福井・鯖江市の公共施設「神明苑」は、宿泊施設や温泉、食事が楽しめる憩いの場として市民に愛されている。
ただ、設立から約半世紀経ち、その存続をめぐって利用者と所有者の鯖江市が対立している。市民の笑顔があふれる施設で、一体何が起きているのか?

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公共温泉が取り壊しの危機…老朽化にコロナ禍が追い打ち

7月17日、神明苑の存続を求める市民約50人が集まった。議題は、今後の活動方針について。

存続を求める市民からは、「市民のための市長でないなら、辞めてもらわないといけない」「市長さんがこの施設を壊したいというなら、どうぞ壊しなさい。そのかわり市長を代えますと言いたい」などといった声が上がった。
市民の口から過激な言葉が次々と飛び出した。原因は神明苑の温泉施設にある。

鯖江市のほぼ中心に位置しながら、天然の温泉が楽しめる。
神明苑は約50年前に誕生して以来、市民の憩いの場として親しまれ、ピークの2014年には年間6万人以上が利用していた。

ただ近年、施設の老朽化が目立ち、利用者は減少。さらに新型コロナウイルスが追い打ちをかけ、2021年の利用者はピーク時の6割近くにまで落ち込んだ。

利用者の減少は、施設の経営を圧迫している。この3年間で約7,000万円の赤字を計上した。不足分は鯖江市が負担、つまり市民の税金が投入された。

存続求めて署名活動 市長に直接手渡しも…議論は平行線

所有者の鯖江市は、全面リニューアルに向けて準備を始めた。2022年5月の記者会見で、佐々木勝久市長は…

佐々木勝久・鯖江市長:
市としてはさまざまな点を考慮して、神明苑の現施設の取り壊しも選択肢に含めた全面的な機能の見直しを行い、リニューアルすべきであると考えています

特に、維持管理に資金がかかる温泉設備は撤去する方針を示した。
仮に温泉施設を残した場合、改修費は約2億円と市は試算している。

ただ、利用者からは、温泉の利用する高齢者らから「生活の一部で絶対なくしたらあかん」「なくなると、私たちの便利が悪くなる」「老人にとっては楽しみの場所です。なくなったら寂しい」といった声が上がった。

市の方針に反対する利用者は、5月に動きを起こした。温泉の存続を求めて、署名活動を始めたのだ。
「大変、本当に。でも、お年寄りらがお風呂に入りながら『きょう一日よかったね』って話ができる場所をなくさないでほしい。少しでも長く運営してほしいという思いだけ」と願いを込める。
1カ月間で署名約1万3,000筆を集め、佐々木市長に直接手渡した。

署名を集めた利用者:
市の都合もあるでしょうけど、年寄りに力を与えてください。これが署名です。ぜひよろしくお願いします

佐々木勝久・鯖江市長:
ありがとうございます。みなさんのご意見や、集めていただいた方の思いはわかりました。

ただ、この会合から約2カ月。両者の合意はなく、議論は平行線をたどっている。公共施設をめぐる争いは、今後ほかの自治体でも増えてくると専門家は指摘する。

福井大学・国際地域学部 田中志敬准教授:
建てられた時の需要が100だとすると、人口が減少した分の余剰施設が出てくる。また納税者が減ることで、1人当たりの負担が過剰になることもある。存続するのであれば、施設を複合化したり、民間資本を入れるなどしないと市民や県民の負担が増える。これからこそ、この議論が出てくる

県内の公共施設は530あるが、その約半分は更新の時期とされる築30年を超えている。
神明苑だけでなく、多くの公共施設のあり方が問われている。

(福井テレビ)