人口減少が進む新潟県柏崎市の小学生が、アニメスタジオとタッグ。地域の魅力を学び、発信しようと奮闘する姿を取材した。
登場人物を描くのも児童 プロと一緒にアニメ制作
元気いっぱいの声が響く、柏崎市高柳地区の高柳小学校。職員室に5・6年生が迎えに来たのは、担任の先生ではなく柏崎アニメスタジオでアニメーターを務める長沢達也さん。

柏崎アニメスタジオ 長沢達也さん:
高柳地区を一生知らないまま終わる人もいる。アニメでその場所を映し出すことで、地方創生的な影響があると思っている。
アニメーションを活用し、地域の魅力を伝えたいと考える長沢さんは、柏崎を舞台にしたアニメ『とびだせ!柏崎』の監督も務めていた。

柏崎アニメスタジオ 長沢達也さん:
雪だるまを3段にしてもいいし、顔や手を生やしてもいい。自分の作りたい、作ろうと思っている雪だるまを描いてください。

この授業では、児童が長沢さんの指導を受けながら、高柳地区の魅力を伝えるアニメーションを作ることに。アニメに出てくる登場人物も児童が描く。

柏崎アニメスタジオ 長沢達也さん:
紙からはみ出ないほうがいいかな。よしよし、いいよ、かわいい。
人口減少が進む高柳地区 アニメの力で魅力発信へ
柏崎市高柳地区は、2011年に約1900人いた人口が2021年は1200人ほどと、人口減少に悩まされている。高柳小学校の児童も9人しかいない。

この現状を打開するため、高柳地区の魅力を発信しようと考えていた高柳小学校に、長沢さんたちがアニメーションづくりという形で協力することになったのだ。
柏崎アニメスタジオ 長沢達也さん:
通常ではできない試みで発表することができる。それを僕らが協力することに意味がある。(大きな意味は)高柳という町を全国に知らせる、というところだと思う。

児童が担当するのはイラストだけではない。今度は放送室に移動し、人生初のアフレコに挑戦。
児童のアフレコ:
私も雪が好き。ソリやスキーが楽しいのと、屋根の雪下ろしの時に屋根からの景色が素敵だから。

アニメーターの長沢さんたちはアフレコは専門外だが、児童の思いを形にするため指導に熱が入る。
児童:
緊張したけど、皆さんが支えてくれたおかげで安心してしゃべれた。
児童:
自分の描いた絵が動くのが楽しみ。
児童が描いた絵を大事にしたアニメづくり
ここからはプロの仕事。完成を楽しみに待つ児童のため、柏崎アニメスタジオで編集作業を進める長沢さん。収録した児童の声に合わせて絵を動かしていく。
――1分弱のアニメにどれくらいの時間がかかる?
柏崎アニメスタジオ 長沢達也さん:
8時間くらい。

制作するのは10分ほどのアニメーションで、仕上げ作業は全て長沢さんが担当する。
柏崎アニメスタジオ 長沢達也さん:
子どもの落書きが「そのまま動いた」みたいな映像に。ハサミで切って貼ったものが、そのまま動いているイメージ。貴重な体験をお手伝いできているのではないかなと思う。

「本当に立派」完成作品に保護者も感動
そして、いよいよ完成したアニメーションが保護者に披露された。タイトルは「とびだせ!高柳」。

豪雪地・高柳地区の魅力を伝えようと苦戦したアフレコのシーンも、見事な仕上がりに。アニメを見た保護者も喜びを隠せない。
保護者:
子どもたちがこの高柳での学びを「高柳ありがとう」という気持ちにつなげられて、本当に立派だなと感じた。

最後に、児童から長沢さんへ手作りの感謝状が贈られた。
児童たち:
あなたは高柳がハッピーになる素晴らしいアニメーションを作りました。ありがとうございました。

「たくさんの人に伝えたい」児童が気づいた地元の魅力
アニメーションづくりを通して、自分たちが住む地域の魅力に気づいた児童たち。その魅力を発信したいという気持ちも芽生えていた。
児童:
高柳の魅力は、地域の人が優しいところや自然の豊かさ。

児童:
こうやってアニメーションにしたり、発表したりして(高柳の良さを)伝えていきたい。
児童:
たくさんの人に高柳の良さをもっと知ってもらいたい。

柏崎アニメスタジオ 長沢達也さん:
高柳という、関わりがなければ名前を知ることもなかった場所に対して、一人でも多くの人に「高柳という地域がある」ということを知らせることができれば、僕らの役目は果たせているのではないかと思う。
児童が気づいた高柳地区の魅力は、アニメを通して高柳地区を飛び出し、世界に発信されていく。
児童たちが作ったアニメーションは、YouTubeや高柳小学校のホームページで公開している。
(NST新潟総合テレビ)