朝日新聞の川柳コーナーには驚いた

朝日新聞の川柳コーナーが炎上した。7/16付の「朝日川柳」は7本とも亡くなった安倍晋三元首相や国葬について詠んでおり、たとえば「忖度はどこまで続くあの世まで」など安倍氏を揶揄したものだ。

多くの政治家から「さすがにこれはひどい」「安倍元首相の暗殺をあざ笑うかのよう」などと批判の声が上がった。前日分も同様で、選者は80歳代の元朝日記者。天声人語を書いていたという。元朝日ならなるほどとも思うが、全国各地から居住地とおそらく実名を名乗ってこのような川柳を投稿して来る人がこれだけいるのかと驚いた。

問題の朝日の紙面を写メで撮ったものがSNSに投稿されたのを見て「コラかと思った」というコメントが相次いだという。「コラ」とはフォトコラージュの略から転じて合成写真を指すそうだ。ネット民も驚いたのだろうがこれは「合成」ではなく「本物」だ。

ガルージン駐日ロシア大使と並んで焼香した

7/11に芝・増上寺で行われたお通夜に行ってきた。事前の発表では近親者や関係者だけで行われるが、一般人も献花できるという事だったのでとりあえず行ってみたのだが、どうやら待てば焼香もさせてもらえそうだったので列に並んだ。

安倍元首相の通夜が営まれた東京・増上寺には、一般の弔問客用の献花台も設置され、多くの人が訪れた(7月11日)
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暑い日だったので汗だくになって1時間半ほど並んで通夜会場に入って焼香をし、昭恵夫人に一礼して帰った。記者はニュースを第3者の立場で冷静に見るべきだ。だから通夜に押しかけるのはご遺族に迷惑だろうとは思ったのだが、やはり安倍さんを直接取材してコメントしたり原稿を書いたりしてわずかだが関わった以上、何かけじめをつけたいというか、きちんとお別れをしたいと思った。

僕の後ろには駐日ロシア大使のガルージンが並んでいた。政治家らVIPは係の人が見つけて行列とは別ルートで案内しているのにガルージンには案内は来なくて、結局ずっと僕の後ろにいて、最後は並んで焼香した。制裁中だから案内がなかったのか、自分で断ったのかわからないがセキュリティ上は危険だ。

ガルージン駐日ロシア大使

ガルージンは日本語が堪能で若い頃はゴルバチョフやエリツィンの日本語通訳をしたので、安倍・プーチン会談にも何度も同席しただろうから安倍さんとも面識があったのだろう。彼もけじめをつけたかったのだ。 

焼香の列には元首相秘書官や元番記者らおそらく何かしら関わりのあった人たちが並んで、安倍さんとのお別れをした。

何日か後にFacebookに「東京の人は献花や焼香をして気持ちの整理ができるからうらやましい」と投稿している人がいてなるほどと思った。全国各地に安倍さんとのお別れをしたい人がいるのだ。それはたぶん安倍さんの死を揶揄する人よりはるかに多くの人達なのだろう。

安倍さんと静かにお別れしたいだけ

だから岸田首相が安倍さんの葬儀を国葬に決めたと発表した時は「岸田さんやるな」と思った。もちろん野党やメディアから反対論や慎重論は出ているのだが国民はどう思っているのか。僕は岸田首相が7/14に国葬を発表した後の7/16、17の週末のメディアの世論調査で国葬の是非を当然聞くだろうからその結果を待った。

岸田首相は記者会見で、亡くなった安倍元首相について、今年秋に「国葬」を行うことを明らかにした(7月14日)

NHKの調査では国葬実施を「評価する」が49%で「評価しない」38%を上回ったが、朝日新聞と毎日新聞は調査をしたのに国葬について聞かなかった。なぜなのだろう。

個人的には僕は国葬でなくていい。これ以上死者を揶揄する言葉を聞きたくないからだ。税金を使うなと言うなら皆で香典を持ち寄ればいい。5000円を1000万人が持って行けば500億円なのでお葬式の費用は賄える。5000円がない人は1000円でも500円でもいい。来たくない人は来なければいい。だが世界中から元首クラスが弔問に訪れるのに国葬にしないわけにはいかないだろう。

安倍元首相の出棺には、多くの一般弔問客の姿があった(東京・増上寺 7月12日)

8年8カ月の間、日本の首相を務めた人が選挙期間中の街頭演説で凶弾に倒れ亡くなった。岸田首相が国葬にすることに決めた。それでいいと思う。一部野党やメディアが反対し、学者や弁護士がいろいろ言うが、議論する気にもならない。僕を含め多くの人は安倍晋三さんと静かにお別れをしたいと思っているだけなのだ。

【執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫】

記事 298 平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。2020年4月から立命館大学客員教授。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。