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暖房効果だけでなく、鍋やピザなどの調理もできる人気の薪ストーブがある。全国から注文が入る大型の薪ストーブを作る職人の親子は、鉄から温もりを生み出している。

ストーブは本来「料理を作るもの」 ビザや焼き芋を熱々で

薪をくべ、ゆらめく炎で心まで温まる…。オーブンや天板では調理もでき、電気やガスが止まった時のライフラインとしても「薪ストーブ」は注目を集めている。

薪ストーブを使用している男性:
やっぱり冬が暖かい。薪集めもやっているので、集めるところから生活の一環

この薪ストーブは、愛知県岡崎市の工房で作られている。火花を散らし鉄の板をつなぎ合わせ、細部のデザインにまでこだわり抜いたこの薪ストーブは、現在2年待ちとなる程の人気となっている。

この極上の薪ストーブを生み出すのは、杉浦章介さん(67)と息子の宏太さん(41)。職人親子の緻密な手仕事だ。

杉浦さん親子の工房は岡崎市東阿知和町にある。杉浦熔接「鉄の仕事屋」は、1938年に農具などを作る野鍛冶として安城市に創業。工房は2017年に現在の場所に移った。

代表作は、3代目の章介さんが2002年に生み出した大型の薪ストーブ「森のストーブ」だ。

3代目・杉浦章介さん:
広い天板で煮炊きができる。こちら側は直火があたるので強火、こちらが中火、弱火と…。温度管理は鍋の移動。ストーブは本来、「料理を作るもの」という意味があって、料理ができてはじめてストーブ

体の芯から温まる温もりも魅力だが、料理ができることこそが薪ストーブの醍醐味と章介さんは話す。オーブンでは熱々のピザを焼いたり、ホクホクの焼き芋を作ったり…。使い方次第でレパートリーは無限に広がる。

ストーブは注文する人に合わせたセミオーダーメイドの受注生産で、現在は早くも来シーズンに向けて製造中だ。

鉄製品の力強さを表現 1台に200本打ち込むこだわりの「リベット」

薪ストーブ作りで、最初に作るボディは息子の宏太さんが担当する。

4代目・杉浦宏太さん:
厚さ6ミリの真っ直ぐな鉄板にレーザーで穴をあけ、曲げて加工した。炉の部分に棚を付ける部分、リベットという金属の鋲(びょう)を使って留めるスタイル

杉浦親子のこだわりの一つである「リベット」は、2枚の鉄板をつなぎ合わせるために使う。あらかじめ開けておいた穴にリベットを差し込み、頭を当て金(あてがね)にのせ、先端をハンマーで叩いて密着させる。

4代目・杉浦宏太さん:
金属は、温度が下がる上がるで、膨らんだり縮んだりを繰り返す。何回も動くと、いつか亀裂が入って(溶接部分が)切れることがある。でも、リベットは摩擦によってガッチリしているので、そうそう切れない

古くは、蒸気機関車や船舶にも用いられたリベット。熱による膨張や収縮に強い特性を、薪ストーブの特に高熱になる部分に生かしている。一本一本丁寧に叩くこの工程は、全工程の中でも最も時間と手間のかかる作業だ。

1台に約200本打ち込まれたリベットは、鉄製品らしい力強さと、どこか愛着を感じさせるデザインにも一役買っている。

続いて溶接。薪を入れる部分に、口を取り付ける。10カ所ほど仮付けで固定したら、ゆっくりと波を打つように先端を動かしながら本付けしていく。

集中を切らさずに、指先まで神経を研ぎ澄ませて…。約1カ月かけ、溶接やリベット打ちを繰り返し、ようやく1台が完成。それだけ丁寧に作り上げるのが、杉浦さん親子のモットーだ。

4代目・杉浦宏太さん:
使っていただくお客さまの元で、事故がないことが第一。それがいいものの条件

3代目・杉浦章介さん:
家族だんらんが、この薪ストーブのまわりに生まれることを望んでいます

安全性を追い求め10年 「森のストーブ」は全国から注文が入る人気商品に

3代目の章介さんは、1990年に薪ストーブ作りを開始。そのきっかけは友人からの依頼だった。しかし、当時は薪ストーブに関する資料は乏しく、軽井沢の佐藤ストーブ店(現・鐵音工房)が作ったものを手本に図面を作成。2カ月かけて第1号を作り上げた。しかし…。

3代目・杉浦章介さん:
(佐藤ストーブ店に)「真似させてもらいました」ってお見せしたら、「真似はしょうがない。大事なことはストーブが火事を起こしたら困るから、安全性をしっかりとしてから、売るなり作るなりして」と強く言われて

ひたすらに安全性を追い求めて、試行錯誤すること10年。ようやく章介さんが納得する薪ストーブが完成した。

2005年から本格的に受注生産を始めると、たちまちその質の良さが評判となり、全国各地から注文が入るようになった。

宏太さんが家業に入ったのは、ちょうどその頃。人手が足りない中、懸命に働く父を支えるためだった。

4代目・杉浦宏太さん:
きちっとやるという事がストーブに反映されているのが、(父を)一番尊敬するポイント

3代目・杉浦章介さん:
1台まるまる組み立てる技量は身に着けてくれたので、これからは自分なりのオリジナルで踏み出してくれたら

機能だけでなく見た目にもこだわる…用と美を兼ね備えた究極の薪ストーブ

親子で作る極上の薪ストーブ作りも、いよいよ佳境。ボディが組みあがると、取手などのパーツは父の章介さんが作る。

バーナーで鉄の棒を熱し、赤くなったところをハンマーで叩いて丸めていく。これは火造り(ひづくり)という鉄の形を自在に変える昔ながらの技法。「鉄は熱いうちに叩け」。温度が下がったら再び熱し、また叩くを繰り返す。

3代目・杉浦章介さん:
ここは勘。自分の一番気に入ったカーブで、くるくる回していく。この色温度、加工するのに適した。温度を上げすぎるとちぎれちゃう

ほんの5分ほどで美しい渦巻き模様に…。匠の技で作り上げた細部にまで凝ったデザインが様々な取手に施され、薪ストーブのトレードマークになっている。

3代目・杉浦章介さん:
機能一点張りでシンプルにできていればいいけど、もう一歩踏み込んだ「見て楽しい」部分も大事にしたい

杉浦さん親子の手仕事が生み出す、火持ちがよい「森のストーブ」は、部屋全体を心地よく温め、調理もできる用と美を兼ね備えた究極の逸品だ(88万円~ ※煙突工事は別途見積り)。

2022年には親子二人で新商品も作った。「森のロケットストーブ」(14万8000円~)は、天板温度が350度を超える、屋外で調理ができるストーブだ。

4代目・杉浦宏太さん:
災害が多いと不安に思っているので、そういう時にこそ役に立つものを世に出していけたら

3代目・杉浦章介さん:
ストーブは美味しい料理を作らないかん、という思いがあります

ゆらめく炎を見て、心まで癒される…。杉浦さん親子の緻密な手仕事は、鉄から温もりを生み出している。

杉浦熔接「鉄の仕事屋」の「森のストーブ」は、現在2年待ちとなっている。

(東海テレビ)