与野党は2月1日午後の衆議院本会議で、新疆ウイグル自治区等での人権状況への懸念について国会決議を行う見通しだ。一方で、中国を名指しすることは避け、自民党内では不満もくすぶる。
中国名指しせず「非難」の文言もなし

決議は、新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港などで人権弾圧が指摘されることから、高市政調会長が会長を務める「南モンゴルを支援する議員連盟」などの国会議員連盟が中心となって、採択実現を目指してきた。
決議では、ウイグルなどでの「深刻な人権状況」について「一国の内政問題にとどまるものではない」と指摘。さらに「国際社会が納得するような形で説明責任を果たすよう強く求める」としている。また、政府に対して「国際社会と連携して深刻な人権状況を監視し、救済するための包括的施策を実施すべき」と求めた。
一方で「中国」を名指しすることは避け、「人権侵害」という文言が「人権状況」との表現に変更されたほか、「非難」という文言も盛り込まれなかった。
採択はこれまでに2度見送り

決議を巡っては、欧米諸国が中国の人権問題に厳しい姿勢を示す中で、2021年4月、当時の菅首相が訪米してバイデン大統領と初の首脳会談に臨むのを前に、「国会の意思を示すべき」として決議を目指したが、採択は見送られた。
その後、自民党は決議に慎重な姿勢を示してきた公明党と修正協議を行い「人権侵害」を「人権状況」と表現を変更したほか、「非難決議」の「非難」の文言を削除。そして、岸田政権発足後の2021年12月の臨時国会で、再び採択を目指して高市氏ら議連幹部が自民党の茂木幹事長に面会したが、茂木氏は「内容はいいがタイミングの問題だ」として、採択は再び見送られた。
骨抜き批判も 政府はどう対応

自公両党の協議の末、「人権侵害」と「非難」の文字が削られたことに、決議実現を目指してきた議連の関係者からは「侵害という言葉も抜け、『中国』と名指しも避けた骨抜きのものでは、決議自体が政治家の自己満足に過ぎないという気持ちもある」と不満の声が漏れた。
一方で、自民党の重鎮は「名指しはしなくても、誰が見ても『中国の人権侵害を非難している』ことはわかるはずだ。北京五輪を前に国会の意思を示すことが重要である」と語る。
決議は1日午後の衆議院本会議で、全会一致を目指し採択が行われる。
2度にわたる見送りを経て、4日に迫った北京オリンピック開会式の目前で採択されることになった、人権問題を巡る国会決議。欧米諸国が中国の人権状況に厳しい姿勢で臨む中で、決議を受けて政府がどう人権問題に対応していくのかが、今後の課題となる。
(政治部)