スポーツ庁の有識者会議は、きょう午前、公立中学校の運動部活動の指導を、学校から地域のスポーツクラブなどに委託していくことなどを盛り込んだ提言をまとめ、スポーツ庁に提出した。今後、提言をもとに部活動の地域移行が具体的に進められる。

中学校の部活動はどう変わる?

提言では、全国の公立中学校について、来年から3年間かけて、段階的に、休日の部活動を、地域のスポーツクラブなどに委託していくとしている。”休日”の地域移行が進めば、その後、”平日”も移行していく方針だ。現在は、教師が顧問として部活動を指導しているが、今後、地域のスポーツクラブや民間事業者などが、希望する中学生を受け入れ指導していくことになる。

なぜ地域移行が必要?

少子化の影響により、中学校だけで、運動部の活動を維持していくのは、困難な状況だ。スポーツ庁によると、中学校の生徒数は、1986年のおよそ589万人が最多で、その後、減少傾向が続き、去年は約296万人とほぼ半減した。

学校や教員の数も減っているのに対して、運動部の数は、2004年度のおよそ12万部から比べて、2019年度時点で、ほぼ変わっていない。その結果、部員が集まらず、大会の出場だけではなく、練習すらままならないケースも見られるという。

また、教員の負担増も背景として指摘されている。2006年度に行われた調査では、中学校の教員が、土日に部活動指導に当てた時間は1時間6分だったが、2016年の調査ではほぼ2倍の2時間9分にのぼった。教員不足が深刻化する中、教員の負担を減らすことは急務とされている。

見えてくる課題

これまで公立中学校の部活動では、保護者は、指導料を負担必要はなかった。しかし、これからは、地域のスポーツクラブなどに、指導料や会費を支払う必要が出てくる。その場合、特に、困窮家庭にとっては大きな負担となり、部活動の参加が難しくなる恐れがある。

さらに、地域でどのように指導者を確保していくのかも課題だ。指導者には専門性の他に、生徒の安全確保も求められる。特に小さな市町村では指導者の確保が難しいことが予想される。これらの課題について、スポーツ庁は、困窮家庭に対する支援を検討するなど、来年度からの地域移行に向けて準備を急いでいる。

社会部
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