自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家に寄せられたのは、愛知県に住む「よっこ」さんからの、こんなエピソード。
「4歳になる息子。保育園のお帰りで、目にした子ども手当たり次第に『追いかけっこしよー!』と声をかけ、誘いに乗ってくれる子もいれば、無視して帰ってしまう子も…。息子は気にしていなさそうな時もあれば残念そうにする時もあり、見ていてかわいそうになります。『みんなおうちに帰るんだから、帰ろうね』と諭していますが、どうしたら良いのでしょうか?成長とともに本人が気にし始めたり、お友達に“引かれ”てしまって、いじめに繋がったりはしない?」
毎日の保育園や幼稚園、満足するまでお友達とたっぷり遊びたいのが子どもたち。ついついお迎えの時間やごはんの時間など、遊びの時間じゃないときにも「今から遊ぼう!」と話しかけてしまうこともあるはず。
いつでも誰にでも、ニコニコと話しかけられる“コミュニケーション能力”が高いのはいいことのはずだけれど、それを発揮しすぎるわが子は「空気が読めない」子になってしまっていない?お友達にプイと無視されてしまったら、傷ついてしまうかも…
そんな心配について、育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
小学校からは「空気を読むことが上手に」
――「今?」というタイミングでお友達にグイグイ話しかけちゃう…これってどうしたらいいの?
このエピソードから、このお子さんが保育園をとても楽しんでいることや、お友だちとの遊びが好きなことが伺えますので、その点はとても喜ばしいことだと思います。一方で、夕方の忙しい時間にお友だちに積極的にアプローチしていく姿に、どうしたものかと困っていらっしゃるのでしょう。
もしご自身に時間的な余裕があり、しかも他のお子さんも同様というのであれば「時間を設定して遊んでから帰宅」という流れを作ってもいいと思いますが、おそらくは親御さん自身は「もう帰りたい」と思っているけれど、お子さんはまだ追っかけっこをしたいという状況のように伺えます。そうであれば、お迎え後はすぐに帰るというお約束を浸透させていった方が望ましいと思います。
子どもたちは1人が「遊びたい!」と言い出すと、それが連鎖して広がり、親が引きずられる形でしぶしぶ受け入れるということがよくあるので、同じように悩んでいる親御さんとあらかじめ示し合わせておくのがいいのではないでしょうか。「園が終わったらそのまま帰る」という取り決めですね。
そのときの注意として、しっかり浸透するまでは「今日は時間があるからいいよ」という例外を作らないということが大事です。はじめのうちは泣いたり、反抗したりすることもあるかと思いますが、ルールが一貫していれば子どもたちはそれを理解していくようになります。
――お友達に積極的にアプローチしすぎ。これって心配するべきこと?
今回は保育園の帰りの時間帯(=みんなが慌ただしく帰ろうとしている時間)ということで、グイグイ話しかけていく息子さんの様子が気になってしまったのだと思います。ですが、物おじせずに話しかけられることはとてもいいことです。逆のことで悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。
今は4歳ということで、この年齢ではまだ他者の立場に立った目線というのを獲得していません。そのため、自分を中心に世の中を見ているので、自分がやりたいことは他の子もやりたいだろうという発想をするのですね。ですが小学校に上がったころから、客観的な物の見方ができるようになってきます。それにより場の空気を読んだりすることも上手になってくるのです。
大きくなるにつれ、だんだんと今の姿は柔らかくなっていきますから、今は心配せずにこの特性をお子さんらしさとして捉え、ほほえましく見守るのがいいと思います。
ただ、今回のように「このときだけは…」というタイミングもあると思います。グイグイ度を押さえてほしいところだけは、上でおすすめしたようにルールを作っていかれるといいのではないでしょうか。ルールに沿って自分をがまんさせる経験は、セルフコントロールの力につながっていきます。
ルールを守らせたい場面では「一貫性を持って」
――「みんな帰るから帰ろうね」この声かけはどう?
いい声かけです。合わせて「おうちに帰ったら○○があるよ~」「あとで○○しようね」のように先々の楽しみを提示するのもおすすめです。そして、この声かけに加え、とても大事になってくるのが行動に一貫性を持たせることです。
もし言葉では「みんなおうちに帰るんだから帰ろう」と伝えつつも、実際は遊んで帰る経験を繰り返してしまうと、子どもたちはどうしても経験の方から学んでしまいがちです。「ママは帰ろうと言ってはいるけれど、実際には遊べるんだ」と理解してしまうのですね。そうすると、いくら声かけが正しくても伝わらなくなってしまいますので、言葉と行動を合わせることが何より大事になります。
――お友達に「無視」されてしまったら、どんなフォローをしてあげるのがいい?
4歳という年齢からも、悪い意味合いを含んで無視したわけではなく、その声に注意が行かなかったというのが実情だと思います。保育園後は直帰することが当たり前になっている子もいれば、夕方はお友だち遊び以上にパパやママとべったりして過ごしたい子もいたりするからです。
仮に「残念だったね」のようにフォローしてしまうと、遊ぶことを肯定しているように伝わるかもしれないので、このタイミングでできれば帰りたいと考えているならば、それをきっかけに「うちも帰ろう」と声掛けするのがいいと思います。その際は、その場でいきなり「うちも帰るよ!」だと納得できないことが多いので、あらかじめおうちで「園からは直帰する」というルールを共有しておくことが大切になります。
幼稚園・保育園あたりの子どもたちは「今、自分がこうしたい!」と思っていることは「お友達もしたいはず!」と思ってしまう年頃。
けれど小学校に上がるころには“空気を読む”ことが身についてくるもの。「僕は遊びたいけれど、みんなはもうおうちに帰りたいかも…」と考えることができるようになり、だんだんと「空気が読めていない?」というハラハラ行動は減ってくるはずなので、パパママは少し見守ってみても大丈夫そうだ。
年齢とともにお友達との距離感を学んでいく子どもたちだが、今できるのは「今日は時間があるから、遊んでから帰ろうか」などの“例外”を作らないこと!はじめはなかなか受け入れてもらえないかもしれないが、まずは「お迎えの時間が来たら、すぐにおうちに帰る」というルールに慣れさせるのも、楽しい幼稚園・保育園生活を送る上で大切になってきそうだ。
あなたの投稿が漫画になる!エピソード募集中
「聞きコミ PRIME online」では皆様からの「育児あるある」エピソード投稿をお待ちしています。あなたの投稿が漫画になるかもしれません。
・「もういらない」と言ったから代わりに食べたおやつ。「やっぱり食べる!」と言われて大慌て…同じものを用意しても「さっきのがいい!」と泣かれて大苦戦!
・無くしたと思っていたスマホを冷蔵庫の中から発見!なんでここに入れちゃうの!?
などなど、「育児あるある」に隠された子どもたちの気持ちを探ってみませんか?
※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)