供は知らず知らずのうちに悪影響を受けているという(画像はイメージ)
子供は知らず知らずのうちに悪影響を受けているという(画像はイメージ)

そして、子供はこうした毒親のもとで育つと、自信が持てない、自分の考えが分からない、強い不安感、理由もなくイライラする、他人への不信感などの問題を抱えやすくなるという。

「親から否定され続けることで自信が持てなくなるほか、行動を先回りされるので『自分で判断すること』を学べずに大人になってしまいます。親の夫婦仲が悪かったり、親との交流があまりない、子供に無関心な親に育てられると結婚願望が薄い傾向にもあります」(影宮さん)

コンプレックスを子供で解消しようとする傾向も

それでは、毒親が生まれてしまう背景には何があるのだろう。こちらはさまざまな要因が考えられるが、大きな要因としては“親自身が毒親に育てられた”ことが考えられるという。

影宮さんによると、幼少期の子供は親を否定することを知らないため、毒親に育てられるとその考えを無意識のうちに受け継いでしまう。そこに気付かなければ、自分の子供にも同じように接してしまい、気付いたとしても極端に真逆の接し方をしてしまうことがあるというのだ。
※例えば、ネグレクトの家庭で育つと自らもそうなるか、逆に過干渉となる可能性がある。

真逆の接し方で毒親になってしまうこともあるという(画像はイメージ)
真逆の接し方で毒親になってしまうこともあるという(画像はイメージ)

また、“親が強いコンプレックスを抱えている”可能性もあるという。親が自らの不幸の原因をコンプレックスによるものだと思い込んでいると、子供にその不満を投影して解消しようと、価値観を押し付けたり、本人の意思と関係なく強制したりするというのだ。

「例えば、高卒で苦労したと思い込んでいる毒親は子供に大学進学を強要したり、入学後に過剰な期待をかけてしまう。これも親自身の人生経験が原因で起こる価値観の押し付け行為です。毒親本人は子供に悪影響を与えていることに気付かないことが多いですね」(影宮さん)

いくつあてはまる?チェックリスト

今回は影宮さん監修で、毒親の家庭によくみられる傾向のチェックリストを作ってもらった。
8項目のうち、当てはまる数が3つ以内なら「許容範囲」、4〜5つは「問題あり」、6つ以上は「何らかの対処をとるべき」というので、あなたの家庭環境と比べてみてほしい。

【毒親の家庭によくみられる傾向のチェックリスト】
1.両親の夫婦仲が悪い
2.不平不満が多い
3.否定的な発言が多い
4.家族の意見に耳を貸さない
5.他人をあまり信用しない
6.都合が悪いことを周囲や家族のせいにする
7.家庭以外での外面がよい
8.親自身も親との関係性があまりよくない

チェックリストで確認してみよう
チェックリストで確認してみよう

子供は「嫌なことは嫌だ」と意思表示するべき

既に毒親に悩んでいる人のほか、チェックリストの結果によっては親が毒親かも知れないと感じた人たちもいるはずだ。その場合は、どのように対処すればいいのだろうか。

影宮さんに聞いたところ、既に毒親の被害を受けている場合、成人して経済的に自立できるのであれば、物理的に親元を離れることを考える。それができない環境であれば、毒親の支配を拒絶して、精神的に離れることを考えるべきだという。

「自立が難しい場合は、勇気を出して『嫌なことは嫌だ』と伝えましょう。それができたら悩んでいない、言っても分かってくれないという人もいるでしょう。それでもいいんです。意思表示をすることで適切な距離感を親との間で持てるようになります。あいまいな態度だからこそ、毒親も意見や価値観を押し付けやすいところがあります」(影宮さん)

「嫌なことは嫌」と意思表示しよう(画像はイメージ)
「嫌なことは嫌」と意思表示しよう(画像はイメージ)

その一方で、毒親は支配を「これは愛情の一種」として考えていること、子供はそんな親とずっと一緒に生活してきたため、虐待などの極端な出来事が起きないと毒親と気付きにくいという。さらに、自分の親が毒親だと認めることは、子供にとってもつらいことだろう。

「もしも親に疑問を感じたのなら、一人の人間として見たときに友達になりたいか、結婚したいと思えるかを自問自答してみてください。嫌だと思うならその理由も見つかるので、そこを踏まえてこの家庭にいていいのかを考えてみてください。子供の人生は親のためにあるわけではありません。大切なのは、あなた自身の人生です」(影宮さん)

そして、毒親に当てはまってしまうような親には、子供に社会のルールを教えるのは大切なことだとしつつ、それが押し付けになっていないかどうかを考える必要があるとも呼びかけた。

子供の要望に応えてあげるのは親心ですが、子供が望んでいないことを強制すると支配や価値観の押し付けとなります。この違いは、親子の間で信頼関係が構築されているかどうかです。親子の関わりを大切にして、自主性を奪わないようにしてあげてください」(影宮さん)

親に育ててもらった恩を忘れてはいけないが、一人一人の人生は親のためにあるわけではない。
子供は自分の人生が親に奪われていないかどうか、親側は親心と支配を勘違いして接していないかどうか、今一度考えてみるとよいだろう。

 

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「聞きコミ PRIME online」に、周囲と比べると何か違う、生きづらいと感じる原因はこれかも…あなたが体験した・もしくは聞いたことがある毒親エピソードを聞かせて下さい。


・「この子は私がいないとだめなのよ」が口癖で、実家を離れた今も、毎日電話でダメ出しをされ、電話に出ないと執拗にかけてくる
・親に人間関係の悩みを相談しても「お前が悪い」といつも人格を否定される
・子供の幸せに嫉妬する親、「ああいうタイプは信用できない」と難クセをつけ、恋人と強引に別れさせられた
・今、子育てをしているが、結局自分が親にされたのと同じことをやってしまっている

※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。