医療機器が必要な人のための“停電しない避難所”

医療機器を動かし続けないと命に関わる人もいる。2020年、台風が接近した際、佐賀市は初めて障害のある人などを対象とした「福祉避難所」を開設した。その際、難病を抱える避難住民は、医療機器を使うための安定した電源が確保できたが、課題も見えてきた。

2020年9月に、猛烈な勢力を保ったまま日本へ接近した台風10号。県内でも約2万7,000戸が停電した。このとき、佐賀市は初めて「福祉避難所」を開設した。

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佐賀市保健福祉部 障がい福祉課・上野良知課長:
当時、避難で使った部屋。4世帯の方がこちらに避難されました。赤いコンセントが非常用電源ということで、停電の時も使える電源。パイプベッドや下に敷くマットなど、最低限のものだけ用意しました

人工呼吸器が必要な息子…避難先の安定した電源が「何よりも必要」

佐賀市に住む山本可奈子さん。

息子の歩夢さんは、脳や脊髄からの信号が届かず、筋肉を動かすことが難しい「脊髄性筋萎縮症」という難病。生活をしていくには、人工呼吸器が必要。

台風が最接近した2日前、山本さんは人工呼吸器を動かし続けるために、安定した電源を求めて事前に避難しようと準備をしていた。

山本可奈子さん:
千葉の台風被害が近い時期にあって、長期的に逃げることになったらどうするんだろうねと、ちょうど保護者で話していた。とにかく安心な場所に行きたいという一心でした

山本さんのもとへは市から直接電話があり、「安定的な電源が必要な人を対象にした福祉避難所」を市役所に急きょ設けることが伝えられた。
山本さんは、医療機器や薬などを車に積んで市役所へ向かった。

佐賀市役所の「福祉避難所」には、4家族あわせて13人が避難した。そのうち、山本さんを含む3家族には人工呼吸器などが必要な医療的ケア児がいたと話す。

山本可奈子さん:
電源が落ちませんよ、ということはすごく何よりも必要なことだったので、無事過ごせてよかった

個人によって異なる“必要な配慮”…個別の避難計画を作る必要も

ただ場所を移せばいいというわけではなく、山本さんの息子さんのように医療機器を動かし続けないと命に関わる人もいる。どのような支援を必要としている人がいるのか、事前に把握することが大切。

山本可奈子さん:
ハンモックみたいな簡易ベッドだったので、もうちょっと硬いのがいいねという話はしていたよね。沈み込むと、やっぱり呼吸がしづらかったりするので。
目隠しが必要だというのもなかなか最初は伝わらなくて、目隠しになるようなパーティションを黒板と新聞紙を貼り付けたような感じで作らせてもらって、簡易ベッド上で排泄ケアはさせてねと、見えないように配慮して(ケアを)してたような状態

佐賀市は、医療的ケア児の場合、個人によって配慮が必要な点が違うため、設備や人の配置など個別の避難計画を作る必要があると話す。

佐賀市障がい福祉課・上野良知課長:
医療的ケア児の方、要援護者含め個別の対応が必要だと思う。災害時にその人がどう過ごすか、どこにどう避難するか決めていくのは大事だと思うので、逐次、個別の計画に取り組めていけたらと考えている

この経験を元に、山本さんは市にプライベート空間の確保などを求める要望書を出した。

山本可奈子さん:
避難に対してのハードルが高いというのは、医療的ケア児に関してはあると思う。いろんなところが協力して支えてくださっているけど、そこから、こういう時にはじゃあみんなでこうしようという方向性が出てくると、もう少し安心して準備したり、そういうことが起こった時にも動けるのかなと思っている

非常用電源を備えた公共施設が多くあるわけではなく、場所の選定に苦労している自治体があり、市町の連携も課題といえそうだ。

(サガテレビ)

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