2021年、宮崎市の干し大根やぐらが日本農業遺産に認定された。そこには、農家が守ってきた伝統と高校生の新たな試みがあった。
「干し大根やぐら」が日本農業遺産に
毎年12月から1月にかけて、宮崎市清武町と田野町一帯に広がる干し大根やぐら。収穫された大根はこのやぐらに干され、宮崎の太陽を浴びておいしい「たくあん」になる。
冬の風物詩にもなっているこの大根やぐらが2021年2月、日本農業遺産に認定された。

清武町で農業を営む黒田善和さんは代々、ここで大根をつくっている。
ダイコン農家・黒田善和さん:
干し大根づくりは、先人たちが苦労して成し遂げてくれた財産だと思っています。これを私たちが次の世代に引き継ぐ義務というか、そういうのがあるんじゃないかと。私自身は感じています

受け継がれてきた伝統農業。日本農業遺産の認定には、若い世代のある試みが後押しとなった。
高校生の研究活動が認定に貢献
2021年12月9日、宮崎農業高校の3年生11人が、黒田さんの畑を訪れた。

宮崎農業高校では、2020年から黒田さんの畑を借りて、干し大根づくりの研究に取り組んでいる。ここでは「マルチ」と呼ばれる畝を覆うフィルムの有無や、肥料の種類と量ごとに畑を8区画に区切り、大根の育ち方を比較。

生徒たちは、日本農業遺産の審査でこの研究活動をプレゼンし、今回の認定に貢献した。

宮崎農業高校3年・小倉鈴菜さん:
こういった加工用大根が宮崎は日本一だっていうのは、あまり伝わっていないことだと思うので、日本農業遺産の認定を機に「宮崎すごいんだぞ」っていうのがもっと伝われば、とてもうれしく思います

”日本一の農業県”を目指して
この日、生徒たちは大根の出来を確認しながら約1400本を収穫した。
ダイコン農家・黒田善和さん:
若い生徒たちが圃場に来て、元気よく、はつらつと作業してくれるのは、私たち農業従事者にとってすごく励みになります

収穫した大根は学校に持ち帰り、校庭の片隅に立つやぐらにかけられた。
やぐらの柱には、タブレット端末などから温度と湿度をリアルタイムで確認できるICT機器が設置されている。

干し大根は氷点下になると品質が落ちるため、生徒たちは機器を使って気温を予測。温度管理を行い、より良い干し大根づくりの研究を続ける。

ダイコン農家・黒田善和さん:
(生徒たちの研究は)すごく楽しみでもあるし、自分たちにとってもすごく励みになります。せっかく日本一になった農業遺産ですから、後世までどうにかして続けていきたいと考えています

宮崎農業高校3年・小倉鈴菜さん:
こうしたプロジェクトを通して、農家さんの苦労をたくさん知ることができました。だからこそ、この苦労をもう少し楽にできるように、もっともっと農業が盛んになって、宮崎が日本一の農業県になるように、私たちも尽力していこうと考えています。頑張ります!

後世に残したい日本一の干し大根づくり。その思いは、次の世代へと大切に引き継がれている。
(テレビ宮崎)