北海道東部を中心に続く「赤潮」が原因とみられる漁業被害が止まらない。サケ漁船に同乗し、その実態を取材した。影響は札幌市の飲食店にまで広がっている。
秋サケの漁獲量は激減、風評被害への懸念も
10月15日から時短要請が解除され、通常通りの営業が復活した札幌市中央区の「回転すし 活一鮮」だが…
回転すし 活一鮮 佐藤いわお社長:
原料を確保するのが大変な状況
赤潮が原因とみられる漁業被害の影響で、イクラやウニが品薄となっている。生産者からは悲鳴が。
木村漁業部 木村太朗さん:
毎日、沖に出るのが不安。恐ろしく心配しかない
かつてない漁業被害。影響はどこまで広がるのだろうか?
終盤を迎えている秋サケの定置網漁。10月14日午前4時、北海道東部の白糠漁港から出漁した船に同乗した。この漁船では、9月下旬から水揚げしたサケ約600匹が死ぬ被害に見舞われた。赤潮が原因とみられている。
この日、水揚げされたサケで死んでいたのは1匹。10月中旬以降、海水の色が澄んできたという。しかし…。
移動すると海水が徐々に濁るエリアも発見。場所によっては赤潮がみられる状況だ。
この漁船が水揚げしたサケは約400キロ。例年の同時期の1トンを大幅に下回る。
木村漁業部 木村太朗さん:
漁獲量が少なく、さらに赤潮でダブルパンチ
深刻な被害に加え、風評による二次被害も心配している。
木村漁業部 木村太朗さん:
他の魚も悪いのではないかとイメージがつくのが心配で不安
白糠漁港では、水揚げ時に生きている魚と死んでいる魚を選別し、死んでいるものは肥料にするなどの対策をとっている。
広がる赤潮被害 原因のひとつにプランクトン
今回の赤潮の原因の1つが「カレニア・セリフォルミス」というプランクトンだった。これによる赤潮の発生は日本で初めてだ。
なぜ北の海で赤潮が発生したのだろうか。
東京大学大学院 農学生命科学研究科 岩滝光儀 准教授:
赤潮が発生している地域を見ると、低水温に分布している。セリフォルミスは低水温に適応している
赤潮の影響はさらに広がっている。
北海道釧路市の水産加工会社「阿部商店」では、これまで地元産のイクラを扱ってきたが、入荷量が半分ほどになった。
北海道内のオホーツク地方から取り寄せているが、その分運送料がかさむ。
阿部商店 阿部英晃社長:
新巻きやイクラは、年末に向かって2020年より1~2割高くなってしまう。2021年だけで被害が終わるような対策を求める
イクラの仕入れ値は去年の1.5倍に…ウニも高騰
そして、影響は札幌市の飲食店にも。秋サケの不漁と赤潮の影響で、イクラの仕入れ値が高騰している。
回転すし 活一鮮 佐藤いわお社長:
2021年は1キロ9000~8000円。2020年の1.5倍になっている。原料を確保するのが大変な状況
ウニも品薄だ。これまで2個で539円だったが…。
回転すし 活一鮮 佐藤いわお社長:
これまで2個で提供していたが、今は1皿1個で提供している
10月7日から値段はそのまま539円で、量を半分にせざるを得なかった。
回転すし 活一鮮 佐藤いわお社長:
味がいいのを優先すると、色が悪いものも出てくる。それでも今までの価格の2~3倍ぐらいする。お客さんから「色が悪い」と言われたり、返されたりすることも。年末にかけて世の中からウニが消えてしまうのではと懸念しています
北の海、そして食卓が大きな危機を迎えている。
(北海道文化放送)