毎日、子どもに怒ってばかりで疲れた…疲弊する親たち

子育て中の親なら誰しも直面するのが、イライラや怒り。
「感情的に怒ることはよくない」と思いつつも、元気いっぱいのわが子に手を焼いている親は少なくないのではないでしょうか。

特に、最近は新型コロナウイルスの影響で、専業主婦はもちろん在宅勤務している親も、自宅で子どもと長時間一緒に過ごしているケースも多い。
そういった状況の親たちからは、以下のような声が聞かれた。

・学校や習い事、外出も自粛だと、子どもが体を動かす時間が少ないからか、寝つきが悪く、生活が乱れてきている。毎日、子どもに怒ってばかりで疲れた。(10歳の子の母親・専業主婦)

・「いま仕事中だから、待っててね」は、幼稚園児には難しい。1人でできることも、できないと言うことにイライラして、自己嫌悪。(7歳と5歳の母親・在宅勤務中の会社員)

・いまは我慢しなければならない時とは思いますが、正直つらい。勉強が得意でない息子は、九九も忘れてしまい、自宅で勉強を教えていますが、毎日何時間も勉強ばかりもできず…真面目にやらない息子にイライラが募っていくばかりです。(7歳の子の母親・専業主婦)
 

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子ども自身も思うように体が動かせずストレスがたまる中、言うことを聞いてくれない。そうなると親もイライラする、怒る…そして、そんな自分に自己嫌悪。

今は特にそういう傾向が強いかもしれないが、普段の生活でもなぜこんなに子どもにイライラしてしまうのだろうと悩んでいる親も多いはずだ。取材中、子育てに熱心な親ほど、「他人は許せるのに、わが子は許せない」といった傾向や、怒ること自体をネガティブにとらえている傾向があると感じた。

なぜ、人は“怒り”を感じるのだろうか? そして、子どもにキレてしまうことに解決策はないのか?
「キレる!」(小学館)や、「毒親」(ポプラ社)などの著者でもある、脳科学者・中野信子さんに話を聞いた。

女性は男性より「不安が原因でキレてしまう」傾向

ーー“怒り”を感じる仕組みは?

怒りの原因として、主に考えられる脳内物質は、ノルアドレナリンやアドレナリンです。
理不尽な仕打ちをされたとき、ノルアドレナリンが分泌されて脳は興奮し、攻撃的になります。
また、ノルアドレナリンと同時に分泌されるのが、アドレナリンです。
アドレナリンは主に筋肉に作用するため、持久力もアップ。闘いにおいて、より力を発揮できるようになるわけです。

その一方で、不安や恐怖を司る“扁桃体”という部分が反応します。
ノルアドレナリンによって興奮状態になるとともに、扁桃体の反応で相手に対する恐れや不快さを感じることが、脳が“怒っている”という状態です。


ーー“怒り”を和らげるために効果的なことは?

アドレナリンの濃度を下げるために、リラックスさせるホルモン「セロトニン」を増やすことが重要です。このセロトニンを増やすためには、「甘いものを食べる」、「お風呂に入る」などが有効でしょう。

また、普段からセロトニン不足で、不安になりやすい人や、キレやすい人は、セロトニンの原料となるトリプトファンというアミノ酸を多く含む、肉類や赤身魚を摂取することがおすすめです。

セロトニンの合成能力を調べた過去の研究では、結果に男女差があり、女性は男性よりも脳内のセロトニンが不足しやすく、「不安が原因でキレてしまう」傾向があることがわかっています。
 

子どもが自分と違う人格だと思えなくなる

ーー他人は大丈夫なのに、わが子だとイライラしてしまう理由は?

自分と同じルールである集団のメンバーのはずなのに、「なぜ、この人はルールを守らないの?」ということを検出してしまうと、一気にムラムラが高まり、「きちんとルールに従いなさい」と攻撃したくなってしまいます。この「ルールに従っていないこと」の検出能力を高めることに関わってくるのが、「オキシトシン」という、人と人の絆をつくるホルモンです。

家族の中で、このオキシトシンによる仕組みが働くとき、親が子どもをコントロールしたくなるという現象が起こります。「何回も注意しているのに、子どもが話を聞かない」とキレてしまうのは、このオキシトシンにより、子どもが自分と違う人格だと思えなくなるからでしょう。


ーー“怒り”はネガティブな感情でしょうか?

“怒り”や“イライラ”は、ヒトであれば、誰でも感じる自然な感情です。母親になることで、未婚の時は思いもよらなかったことをしてしまうのも、順調に母親脳になった証拠なので、それ自体は心配することではありません。

しかし、パートナーは他人だった時がありますが、子どもは他人だった時がないため、怒る気持ちが行き過ぎてしまうこともあると思います。とても難しいことですが…親は「子どもは自分の一部ではなく、自立した個人である」と、自分に言い聞かせることが必要な場合もあるのではないでしょうか。
 

「頭ではキレてもいいが、言葉でキレないことが大切」

ーー子どもにキレてしまうことの解決策はある?

親がキレてしまうと、子どもは驚いてしまうため、「びっくりしない伝え方」ができるといいのではないでしょうか。

頭ではキレてもいいが、言葉でキレないことが大切だと思います。ボキャブラリーを増やすことで、キレても相手を傷つけず、効果的に伝えることができれば、親子関係はもっとよくなるはずです。

これは、親子関係のみならず、どんな人間関係にも有効です。始めるのは、早ければ早いほどいいですし、遅すぎるということもありません。“思い立った時が、始め時”といえるでしょう。
 

新型コロナウイルスによる自粛は、自分や家族、友人、同僚など、大切な人を守るために必要なことだ。しかし、それによってストレスが溜まり、お互いの関係が悪くなってしまうのは悲しい。

中野さんは「怒ることは、自然なこと。うまくキレることができるよう、言葉の工夫がポイント」と話す。2児の母である筆者も、言葉でキレないように心がけるだけで、だいぶ子育てが楽になった。

親の愛がゆえに、湧き上がる怒りやイライラ。脳の仕組みがわかると、怒りも客観的に捉えることができるのではないだろうか。

(執筆:清水智佳子)
 

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プライムオンライン編集部
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