すぐに怒ってしまう子。怒りが抑えられない子。
怒りの感情は年齢問わず、誰もが持っているもの。しかし、その感情をコントロールできるようにするにはある程度の積み重ねが必要になってくる。
では、子どもが感情をコントロールできるようになるために、親はどのように接していけばいいのか。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の小尻美奈さんに聞いた。
子どもの怒りの背後にある感情を読み取る
――子どもが感情をコントロールできるようにするために親はどうすればいいのでしょうか。
まず、子どもの怒りを否定しないでください。怒りや不満に思う気持ちは悪いものでも恥ずかしいものでもなく、どれも自然で大切な感情です。
逆に否定すると、子どもは感情を表現しなくなったり、我慢したりしてしまいます。次第に自分が何を感じているのか自分の気持ちがわからなくなったり、抑圧された怒りを不適切な行動で表現してしまったりすることもあります。親は適切に感情を表現できるようにサポートすることが大事です。
――具体的にどのようなサポートをすればいいのか教えてください。
子どもが自分の気持ちに気づけるようにサポートすることです。
例えば、子どもが「友達とサッカーしたかったのに、『お前、下手だから入れない!』と言われて、僕はすごく怒った!だから蹴飛ばした!」と言ったとします。
それに対して、親は「なぜ、蹴飛ばしたの?ダメじゃない」と感情的に言いがちです。もちろん、「蹴飛ばす」という行為については叱ることが必要ですが、まずは、子どもの怒りにつながった感情を汲み取ってください。この子は、仲間に入れてもらえず寂しかったり、下手くそと言われて悔しい思いをしていたんです。
だからこそ、掛ける言葉は「仲間に入れてもらえずに悔しかったんだね。寂しかったんだね」と子どもに寄り添う言葉です。そうすると、子どもは怒り以外の感情があることに気づきます。
――親が気を付けなければならないことはありますか?
日頃から親が「不満」「残念」「困った」などのマイナス感情をいつも怒りだけで表現していると、子どもも同じようにマイナス感情を全て怒りだけで表現しようとします。感情表現は、身近な人から模倣して身につけていくのです。
親ができることとしては、「お母さんはこうされると嫌なの」や「こうなると不安なの」といった気持ちを伝えると、子どもは親の気持ちを理解したり、「こうされたら友達も嫌かな」と、相手の気持ちを想像できるようになります。
ぜひ、親子で気持ちを伝え合う習慣を作ってみてください。同じ状況でも親子で気持ちが違ったりするので、気づくことは多いと思います。
子どもが友達を傷つけても…
――子どもは泣いて怒りを表現することが多いと思いますが、モノにあたったりして怒りを表現する場合はどうすればいいのでしょうか。
怒りの表現方法や怒ったときの態度や行動は人それぞれ違います。泣く子もいますが、モノにあたることもあるでしょう。怒るときは、人・自分・物を傷つけずに上手に表現できるようにサポートします。時に親は、怒りの裏にある子どもの気持ちを代弁することが大事です。
先ほどの「サッカーに入れてもらえずに、友達を蹴飛ばした」という例で言うと、まず親は「仲間に入れてもらえなくて悲しかったね」と言葉を掛け、“あなたの気持ちを分かっています”と伝えてあげることが、子どもにとって安心へとつながります。
感情は認めつつ、蹴飛ばしたり、モノにあたるような行動や態度については叱ってください。そして、子どもの怒りを認めながら、蹴飛ばさずに、モノにあたらずに気持ちが落ち着く方法(深呼吸やお絵かきなど)を一緒に探してあげましょう。
――一方で、親は子どもにどう怒りを伝えれば良いのでしょうか。正しい叱り方はありますか?
自分のリクエストを伝えること。子どもにリクエストを理解してもらうためには、言葉のセンテンスを短く。親が怒ると5~10分も同じことを繰り返し言ってしまいがちですが、これは逆効果。
「帰宅したら手を洗ってね」などと発する言葉を短くしましょう。その方が子どもには伝わりやすいです。
また、「先生に叱られるよ!」や「お父さんが怒るよ!」と言ってしまうことも多いと思いますが、「怒られなければやってもいい」と解釈してしまう場合もあるので、第三者のせいにするのはやめましょう。もちろん、「お兄ちゃんはできているのに、あなたは…」といった兄弟や友達間で比べないことも大切です。
NGな怒り方
――センテンスを短くする以外にも、怒り方のコツはありますか?
「ちゃんとしなさい!」と親は言いたくなりますが、子どもと大人の“ちゃんと”は違います。親が「ちゃんと」というたびに、子どもは「ちゃんとやっているのになんで怒るの?」と思ってしまうでしょう。
また、「すぐやりなさい!」の“すぐ”も違います。「ちゃんと・しっかり・きちんと・すぐ」などは程度言葉といって、人によって程度が変わる言葉です。
だからこそ、具体的に伝えてあげてください。
例えば、「おやつを食べたら、“すぐ”宿題をしなさい」と親が言ったとします。しかし、親の“すぐ”が10分以内だったとしても、子どもの“すぐ”は30分だったり、1時間後だったりするのです。
だからこそ、「すぐ宿題をしなさい」より「おやつを食べ終わって30分以内に宿題をしてね」、「すぐ寝なさい」より「20時までにお布団に入りなさい」と具体的に伝えましょう。
さらに人格攻撃はNGです。「あんたは本当にダメね」といった言葉です。こうした言葉や態度、行動などは、親のリクエストを素直に聞いてくれなくなり、反発心が生まれたり、心を閉ざしてしまう可能性があるので注意しましょう。叱っていいのは、子どもの人格否定につながる性格や能力ではなく、態度や行動です。
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(イラスト:さいとうひさし)