独自のこだわりを持つのが特徴の広汎性発達障害のある男性が、ノートに書き続けた数式をデザインに変え、ファッションショーに挑戦した。周囲との関わりの中で、一歩ずつその歩みを進めている。
コミュニケーション苦手でも… “数式”通して現れた理解者
真剣なまなざしで数式を書いているのは、新潟・長岡市に住む馬場日向さん(20)。コミュニケーションが苦手で、独自のこだわりを持つことが特徴の広汎性発達障害がある。
この記事の画像(22枚)ノートいっぱいに広がる数式。小学校高学年以降、不登校になったが、こだわりの数式をノートに書き続けてきた。
その数式にデザイン性を見いだされ、今では「アーティスト日向」として数式をデザインした商品を販売。さらに、この数式の意味を理解する人物も現れた。
それが東大卒の元数学教師・黒岩秩子さん。この日は黒岩さんとともに、数式を解説する「数式トークライブ」を開催。
東大卒の元数学教師 黒岩秩子さん:
この間から彼と色々やりとりしていて、私、間違いを見つけたの。本当に感動。珍しいよ。間違えることなんてないんだからさ
馬場日向さん:
いや、そんなことない(笑)
これまで人前に立つことはあまりなかった日向さんだが、自分のこだわりを理解してくれる人の存在が自信にもつながっているようだ。
観客:
数学を学んでいて分かるから、それで日向くんも心を開いて先生とお話したんじゃないかなと思った
東大卒の元数学教師 黒岩秩子さん:
「6度だったら、12度だったら」と、自分で問題を作って自分で解いていくわけだから、それはすごくおもしろいと思う
自然と口数が増え、表情も明るくなる日向さん。
(Q.黒岩先生が自分の数式を理解してくれるのは?)
馬場日向さん:
うれしい
日向さんの母・馬場裕子さん:
数式の本来の意味を理解してもらえたというのは、彼自身のやっていることを芯から理解してもらえたということ
様々な悩み抱えるモデルたち ランウェイ経験を自信に
少しずつ自信を身につけ、その表現の幅が広がっていく。7月16日に行われた数式アパレルブランドのファッションショーでは、自らモデルに挑戦。
(Q.恥ずかしい気持ちは?)
馬場日向さん:
ない
(Q.緊張しないで頑張れそう?)
どうだろ(笑)
ファッションショーのテーマは「FLAME LESS(フレームレス)」。様々な枠にとらわれてきたモデルたちが、ランウェイでありのままの自分を表現する。
モデル こうちゃんママさん:
今までは枠を気にして生きてきたところがある。このショーに出て、これからはママとして堂々とやっていきたいという気持ちを家族に見せたい
それぞれの願いを乗せて幕を開けたファッションショー。人生初のランウェイを全力で楽しむモデルたちの笑顔が弾ける。
そして、日向さんの番がやってきた。堂々とランウェイ歩く日向さん。その目は自信にあふれていた。
袖に戻ると、仲間からの歓声と拍手で思わず笑みがこぼれる。
(Q.ファッションショーはどうだった?)
馬場日向さん:
楽しかった
(Q.緊張は?)
した
(Q.衣装は?)
暑い(笑)
無事本番を終え、ほかのモデルも清々しい表情を見せていた。
モデル 白井健太郎さん:
娘も障害を抱えているけど、自分たちから殻を破って発信していくことで新しい道を開けると感じている
モデル 白井健太郎さんの娘・夏希さん:
ウサギの衣装がかわいくて、楽しかった
日向さんの母・馬場裕子さん:
人と接する、人と関わり合う場面が増えたこと、その度に確実に階段を上がっているなというのは実感している。私の中で大きな期待はしないけど、希望は持ち続けるとずっと思っている
周囲との関わりの中で芽生えていく自信が、日向さんの今後の歩みを後押ししていく。
(NST新潟総合テレビ)