海藻が失われることで漁業に深刻な影響を及ぼす「磯焼け」の対策で、全国的に評価されているグループが宮崎県日向市にある。メンバーの高齢化が進む中、次の世代に漁場を残そうと新たな取り組みを始めた。

「このままでは死んだ海になる」 藻場の再生に尽力

全国的に問題となっている「磯焼け」。魚の産卵場所や、すみかとなる藻場が極端に減少し、漁業に深刻な影響を及ぼす。

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水温など様々な原因が考えられ、ウニの食害も要因の一つとされている。

日向市の平岩港周辺は、1976年には海藻のクロメが25ヘクタールにわたって自生し、アワビやサザエなどがとれていたが、磯焼けにより2010年には0.4ヘクタールまで減少し、漁獲量が激減した。

またエサの海藻が減ったことで、採算が合わない痩せたウニばかりが増えていった。

ウニの駆除に取り組む、平岩採介藻グループの高橋和範代表。当時は強い危機感を持っていたという。

平岩採介藻グループ・高橋和範代表:
そのままいったら、何もとれない死んだ海になる。何とかしないといけない

高橋さんや地元の漁師は、2010年に「平岩採介藻グループ」を立ち上げ、ウニの駆除を続けている。現在は、6人が毎年11月から3月上旬にかけてハンマーなどでウニを駆除していて、多い年には約7万個を駆除した。

粘り強く活動を続けた結果、藻場は2021年に入り8.6ヘクタールまで回復したとみられる。藻場には小魚がすみつき、イセエビやアワビがとれるようになり、持続可能な漁業につながり始めた。

また、ウニも身のつき方がよくなり、飲食店で提供できる大きさになりつつあるという。

漁場を次世代に…高校生がウニの駆除を体験

こうしたグループの活動は、2013年の「全国豊かな海づくり大会」で環境大臣賞を受賞するなど、全国的に高い評価を受けている。

一方、メンバーは全員が70歳以上で後継者が1人もいない。このままでは、あと5年ほどで活動ができなくなるとみられている。

平岩採介藻グループ・高橋和範代表:
後継者がすぐできるものではないし、我々が持っている技術が、だんだん廃れていくのも悲しいことですよね

何とかこの漁場を次世代に引き継ぎたいと、グループは宮崎海洋高校の生徒たちに取り組みを紹介することにした。

11月24日、藻場の重要性などを学んでいる3年生6人が、ウニの駆除を体験。

平岩採介藻グループ・高橋和範代表:
つくり育てる漁業というのは、やらなければいけない。そのことを君たちに知ってもらって、漁師に少しでも興味をもっていただければ、すごく幸せです

海底にいるウニの駆除は大変な作業で、生徒たちにとって藻場を守る大変さを知る貴重な体験となった。

宮崎海洋高校の生徒:
流されたり、隙間などにウニがいたりして、思ったように作業ができなかったです

宮崎海洋高校の生徒:
藻場が増えて、いろいろな魚が寄ってきて、潜るたびにいろいろな魚が見えたりとか。それは気持ちがいいと思うので、増えてほしい

真面目に取り組む高校生たちに、高橋さんも感心していた。

平岩採介藻グループ・高橋和範代表:
関心を持っていただく、その中の1人が「私もやってみようか」という人が出ればうれしい

藻場の再生に尽力してきた漁師たち。漁場が次世代に受け継がれ、これから何十年、何百年と残っていくことを願っている。

宮崎海洋高校はグループの取り組みに長期的に関わる方針で、漁師たちはこうした若者の中から後継者が見つかることを期待しているという。

(テレビ宮崎)

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