全国にある95のローカル鉄道のうち、2020年度に黒字だったのはたった2社で、ほとんどが赤字だった。
過疎とコロナ禍で厳しい状況の中、岐阜県にあるローカル鉄道は、旧国鉄時代の復刻車両を運行したり、つり革に自分の名前などが書けるオーナー制度を始めるなど、様々な企画で奮闘を続けている。
ローカル鉄道が陥る経営難とコロナ禍の不安
岐阜県には、樽見鉄道・明智鉄道・養老鉄道・長良川鉄道と、ローカル鉄道が4路線ある。関市や郡上市などを通る「長良川鉄道」は、営業区間72.1キロのうち約50キロを長良川と寄り添って走っていて、その美しい姿には多くの鉄道ファンが魅了されてきた。
長良川鉄道は、1986年に国鉄・越美南（えつみなん）線を引き継ぎ開業。開業記念列車には沿線から祝福の声が上がり、華々しいスタートとなった。しかし…。
長良川鉄道の専務：
（開業した）当初の計画も1億8000万くらい、毎年赤字はやむを得ない前提できている…
もともとが田舎を走るローカル線は、沿線人口が減少し利用客数は下降の一途。長良川鉄道の2013年度の利用客数は、ピークであった1992年の約4割の70万人に。さらに新型コロナの感染拡大で、2020年度は50万人にまで悪化し、業績は過去最大の4億7349万円の赤字となった。
「観光列車ながら」が登場し、舞妓列車のようなユニークな企画で観光需要を取り込み始めたその矢先、コロナが世界を襲った。
長良川鉄道の専務：
緊急事態宣言が発令されると、いろんな企画をやってもキャンセルが…。思うように収入が伸びない。コロナ前に戻るのは厳しいかと
そんな中でも、長良川鉄道は新たな車両「おくみの号」の運行を4月3日に開始した。旧国鉄時代に運行していた「急行おくみの号」を復刻した、クリーム色と朱色が特徴的な新型車両だ。新たな車両で集客を図りたいものの、まだまだ不安は付きまとう。
長良川鉄道の専務：
いろんな企画をやっていくにも、第7波が来たらどうなるとか…。そんなことばかり考えていても何もできませんが…
ローカル列車に愛着を 養老鉄道の「つり革オーナー制度」
ローカル鉄道が陥る経営難は長良川鉄道に限った話ではない。国土交通省によると、全国のローカル鉄道の利用者数は1991年には5億人を越えていたが、コロナ前の2019年には約4億人と2割余り減少。コロナの感染拡大後の2020年には、さらに3割近くが減り3億人を切った。
全国95社中、2020年度に黒字だったのはたった2社で、ローカル鉄道はいま悲鳴を上げている。
そんな中、岐阜県で長良川鉄道に次ぐ営業区間を持つ「養老鉄道」は、2022年5月から新たな企画「つり革オーナー制度」を始める。鉄道の車内に欠かせない“つり革のオーナー“を募集する企画だ。
名前や好きなメッセージが書かれたつり革を1年間車内に吊るすことができ、1口1万2000円。1両あたり最大50口、60万円の売上を目指す。
養老鉄道の担当者：
愛着を持っていただくのが、お客様にとってメリット。我々にとっても収益は大きい
アイデアを絞り出し、あの手この手を尽くす。
「花吹雪が本当にきれい」ローカル鉄道は地元の誇り
長良川鉄道「関下有知（せきしもうち）駅」の周辺では、地元の人たちが春の訪れを前に、植木の剪定などに汗を流していた。
地元の男性：
この桜の撮影に来る人はすごく多い。きれいです本当に、花吹雪です
桜咲く美しい駅。ローカル鉄道がある風景は、地元の誇りとして大切にされている。
地元の男性：
お客さんも多かった。（今は）少子化で子供が少ないけど、昔はいっぱい。もっと地域で利用しないかん。私はできるだけこの駅をきれいにして、大勢に乗ってもらえるようにしたい
すっかり減った乗客に、ほとんど来ない列車。乗車にはいまだに交通系ICカードも使えない。それでも地域の“足”として、今も必要としている人たちがいる。
女子高生：
毎日乗っています。無くなったら困ります
女性客：
車がないと「ながてつ（長良川鉄道）」。私たちの足ですね
満開の桜の下で迎えた、長良川鉄道肝いりの国鉄復刻車両「おくみの号」の出発式には、鉄道ファンや地元の人がカメラを構えた。
長良川鉄道の専務：
やはり一番の問題はお金。これをどう確保していくか。鉄道ファンばかりでなく、沿線の方も昔の雰囲気を楽しんで喜んでいただいていると思っています
頑張る岐阜のローカル鉄道。経営難にもコロナにも負けず、今日も走り続ける。
（東海テレビ）
