予防接種に対して不安に思うことが原因で、息切れ・めまい・失神といった症状が起こることをご存知だろうか。ISRR(Immunization stress-related responses)=予防接種ストレス関連反応と呼ばれる。新潟県医師会広報委員会の協力のもと、医師に詳しく聞いた。

どのワクチンでも起こり得る…接種前から症状出ることも

Q.これまでの新型コロナワクチンでもISRRの報告は
新潟大学大学院 医歯学総合研究科・齋藤昭彦 教授:
ある。特に10代のお子さんに接種した後に倒れてしまい、接種会場で横になってから帰ったという報告がある

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 小児科学分野・齋藤昭彦 教授
新潟大学大学院 医歯学総合研究科 小児科学分野・齋藤昭彦 教授
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「ISRR」について、新潟大学大学院 医歯学総合研究科 小児科学分野の齋藤昭彦医師に話を聞いた。

新潟大学大学院 医歯学総合研究科・齋藤昭彦 教授:
この言葉のごとく、ワクチン接種に対するストレスで起こる

予防接種ストレス関連反応「ISRR」
予防接種ストレス関連反応「ISRR」

Q.アナフィラキシーショックとは違う?
新潟大学大学院 医歯学総合研究科・齋藤昭彦 教授:
アナフィラキシーショックはワクチンの成分に対して、体が非常に激しいアレルギー反応を起こすこと。ISRRは注射針への恐怖・不安・緊張などから交感神経と副交感神経のバランスが崩れることによって発症する

どのワクチンでも起こり得るが、ワクチンの成分ではなく心理的な部分が関係しているため、接種前にも症状が出る場合がある。この点で、他の副反応とは大きく異なる。

ISRRを起こしやすい人の特徴は?接種時に気をつけたいこと

ISRRの主な症状は、息切れ・汗が出る・めまい・失神などだが…

新潟大学大学院 医歯学総合研究科・齋藤昭彦 教授:
体の中の反応が起こって後遺症を残すということはないので心配いらない。通常、想像の通りすぐ良くなる。不安が取れれば良くなる。このISRRを起こしやすい人は、ある程度リスクファクター(リスク因子)が知られている

ISRRによる後遺症はない
ISRRによる後遺症はない

ISRRを起こしやすい人の特徴は、これまでに失神したことがある人・注射が怖い人・10代・女性、などだ。

新潟大学大学院 医歯学総合研究科・齋藤昭彦 教授:
今までに朝礼で倒れたことがあるとか、痛みに対して神経質で卒倒してしまったことがある場合には、ワクチンが引き金になって会場で倒れてしまうことが考えられる。その際は、ぜひ問診の際に「起こしたことがある」と言ってもらえると、ベッドの上で横になって接種できる可能性がある

問診の際に相談を
問診の際に相談を

あお向けで接種することや、接種しないほうの手でボールを握ること、音楽を流すことなど、医療者側にも痛みや不安を紛らわすための環境提供が求められている。

また、信頼できる家族を同席させることや、できるだけかかりつけ医に接種してもらうことも大切だという。

接種数日後に起こることも…代表例「HPVワクチン」積極的勧奨が再開

またISRRは、接種から数日以降に起こる場合もある。日本で起きた代表的な例が、子宮けいがん予防のためのHPVワクチンだ。HPVワクチンは2013年に定期接種化されたが、力が入らない・手足が動かない・おかしな歩き方・言葉の障害など、説明のつかない神経に関する症状が現れ、わずか2か月で積極的勧奨が中止となった。

子宮けいがんを予防するHPVワクチン
子宮けいがんを予防するHPVワクチン

Q.2013年の時、ISRRの議論は
新潟大学大学院 医歯学総合研究科・齋藤昭彦 教授:
議論されていなかった。他の病気の名前が色々上がったり。この8年間で準備は十分できたと思う。DNSR(接種後しばらくしてから起こる反応)が起こった場合、診療体制も整備されている

そして2022年4月、約9年ぶりにHPVワクチンの積極的勧奨が再開となった。子宮けいがん発症を7割ほど予防できるワクチンだが、ISRRのようなリスクが起こり得ることをよく知った上で接種することが重要だ。

2022年4月 HPVワクチンの積極的勧奨が再開
2022年4月 HPVワクチンの積極的勧奨が再開

新潟大学大学院 医歯学総合研究科・齋藤昭彦 教授:
日本産婦人科医会のホームページ、日本小児科学会のホームページでも分かりやすく説明している。予防できる方法もあるので、かかりつけ医の先生に相談していただきたい

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
NST新潟総合テレビ

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