岸田政権の目玉政策「新しい資本主義」とは、一体何なのか。

その答えを探すべく、有識者の最年少メンバー、米良はるかREADYFOR代表(34)に話を聞いた。

「READYFOR」代表 米良はるかさん 
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「若気のいたり」だった起業

2011年、23歳で日本初のクラウドファンディング「READYFOR(レディーフォー)」を立ち上げた米良さん。クラウドファンディングとは、インターネットを通じて、そのプロジェクトの目的や意義に共感した人から資金を募る仕組みだ。

サービス開始から10年が経ち、これまでに2万件以上のプロジェクトに対し約230億円の資金調達をしている。

「READYFOR」のHP

今でこそよく耳にするクラウドファンディングだが、10年前の日本では全く知られていなかった。ビジネスとして始めることになかなか理解を得られなかったという。誰もやったことがないことを始めることに不安はなかったのか。

「正直、若気のいたりっていったらおかしいけど、あまり、その難しさみたいな事がわからず初めてしまったっていうのが正直なところだったかなって」と笑いながら話す。

「READYFOR」立ち上げ当時 (2012年) 前列右から2番目が米良さん

起業した当時、若手代表として参加したダボス会議で、自身の目指すビジネスビジョンを話し、当時のGoogle会長やfacebook副会長など、ITビジネスの先駆者たちに認めてもらったことが大きかったという。

「自分がこれを信じてやり続ける必要があるなということを感じ、そこからは結構迷いなく前に進んでこられたと思う」

コロナ禍で見えたもの

コロナ禍では「やはり資金が必要とする方がものすごい増えた」と話す。

2020年1月と、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった4月で比べると、資金調達の相談が約4倍に増えたそうだ。こうした支援の声に対応するため、READYFORのスタッフも休みなく対応する日々が続いた。

「一件でも多くの皆様に資金が手に入り、その事業が少しでも長く、ある種“延命”じゃないですけど、長く続けられるようにする為に、我々は何ができるんだろうっていうことを必死で走っていた」

飲食店などの事業支援、医療機関の運営資金調達、学費に困る学生の支援など、支援プロジェクトの形は実に様々だ。

休眠預金を使った学習支援プロジェクトのページ

クラウドファンディングだけでなく、使われていない銀行口座に残る預金(休眠預金)を使って、コロナの影響で勉強する機会が失われてしまった子どもたちへの支援プロジェクトも立ち上げた。

コロナの感染拡大で、孤独や不安、医療従事者への感謝の思いなど、さまざまな気持ちがこうした資金の流れを作った。応援する側、される側の気持ちが可視化され、一人じゃないと思える。

「新しい資本主義実現会議」の最年少メンバーとして

実は7月に出産された米良さん。

「仕事と育児を両立することは並大抵のことではないということは、子育ての新米にしてすでに痛感しています。でも本来、どちらも両立することが個人の『少しのがんばり』で実現できる社会にしていく必要があるのではないでしょうか。そのために、私は経営者として、できることはもっとある、と感じています」と、自身のブログでその思いを明かしている。

その働き方や経営手腕から、岸田政権の政策方針を話し合う「新しい資本主義実現会議」の最年少メンバーに抜てきされた。

新しい資本主義実現会議で発言する岸田首相(8日)

岸田政権が掲げる「新しい資本主義」とは、この有識者メンバーにある。

経団連の十倉雅和会長など経済3団体のトップのほか、連合の芳野友子会長、Zホールディングスの川邊健太郎社長や、AIの「シナモン」を企業した平野未来社長など、年齢、性別、バックグラウンドが多様な15人が揃う。

米良さんは、安倍政権の「人生100年時代構想会議」や菅政権の「未来投資会議」にも有識者として参加した経験がある。「和気藹々とメンバー同士でも話すし、かなり雰囲気が変わったと感じます」と会議について語る。

会議終了後 取材に応じる米良さん

11月19日に決定された経済対策。

この屋台骨になる緊急提言を、11月8日の新しい資本主義実現会議でまとめた。コロナの感染拡大防止、経済活動再開、そして「成長と分配」戦略が主な柱だ。

「例えば10万円給付。なかなかデジタルが活用されないことによって、届かないとか時間がかかるということが明るみになったのは、今回のコロナ禍でわかったこと」

「政府がこれからデジタルもきちんと活用しながら、困っている人たちを最短で救いにいく。それを徹底的にやっていただくことは、一国民として期待しているところであります」

READYFORのクラウドファンディングの強さも、デジタルを使ってスピーディーに資金を集め支援者に届けることができることだ。米良さんの知見が期待される。

「持続可能性」の視点と環境整備

11月15日に公表された2021年7~9月期の国内総生産(GDP)は前期比年率換算でマイナス3.0%と、市場予想を超える落ち込みだった。

ここからの経済政策は、成長に資するものではなくてはならない。そして企業の顧客、取引先、従業員、株主をとりまくすべての関係者(ステークホルダー)にとって価値のあるビジネスモデルを考える必要がある。

若手起業家として、この新しい資本主義の議論の中でどういう声を上げたいか聞いた。

「これからの社会のあり方という意味では、企業経営も国も個人一人一人も、『持続可能性』を1つの視点として持ってやっていかなければいけない」

「挑戦するということを、誰もがやりたいという風に思ってもらえるような、環境の整備がすごく重要なのではないかと思っています」

「READYFOR」を支える社員ら

誰もが何かしたいと思う時にどんどん挑戦できる、そういう企業が「かっこいいよね」と言ってもらえる環境づくり。成長戦略のカギは、新しいビジネスの価値を創造できる環境整備にある。それには、官民がそれぞれの役割を果たし、実行していく必要がある。

コロナ禍だからこそ、政策はより身近に感じるものになっていて、自分の働き方を考える人は多いのではないだろうか。

走り出したばかりの「新しい資本主義」の議論。ここからの議論の進展に注目したい。

井出 光
井出 光

フジテレビ 報道局 経済部(財務省担当)。野村證券から記者を目指し転身。社会部(警視庁)、経済部で内閣府、経済産業省、民間企業担当などを経て現職。

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