10月28日、東京都内で開かれた記者会見。主役は「戸定梨香」という女性キャラクターだ。

戸定梨香:
本来であればこの制服を着て、秋冬の交通安全運動のPRができるはずだったのですが、残念ながら今は見送りとなってしまっております。

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このキャラクターは千葉・松戸市のPR活動などをしてきた“ご当地Vtuber”

松戸市発祥の「二十世紀梨」と同じ髪の色、そして名字の戸定は松戸市にある国の重要文化財「戸定邸」にちなんでいるという。

その戸定梨香が訴えているのは、ある動画をめぐる問題だ。

戸定梨香:
自転車に乗るときはルールを守って、正しく利用しましょう!ちばサイクルール!1つめ「自転車保険に入ろう」。自転車も事故で人にけがをさせてしまうことがあるよ

この動画は千葉県松戸警察署などによる交通啓発活動の一環として、2021年7月に千葉県警のYouTubeなどで公開された。

フェミニスト議連の指摘で動画削除…所属事務所の代表は抗議

しかし、全国フェミニスト議員連盟から「性的」だとの抗議を受け、9月に削除された。

連盟側は公開質問状で「セーラー服のような上衣で、丈はきわめて短く、腹やへそを露出しています。体を動かすたびに大きな胸が揺れます」「性的対象物として描写し、かつ強調しています」などと指摘し、謝罪と動画の削除を要求

これに対し、28日、戸定梨香の所属事務所「Art Stone Entertainment」の板倉節子代表が抗議の会見を行ったのだ。

戸定梨香の所属事務所 板倉節子代表:
まず、削除されて終わりになっているような状況なんですけれども。今後、松戸市とどのように関わっていけばいいのかという問題は残っておりますし、そもそも、そのような意図で作ってないものですし…むしろ謝罪してほしいぐらいです。

松戸市のバイク販売店「サイクルボックス」の店頭には、戸定梨香の等身大パネルが置かれている。啓発動画の削除を受けて10月、交通安全のために設置したという。

サイクルボックス・小松弘明店長:
実際こういうふうにパネルにしてみると、みなさん「なんでこれが?」という意見が多いですね。かわいいというのが率直なのかなという感じですね。

松戸市民の印象はどうなのか。聞いてみると…

松戸市民(30代):
昔からセーラー服着たキャラクターというのはいるので、そんなに問題になるほどのキャラクターではないかな

松戸市民(50代):
世代が上になると何か違和感を感じたりするのかもしれないけど、届けたい年代に届けば別にいいんじゃないかなと

全国フェミニスト議員連盟は取材に対し「表現の自由の問題ではなく警察が子供向けの交通安全動画に採用したことを問題視している」と説明。その上で「性犯罪や虐待を取り締まる立場の警察はもっと慎重になるべきだ」と主張している。

古市氏「行政もクリエイターを守る責任があった」

イット!のスタジオでは、加藤綾子キャスターが社会学者の古市憲寿氏にお話を伺った。

加藤綾子キャスター:
見る人によって見方が違うと思うので難しいんですけど、今回のVtuber、キャラクターですよね。これまで松戸市の魅力を発信して認知されていた。だからこそ起用したいと思ったということだと思うので、起用した側もその意図をきちんと説明しないと、クリエイターとかキャラクター自体を否定したような印象になってしまって残念だなと思うんですよね

古市憲寿氏:
本当そうですよね。行政も一回使うと言ったからには、クリエイターを守る責任があったと思うんです。一方で議員連盟の方も、地方議員と政治家って権力者だと思うんですよ。議員連盟という肩書を使って、表現の自由を抑圧してるというふうにとられてもしょうがない。極めてすごい悪質だなと思うんですね。

古市憲寿氏:
もちろん人によって、快・不快は違いますけれども、だからこそ対話が必要だと思うんです。そこで対話を求めるんじゃなくて、いきなり動画の削除と謝罪を求めるというのはすごい一方的で不快なものを世の中から消そうという発想はすごい危険だと思うんですね。個人的にもすごい違和感を感じるような事件でしたね

加藤綾子キャスター:
そうですね。この問題だけではなくて、何か批判が集まったら引っ込めて終わりということではなくてしっかりと議論をしてほしいですね。

(「イット!」10月28日放送より)