生活をともにする配偶者は、運命共同体ともいえる存在だろう。

ただ、長い時間を一緒に過ごせば、相手のちょっとした言動にイラッとすることもあるもの。しまいには感情を抑えきれなくなり、夫婦ゲンカに発展してしまうことも…。

夫婦関係を良好に保つためにも、できれば夫婦ゲンカは避けたいが、未然に防ぐ方法はあるのだろうか。『なぜ、突然妻はキレるのか?』の著者で、教育コンサルタントの嶋津良智さんに、夫婦間におけるイライラの抑え方を聞いた。

イライラセーブの第一歩は、相手に対する“間違った期待”に気づくこと

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「接触回数が多い相手ほど、イライラや悲しみ、憎しみといった感情の乱れは生じやすいのです。また、人と人は、脳の作りも思考も価値観も違うもの。『夫婦はわかり合えないもの』という前提で考えることが大切です」

嶋津さん曰く、「『夫婦なんだから、わかりあえる』と思うと、関係が悪化してしまう」とのこと。夫婦間のイライラの原因は、“期待”にあったのだ。

「相手に期待をすることは、素晴らしいことです。ただし、見返りを求める“間違った期待”は避けたいところ。“間違った期待”が、怒りや憎しみ、悩みを呼んでしまいます」

“間違った期待”とは、「遅くまで仕事して帰るんだから、温かい食事が用意してあるだろう」、「今日は掃除したから、明日は相手がして当たり前」など、自分がしたことに対する見返りを期待すること。

「自分の当たり前は、相手の当たり前ではないことを学習しましょう。残業終わりで遅くに帰ったら、食事が用意されていなくてムカッとした時に、『これが“間違った期待”か』と気づくだけで学習になります」

この時、頭の中で6秒数えると、イライラは収まるそう。脳の機能には、原始的な欲求に関する「感情系」、合理的な判断をしようとする「思考系」の2種類があり、イライラや怒りは「感情系」が優位になっている状態。しかし、6~10秒経つと「思考系」が働き始めるという。そのため、6秒ほど数えることで、冷静になれるのだ。

「ただ、ここで我慢するとストレスが溜まるので、自分の希望を相手に伝えることも大切。配偶者への伝え方としては、その場の感情に任せて言うのではなく、タイミングと言い方に気をつけましょう」

例えば、少し日にちを置き、配偶者の機嫌がいい時に「疲れて帰ってきて、温かいおいしいごはんがあったらうれしいな」と、伝えてみる。

「人は、自分の思いを相手に伝えられないと、ストレスが溜まります。相手が伝えた通りに動いてくれるかは別として、きちんと伝えることが、健全な関係を保つ秘訣です。ただし、“親しき中にも礼儀あり”を心がけ、やさしい口調で伝えましょう」

不満があれば、きちんと伝えることが重要

自分のイライラは抑えられたとしても、配偶者がキレやすい場合もある。ヒートアップしている相手を落ち着かせる方法はあるのだろうか。

「人を変えようとするのは、難しいのが現実です。まずは、相手にキレやすさを自覚させるため、キレられた時はあえて黙るなど、行動で気づかせることは有効です。キレられることが嫌ならば、きちんと伝える方がいいでしょう」

この場合も、タイミングと言い方に気をつけよう。「不満があると言葉遣いが強くなるところが嫌だから、きちんと冷静に話し合おう」といったように丁寧に話し、不愉快に感じていることを気づかせることが、相手のキレやすさを抑える第一歩。

「日本人の悪いところは、“暗黙知(経験や勘に基づく知識)”に頼りすぎて、多くを語らないところ。自分の思いや考えの8割は伝わっていないことを前提に、コミュニケーションを取っていかないと、人間関係は成立しません」

「言わなくてもわかってくれるだろう」、「自分の思いを理解してくれているだろう」という“間違った期待”が、関係をギクシャクさせてしまうというわけだ。

「ただ感情のままに喚くのではなく、どんな言葉遣いだと相手に伝わるかを考え、工夫してこそ、コミュニケーションは成立します。うまくいっていない夫婦は、摩擦を恐れて向き合わずにイライラを溜め込んでしまい、ついには感情のぶつけあいのようなケンカに発展してしまうのでないかと思います」

夫婦ゲンカが勃発したら、交戦せずに「退散」

感情が抑え切れず、罵り合いのようなケンカに発展してしまった場合に、なるべく早く場を収める方法も聞いた。

「退散すること! 無意味なケンカだと思い、この場にいることで長引くと感じたら、トイレやコンビニに行く。不毛な口論に発展する予感がしたら、まったく違う話題にズラしてみる。その場を離れて一旦区切る『タイムアウト』というスキルです」

ただし、突然場を離れたり、話題を変えたりすると、相手の怒りが増してしまうこともある。この場合には、一言プラスすることが重要だという。

「例えば、『お互い傷つけ合うだけだから、頭を冷やしにコンビニに行ってくる』とか『罵り合うだけでいいことないから、別の話をしようよ』とか、ほんの少しの言葉で、お互いに冷静になれるはずです。ケンカを終えて、一瞬でも距離を置けば、怒りの感情は収まりますよ」

怒りの感情が暴走すると、思ってもいない言葉を投げつけてしまうこともある。そうならないためにも、一度立ち止まり、冷静になる時間を持つことが大事。そして、夫婦関係を長く続けるためにも、互いの思いを伝え合うことを忘れずに。

教育コンサルタント・嶋津良智さん

嶋津良智
教育コンサルタント、一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事、リーダーズアカデミー学長、早稲田大学エクステンションセンター講師。大学卒業後、IT系ベンチャー企業入社、独立・起業などを経て、2005年にリーダーズアカデミー、2013年に日本リーダーズ学会を設立。リーダーを感情面とスキル面から支え、世界で活躍するための日本人的グローバルリーダーの育成に取り組む。著書に『怒らない技術』など多数。

リーダーズアカデミー: https://www.leaders.ac/

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