最大震度6強を観測した中越沖地震から、2022年で15年となる。被害が大きかった新潟県柏崎市では、新たな防災プログラムが作られ児童たちが学んでいる。
また、原発事故と自然災害が同時に起きる複合災害への備えについて現状と課題を取材した。
地震後に生まれた子ども…独自の教材で“備え”への意識高める
7月11日。柏崎市の新道小学校で3、4年生が学んでいたのは、中越沖地震についてだ。
この記事の画像(22枚)まちから防災コーディネーター 野村卓也さん:
右の写真は商店街。ガラスが割れたり、家が倒れてしまったり、電車もゴロンとなった
自分たちが生まれる前の災害について、新鮮な思いで耳を傾ける子どもたち。
2007年7月16日。柏崎市や刈羽村などで最大震度6強の地震が発生し、柏崎市では14人が亡くなり、2万8000棟を超える住宅に被害が出た。
地震の記憶を受け継ごうと、市では15年の節目に合わせてあるものが作られた。
それが新しい防災教育プログラム、「マモルプログラム」。
地震の教訓を伝える拠点「まちから」と柏崎市教育委員会が発行した、独自の教材だ。2年をかけて制作し、2022年4月に発行にこぎ着けた。
まちから防災コーディネーター 野村卓也さん:
自然の猛威として災いが出てきたときに、自分たちの地域でどういうことが起こるか、この柏崎だけでも得ることができる
マモルプログラムでは、四方を海と山に囲まれた柏崎市で想定される、地震や津波・大雪などの災害ごとに、身の守り方や日頃の備えがまとめられている。小中学校の授業で活用する。
この日のプログラムで、児童たちは、非常持ち出し袋に何を詰めておくか話し合っていた。
「日常で使っているものをまず選んで…」「でも寝袋がないと眠れないんじゃない?」「体育館にあるマットを使えばいいじゃん」
活発に意見を交わし、備えの大切さを学ぶ。
児童:
食料や水分が大切だと思った。また被害が出たときにしっかりと備えて生活していきたい
まちから防災コーディネーター 野村卓也さん:
(マモルプログラムを通して)自分に何が必要か考えられるし、みんなの意見を聞きながら考える時間というのは貴重だったのでは
15年前には原発で火災も… “複合災害”発生時の行動は?
中越沖地震の経験が伝える“備え”の大切さは、いわゆる「複合災害」についても当てはまる。
柏崎刈羽原発では当時、運転していた3号機の変圧器で火災が発生。地震などの自然災害に、原発事故が加わる複合災害が起こり得ることを示した。
柏崎市 防災・原子力課 武本俊也 課長:
複合災害の場合、自然災害による人命への直接的なリスクが高い場合には、まず自然災害に対する避難行動を優先する
柏崎市が定める「原子力災害広域避難計画」。自然災害のほうが人命のリスクが高い場合は、自然災害からの避難を優先し、安全が確保されたあと、原子力災害からの避難をするという、国と同様の考え方だ。
柏崎市 防災・原子力課 武本俊也 課長:
地震の場合、お住いの家屋が倒壊するおそれのあるときは避難所など安全が確保できる場所に避難する。大雪の場合は、車両の立往生あるいは交通事故など二次災害を防ぐために、天候が回復するまでの間は、自宅などの安全が確保できる場所に屋内退避をしていただく
冬に行われた避難訓練 高齢者の避難・移動手段に不安も
2021年1月には、冬の原子力災害を想定した初めての避難訓練が実施された。
放射性物質の放出後、集落が一時移転の対象となったとして、住民を自衛隊の雪上車に乗せ、バス避難の集合場所まで送る手順を確認した。
訓練が行われたのは、3世帯5人が暮らす市野新田。当日、町内会長として訓練を視察した高橋利浩さんと、訓練に参加した母・カズさんに話を聞いた。
市野新田 当時の町内会長 高橋利浩さん:
雪上車は高さがあるので踏み台を置いて上るが、足が悪いお年寄りには相当きつかった
また、利浩さんが撮影した訓練の動画を見てみると…
訓練の動画:
すごいよ。雪が柔らかくなったからなおさら揺れる。乗っている人は酔っぱらっちゃう
こうした、高齢者の安全な避難への不安だけでなく、移動手段の確保にも懸念が生じたという。
市野新田 当時の町内会長 高橋利浩さん:
訓練をしてもらうのはすごくありがたいが、災害時、雪上車などが本当にすぐ来て対応してくれるのかなと不安
柏崎市内には他にも山あいの集落がある中で、雪上車やけが人を収容するヘリの到着がいつになるか、見通せないという心配があるのだ。
柏崎市 桜井雅浩 市長:
今の段階で、完璧なものはできているかと言われれば完璧なものではない。色々な計画を作っては、またブラッシュアップしていくということを重ねていくしかない
中越沖地震が突きつけた、複合災害への備えという重い課題。今後もたゆまぬ備えが求められる。
(NST新潟総合テレビ)