「家事は女性」「男性は仕事で家計を支える」。こういった性別に基づく固定観念が、いまだ根深く残っていることが、内閣府の調査でわかった。

内閣府は今年8月、全国の20代~60代の男女10330人に、性別に基づく無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)について初めての調査を実施。

質問は全部で36項目あり、「家事・育児は女性がするべきだ」「組織のリーダーは男性の方が向いている」などの家庭・コミュニティ領域と職場領域での性別役割、「女性は感情的になりやすい」といったその他性別に基づく思い込みに関するものとなっている。

測定項目(画像提供:内閣府)
この記事の画像(6枚)

この36項目について「そう思う」 「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の4段階で聞いたところ、回答者全体の76.3%が、少なくともひとつは「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答していたのだ。

そして、この割合(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」の合計)が男女ともに1位だった項目が「女性には女性らしい感性がある」で、男性は51.6%、女性は47.7%、2位も男女ともに同じで「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」の男性は50.3%、女性47.1%だった。

性別役割意識 男性と女性の上位10項目(画像提供:内閣府)

「女性には女性らしい感性があるものだ」について、内閣府担当者は、「家庭・コミュニティや職場などの場面において、共通する背景にある思い込みであり、他の具体的な言動や態度に影響を与えているものである」とみている。

また、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」については、「昔からの“男は仕事、女は家庭”といったことであり、“家事・育児は女性がするべきだ”ということと表裏の関係と考えます。典型的な性別による役割に関する思い込みかと思いますが、この結果を見ると、やはり幼少期から形成されていると思われる無意識の思い込みは根深く、引き続き解消に向けた取組を進めていく必要があるものと見ています」と分析している。

また、男女で意識に差があった項目が「デートや食事のお金は男性が負担すべきだ」で男性は37.3%、女性は22.1%、「男性は人前で泣くべきではない」は男性が31.0%、女性は18.9%、「男性なら残業や休日出勤は当たり前だ」は、男性は20.2%、女性は10.3%だった。

これについて同担当者は、「男性自身が“内なる思い込み”をしていることが明らかとなったもの」と見ている。

職場の役割分担は、男性の方が性別役割意識が強い

職場の役割分担については、すべての年代において、女性より男性の方が性別役割意識が強いことがわかった。 「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」については、特に20代30代の男性の性別役割意識が強かった。

性別役割意識 性・年代別(画像提供:内閣府)

続いて、性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験については、「直接言われた経験」よりも「言動や態度から感じた経験」の方が多く、 男性より女性の方が性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験があると回答している割合が高い結果となった。

性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験(画像提供:内閣府)

直接言われた経験では、「女性は感情的になりやすい」「女性には女性らしい感性があるものだ」「女性は論理的に考えられない」「男性は人前で泣くべきではない」など感情に関する考えが上位に。

さらに、女性は「親戚や地域の会合で食事の準備や配膳をするのは女性の役割だ」「家事・育児は女性がするべきだ」「受付、接客・応対(お茶だしなど)は女性の仕事だ」「職場での上司・同僚へのお茶くみは女性がする方が良い」の4項目について、「直接言われた経験」も「言動や態度から感じた経験」も多かった。

また、性別役割経験の自由回答を見てみると、「出産をしたのですが、家事育児は女性がやるものだと、旦那と義母から言われました(20代女性)」や「上司から男はいくら稼いでいるかで価値が変わると言われた(40代男性)」「親の介護で休職願いを提出した時に、配偶者に任せるべきだと指摘された(50代男性)」といった回答もあった。

性別役割体験 自由回答 (画像提供:内閣府)

このように、様々な場面で性別による意識差が浮き彫りとなったわけだが、今後、意識差はどのように解消していくべきなのか?

男女共同参画局総務課の担当者に詳しく話を聞いてみた。

50〜60代は「男は仕事、女は家庭」と言われた世代

――今回、なぜ性別に基づく無意識の思い込みについて調査した?

第5次男女共同参画基本計画において、固定的な性別役割分担意識や性差に関する偏見の解消に資する、また、固定観念や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)を生じさせない取り組みに関する情報収集を行うとともに、啓発手法等を検討し、情報発信を行うこととされています。

今回の調査は、この計画に基づき、無意識の思い込みについて、気づきの機会を提供し、理解を促すことで解消の一助とするために調査・公表したところです。


――どんな点を意識して、アンケートの質問を作った?

初めての調査であったことから、まずは事前調査を実施し、具体事例を自由回答で聴取しました。自由回答を整理分類し、測定項目を設定するに当たっては、専門家の意見を聞きました。

事前調査で多かった回答を分析すると、家庭・コミュニティシーンや職場シーンでの内容が多かったため、そこに焦点を当てて設計し、調査の際は、初めからバイアスがかからないよう、生活における役割と価値観についてのアンケートという形で実施しました。


――全ての年代において、女性より男性の方が性別役割意識が強い点をどうみる?

50代、60代の男性が強く出ていますが、「男は仕事、女は家庭」と言われる中で生きてきた世代であり、その子世代(今の20代、30代)においてもその影響があるものと考えます。そういう意味で、成長過程における影響もあるのではないかとみています。

職場では経営層や管理職、人事担当の理解を促すことが重要

――性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験で注目すべき点は?

1点目は、「直接言われたり聞いたりしたことがある」経験よりも「直接ではないが言動や態度からそのように感じたことがある」経験の方が、割合が高い点です。

2点目は、「直接ではないが言動や態度からそのように感じたことがある」経験でみたときに、50代、60代女性が特に割合が高く、若くなるにつれ低くなっている世代間の差です。専業主婦が多かった過去の時代と共働き世帯が増えてきている現在との間で生じている、女性を取り巻く環境の変化が影響しているのではないかと考えます。

3点目は、性別役割を感じさせた人を見ると男性側に偏っているという点です。


――「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」。若い男性にこういった意識が高くみられたことをどう見る?

昇進や管理職への登用については、若い世代の多くは今後の昇進や管理職への登用の可能性を有している特性があり、それが影響しているのではないかとみています。その背景には、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」「組織のリーダーは男性の方が向いている」といった、成長過程の中で醸成された自身の内なる思い込みも影響しているものと考えています。


――性別に基づく無意識の思い込みはどうやって解消すべき?

今回の調査の目的は、気づきの機会を提供し、理解を促すことが重要かと思います。職場シーンでは経営層や管理職、また人事担当についている者に理解を促すことが重要です。「家事・育児は女性がするべきだ」との思い込みがあると、管理職が思い込んでいる場合は、仕事と家庭の両立を考慮しない業務管理、人事担当者が思い込んでいる場合は、男性は育児期間中でも配慮されず、育児参加のできない多忙なポストへの配置といったことが起き、家庭生活への影響が大きいと考えます。

仕事と家庭の両立を考慮しない業務管理や、育児期間中であることを配慮しない人事配置は、家事育児の負担を女性側に集中させることになり、家庭での夫婦間の問題を引き起こす可能性があるとともに、そのような環境で育った子供は「パパはお仕事、ママはおうちでご飯作ったり、洗濯したり、勉強をみてくれる」と認識するのではないでしょうか。こうして、子世代も無意識のうちに思い込みを醸成してしまうものではないかと考えています。


今回の調査で、性別に基づく無意識の思い込み、アンコンシャス・バイアスは男女ともに強く残っていることが明らかとなった。それを解消するには、こうした事実が広く知られるとともに、職場の経営層や管理職はもちろん、社会全体の理解が必要となることだろう。