役者や観客が移動しながら話が進む、“徘徊演劇”と呼ばれる演劇が、11月に岡山市中心部の商店街で上演された。
看板俳優は95歳の男性。
老いや死、認知症といった、高齢化が進む中で避けて通れない命題を、この男性を通して考える。

老いや認知症をテーマに“徘徊演劇”

95歳の看板俳優、岡田忠雄さんが熱演する。
岡田さんは、老いや死、認知症などをテーマに演劇をする劇団「OiBokkeShi(オイ・ボッケ・シ)」の役者で、「おかじい」と呼ばれている。

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「おかじい」が認知症の妻を探すこの物語は、役者や観客が移動しながら進行する“徘徊(はいかい)演劇”。
市民にも演劇を身近に感じてほしいと、岡山市のNPO法人アートファームが企画し、初めて岡山市中心部の表町商店街で上演された。

おかじい:
言いたくないけど…うちのばあちゃん、今でいう認知症

人生そのものを脚本に…一般の人と初共演も

岡田さんは8年前、劇団を主宰する菅原直樹さんに出会い、夢だった役者の道に足を踏み入れた。

そんな岡田さんには、認知症の同い年の妻、郁子さんがいる。
15年以上、岡田さんが1人で介護してきたが、郁子さんは2021年施設に入り、自宅に帰って来られなくなった。

(Q.妻・郁子さんはどんな様子?)
岡田忠雄さん:

ずばり言いましょう。あしたの命はわからない。それを考えていたら舞台に立てないから。忘れてしまわないと。だけど頭から離れない

劇団を率いる菅原さんは、岡田さんの人生そのものを脚本にしてきた。

劇団「OiBokkeShi(オイ・ボッケ・シ)」主宰 菅原直樹さん:
岡田さんと僕が出会って生み出された物語。今回市民と表町商店街で作ることになって、物語がより開かれて、いくつもの物語を含んだ大きな作品になった

演劇には劇団のメンバーに加えて、オーディションで選ばれた中学生から70代までの市民も参加する。
一般の人たちとの共演は、おかじいにとって初めての経験。

岡田忠雄さん:
芸名は「おかじい」と言います。よろしくお願いいたします

約1カ月の稽古。
商店街の店も舞台になった。

岡田忠雄さん:
おかじいは、今回1番難しい。だけど、出た以上やらなければ

公演当日…妻への思いがあふれる場面も

そして公演初日。

岡田忠雄さん:
楽しく。頑張りましょうというより、僕は楽しくが好き。楽しく皆さん、がん…楽しくやりましょう。えいえいおー!

この日集まった観客は約30人。
障害がある人も楽しめるようにと、手話通訳や音声ガイドが付けられたバリアフリー公演。

20年ぶりに岡山に帰省した主人公の青年は、おかじいに頼まれ、認知症を患うおかじいの妻を探して、商店街を歩き回る。
幼なじみのいる店で、主人公はある事実を知ることになる。

店員:
ばあちゃん、去年亡くなっておらんのよ。じいちゃん相当ショックだったと思うよ。それから商店街歩き回って、ありもせんことしゃべって。1人暮らしは限界かもな

主人公の青年:
ばあちゃん探したけど見つからなかった。力になれなくてごめん

おかじい:
ばあさん、家におった!

主人公の青年:
ばあさんおった?

おかじい:
おいしい!ばあさんに食べさせたい…

「ばあさんに食べさせたい…」。
おかじいのこのセリフは、台本にはない。

岡田忠雄さん:
はっと思うのは、女房に食べさせられないのに、自分だけ食べてはいけないと

流動食しか食べられなくなった「岡田さん」の妻への思いがあふれた。

おかじい:
おらなかったら寂しいんよ、寂しいんよ

観客:
生きていく中で、避けて通れないものなので、一緒に老いを考えていきたい

観客:
生きる勇気や元気をもらっている。今回も

「あなたは、どう生きて、どう老いていきますか?」
おかじいの魂が問いかける。

(岡山放送)

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