音楽業界に新たな風

SNSでは伝えきれないアーティストの熱量をファンに届ける。

1枚のカードの裏にあるQRコード。
ここに秘められた新たな音楽ビジネスのヒントとは。

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現役のバイオリニストとして活動している常田俊太郎さん。
音楽活動と同時にファンと繋がる新たなプラットフォームを開発し、注目されている。

ユートニック・常田俊太郎共同代表:
インターネットが普及して作品やデジタルコンテンツがどんどん無料で見れたり、聴けたり、ユーザーにとってはすごく良い環境ですが、作るのに費用や時間がかかっているところをどう回収していくのかというところで新しいアプローチができたらな。

常田さんが考えたのは、これまで収益化してこなかったコンテンツの活用。
数量限定でカードを発売。

専用アプリで裏のQRコードを読み取ると、デジタルカードとしてコレクションされ、限定の楽曲や非公開のデモ音源などを楽しむことができる。

熱量を軸にしたコミュニティー

アーティストによってカードに盛り込むサービスは様々。

アニメ映画の挿入歌を担当したEveさんは、専用アプリにガチャのようなソーシャルゲーム的な要素を取り入れ、ファンはミュージックビデオに出てくるキャラクターを獲得しながらEveさんの世界観を深めることができる。

ユートニック・常田俊太郎共同代表:
太さが少し違ったり、密度が違ったりという新しいつながりのあり方というのは、今のSNSではなかなか表現できていないと思うので、そういった熱量を軸にしたコミュニティーというのはアプリの中で実装を今徐々にしていっています。

新譜の発表やライブといった単発的な収益モデルだった音楽業界に新たな風を吹き込む取り組み。

ユートニック・常田俊太郎共同代表:
体験とか遊び、ゲーム性を組み込んでいくことで、コンテンツだけじゃない価値を足し合わせていくことで今の時代に合わせた運用型、常にリリースがあって、サブスクリプションとか単発の課金でもいいし、一定の売り上げが常にたつ運用モデルに移行していくのは時代の流れだと思います。

"非合理なもの"に価値

三田友梨佳キャスター:
社員全員がリモートワークで働くスタートアップ企業の石倉秀明さんに聞きます。
アーティストとファンのつながり方がデジタルやオンラインによって変わってきましたね。

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
クリエイターエコノミー」と呼ばれる大きな流れの1つだと思います。
個人でも作品を作ることが容易になったことで、小さくても自分の周りにファンを作って、それによりビジネスが成立できる流れが出てきています。

今回のプラットフォームはクリエイターとの濃いつながりを作ることでクリエイター自身のファンになってもらい、その応援の気持ちをマネタイズしていくものです。

ある意味では現代版のパトロンのようなものに近いと思います。
世界的に見てもツイッターのようなサービスをはじめ、多くのサービスがクリエイターの活動や作品によって稼げるエコシステムを作ることに注力する流れが出ています。

三田キャスター:
今回の試みは製作過程も見せていますが、これがまたファンを巻き込む仕掛けとなっていましたね。

石倉秀明さん:
こちらは「プロセスエコノミー」として注目されている1つだと思います。

今回でいえば未発表のものやデモ音源など完成に至る過程を見せることで、ファンも製作に参加している感覚が楽しめるといったこともあります。

今は完成したものの品質で差を付けるのは非常に難しくなっているので、製作のプロセスや苦労だったり試行錯誤している姿を見せることで差別化するやり方が出てきています。

三田キャスター:
その「クリエイターエコノミー」と「プロセスエコノミー」を仕掛ける際におさえるべき点はどんなことでしょうか?

石倉秀明さん:
どちらもその人自身の魅力にファンはお金を払っていることだと思います。
デジタル化やオンラインビジネスが進めば進むほど数字ではなかなか表現できない作り手の感性や個性、一見非合理なものにより価値が出てくるようになるのではないかと思います。

三田キャスター:
モノやサービスが溢れている今、製品が作られる過程などを通して制作者の思いに価値を見出すことで、差別化や人と人とのかけがえのないつながりを生むのかもしれません。

(「Live News α」9月6日放送分)