新型コロナウイルスの影響で観光が影響を受けるなど、地域の魅力を発信することが難しい状況が続いている。
そうした中、新潟・柏崎市でアニメを使って街をPRする取り組みが始まった。

柏崎の魅力をアニメで紹介

柏崎市にあるアパートの一室で机に向かい、黙々と作業する人たち。ここは、柏崎を舞台にしたアニメ「とびだせ!柏崎」を制作した柏崎のアニメスタジオだ。

柏崎アニメスタジオ
柏崎アニメスタジオ
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2020年に東京から移住し、スタジオを立ち上げた荒尾哲也さんが、柏崎の魅力を語った。

スタジオガッツ・荒尾哲也代表:
いいでしょう、柏崎って。山があって、海があって、暮らしもちゃんとある

柏崎への思いを語る荒尾哲也代表
柏崎への思いを語る荒尾哲也代表

スタジオガッツ・荒尾哲也代表:
どこか地方でスタジオをつくりたくて、どこかないかなと知り合いに相談したら、「じゃあ、柏崎だよ」と言われた。柏崎を見に来たら、「あっ、ぴったり」という

荒尾さんを魅了した柏崎という街。アニメ「とびだせ!柏崎」では、自然豊かな柏崎の街や観光名所を再現し、そこに息づく産業などを紹介していく。

あの場所もアニメで再現
あの場所もアニメで再現

「とびだせ!柏崎」長沢達也監督:
自分で実地に行って写真を撮って、ここにキャラがいて、こういうことをするのだろうなと思いながら作るのは、とても楽しかった

長沢達也監督
長沢達也監督

アニメの監督を務めた長沢達也さんも東京から移住。
荒尾さんも含めたスタジオのスタッフ3人は、全員が県外出身者だ。

そんな3人が作るアニメの主人公・ケン君もまた、柏崎以外の街からやってきた設定となっている。

スタジオガッツ・荒尾哲也代表:
ケン君は、柏崎の子じゃない。つまり視聴者の代わり。外に対してお伝えするのであれば、“外側から見た柏崎”という視点は外せない

地元企業などが出資「街をもっと盛り上げたい」

しかし、なぜ柏崎をPRするアニメを作ることになったのか。そこには、内側…地元の人たちの思いがあった。

ーー今回のアニメは、どんな経緯で携わることに?

柏崎インサツ・山田大介社長:
あるとき、荒尾さんとお昼を共にしたことがあった。そのときにいろんな話をしながら、柏崎発のアニメを作ってみようと

柏崎インサツ・山田大介社長
柏崎インサツ・山田大介社長

柏崎市で印刷会社を経営する山田大介さんがアニメに託したのは、地元への思いだった。

柏崎インサツ・山田大介社長:
よく若い子たちは、「柏崎は何もない街だ」と表現する場合があるけど、決して何もない街じゃない。“何でもある街”じゃないけど、“何もない街”ではない

託したのは「街を盛り上げたい」という思い
託したのは「街を盛り上げたい」という思い

「柏崎をもっと盛り上げたい」という思いを持った柏崎の企業などが出資し、柏崎に魅了された荒尾さんたちがアニメを制作することになった。

柏崎インサツ・山田大介社長:
これこれ! この絵が私

アニメには、柏崎の産業を紹介するためにさまざまなキャラクターが登場する。
「ぷくろうくん」は、山田さんがモデルとなっている。

柏崎インサツ・山田大介社長:
“私に似ている”という話を娘にしたところ、「パパずるい」と言われて、ニヤッとした

多くの工程があるアニメ制作

思わずニヤッとしてしまう約5分のこのアニメは、どのような工程を経て作られたのか。

〈STEP1〉絵コンテ

「とびだせ!柏崎」長沢達也監督:
まず絵コンテ。アニメでこのキャラクターが、ここでこんなことをするよという、大まかな説明をする最初の設計図

絵コンテは、キャラクターの動きや台詞、そして、その尺などを説明するアニメの設計図だ。
今回の約5分のアニメでは、長沢さんが40ページほどの絵コンテを描いた。

“アニメの設計図”となる絵コンテ
“アニメの設計図”となる絵コンテ

〈STEP2〉レイアウト

「とびだせ!柏崎」長沢達也監督:
絵コンテを見て、僕ら原画マンがレイアウトというものを描く

レイアウトは、大雑把に描かれた絵コンテを基に、キャラクターをどの位置に置き、どんな動きをさせるのか決める、アニメーションの要となる工程だ。

“アニメの要”レイアウト
“アニメの要”レイアウト

〈STEP3〉原画

「とびだせ!柏崎」長沢達也監督:
作画監督が見て、修正を入れてくれる。作画監督の要求通りに絵を清書していく

ここで初めてキャラクターが動く。振り向く、手を挙げるなど、1つの動作だけで約10枚の原画が必要になる。

1つの動作には多くの原画が必要に
1つの動作には多くの原画が必要に

そこで完成した絵に声をあて、アニメに命を吹き込む。

〈STEP4〉アフレコ

水球チーム・ブルボンウォーターポロクラブ柏崎の選手3人や、ぷくろうくんをはじめ、6役のキャラクターを演じるのは、人気アニメ「銀魂」の志村新八役など数々の人気アニメに出演する、柏崎出身の声優・阪口大助さんだ。

1人で6役を担当した声優・阪口大助さん
1人で6役を担当した声優・阪口大助さん

声優・阪口大助さん:
6役いただくというのは、なかなか経験上なかったので、めちゃめちゃ楽しかった

一つ一つのキャラクターの個性を大切に、演じ分けて話す阪口さんを監督も大絶賛する。

「とびだせ!柏崎」長沢達也監督:
1回目は多分、気付かないと思うけど、2回目聞いても6役だと分からない

阪口さんの演技を長沢監督も大絶賛
阪口さんの演技を長沢監督も大絶賛

アニメに出演したことで、阪口さんは17歳まで過ごした柏崎への思いもよみがえったようだった。

声優・阪口大助さん:
春の桜・夏の海・秋の紅葉・冬の雪、四季それぞれがすごくよくて。これを見て柏崎に興味を持ったり、行ってみようかなと思っていただけると、やったかいがあるなと思う

思い描くのは「街の明るい未来」

アニメ「とびだせ!柏崎」は、多くの人たちの柏崎への思いを形にして完成した。
制作に携わった人たちが思い描くのは、街の明るい未来だ。

柏崎インサツ・山田大介社長:
ロマンに向かって協力していく。それが至る所で起これば、もっとおもしろい街になるんじゃないかなと感じている

声優・阪口大助さん:
僕が小さいころ見た、ものすごくにぎわって楽しくて、自然がいっぱいの柏崎にもう一度戻ったらいい

スタジオガッツ・荒尾哲也代表:
できれば柏崎に外から人を呼びたい。そのためには、街がキラキラ輝いていないといけない。俺たちが、“ここで暮らしているよ”というのをアニメーションでお届けすることができたらいい

アニメの力で街に元気を! 柏崎にある小さなアニメスタジオの挑戦は続く。

「とびだせ!柏崎」は、柏崎アニメスタジオのYouTubeチャンネルで公開されている。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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