福士加代子×田中希美SP対談
落ち着いた雰囲気の中…最初に口を開いたのは福士さんだ。

福士さん:なに好き?食べ物?
田中さん:ミンチカツ好きです
福士さん:ミンチカツ、意外!
田中さん:(自分へのご褒美に)コンビニのスイーツを買ったりとか
福士さん:可愛らしい、そんなんでいいのか、日本記録を出してもコンビニスイーツでいいのか。天才だな
「レジェンド」から「次世代を担う新星」へ
日本女子陸上界で唯一、4大会連続でオリンピックに出場したレジェンド・福士加代子選手(39)。数々の日本記録を叩き出し、「トラックの女王」として活躍した。

その福士選手に憧れ、背中を追ってきたのが、陸上界のホープ、田中希実選手(22)。東京オリンピックでは、日本の女子選手として初めて1500mに出場して日本記録を更新するなど、大活躍をみせた。

レジェンドから次世代を担う新星へ、以前、あるアドバイスを送ったそうで…
レースを「支配する」走り
田中さん:自分はその時、1,500とかもラスト負ける選手で。だからレースが怖くて、どうしたらいいですかね、みたいな…。その時に福士さんが『自分がレースを支配する』というか、『楽しんじゃえばいいんだよ』って。その状況も含めて楽しんじゃえばいいんだよっていう。その時はよくわかんなかったんですけど
福士さん:支配はね、一番いい時とかになると、多分自分が一番良いとレース見えるでしょう?
田中さん:そうですね
福士さん:人の呼吸とかも分かってくるじゃん。そうなってくると、ここで仕掛けてもちょっと出ても、「あ、この子落ちるな」とか、「落としてやれ」みたいな。そういう風に支配できることもあるし。ずーっと自分がレース作る感じができた時はありますね
田中さん:考えるじゃなくて、降りてくるというか(笑)
福士さん:はい、降りてきました。素晴らしい!(笑)

福士「私、成功していないタイプだから」
田中さん:走っていて苦しいのに、どうやって楽しむのか…今はやっと何となくその感覚が分かるというか。レースごとでテーマを決めて、今日は負けてもいいからこれをしたら自分は納得して楽しく終われるっていうことが、ちゃんと完遂できたら、もう満足
福士選手といえば、苦しい状況でも、決して絶やすことのない笑顔。その“楽しむ気持ち”を学んだ田中選手は、2020年、福士選手の持つ日本記録を更新。
トラックを経てマラソンに転向したレジェンドの背中を追いながら、見据えているものがある。
田中さん:福士さんみたいに、自分をどれだけやったらいけるんやろうっていうので。自分は特に一回はやってみたいっていう気持ちが、マラソンに対してはあって

福士選手は大きな期待を背負いながらも、マラソンで何度も挫折。それでも、ひたむきに競技と向き合い続けてきた。
なぜ苦しみながらも、挑戦し続けることができるのだろうか。
福士さん:私、成功していないタイプだから、いつになったら成功するんだろう、みたいな。これでもないのかっていうのをすごく探っていたから、もしかしたらやり続けられるのかもしれない

福士さん:好きだったんでしょうね…走ることとか。シンプルで自分と向き合えることが多いので。ほぼ自分のせいじゃん。びっくり、びっくりするよね(笑)対自分との会話なんで。まぁこんなに自分自身って飽きないんだねって思いましたね
「ダメダメな希実ちゃん、出せばいいのに」
自分と向き合い続けてきた福士選手。だからこそ、田中選手には聞きたいことがあった。
田中さん:福士さんって悩んでいるときも多かったんじゃないかなって、勝手に思っているんですけど。自分は悩んでいても周りにはあまりそういう風に見えないって言われるんですけど、福士さんは外にはそういう感じが分からないんで

福士さん:吐き出すというか、言っているかな。『あー腹立つ』って
田中さん:家族以外がその感情を受け止めてくれる人がいないんで、今家族にまとまっちゃっている感じなんですけど
福士さん:言っちゃえば良いんだよ、自分なんて。ダメダメな希実ちゃん出せばいいのに、全然。出しても全然受け入れてくれると思いますよ

自分の正直な気持ちを、さらけ出す。それが福士選手が22年間の現役生活で培ったことだ。
福士加代子、大阪で挑む「ラストラン」
そして、競技人生の最後に思い入れのある「大阪」で挑むラストラン。そこでも、見せたい姿がある。
福士さん:全力を出しきるっていう感じですね。千鳥足にならない感じで。(笑)ちゃんとゴールはしたいと思います
田中さん:福士さんらしく楽しんでいる姿を見させていただいて、いかに楽しむかっていうのを学ばせていただきたいなって思います。走ることをもっと自分らしく、楽しめるようになりたいなって思います
福士さん:だめだったら、あぁ、ダメだったって言えばいいんだよ(笑)、全然

(関西テレビ「報道ランナー」2022年1月17日放送)