感染拡大で、医療提供体制が厳しさを増す中、在宅診療を行うクリニックが、ある仕組みを活用して、専用の診療チームの運用に乗り出す。

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この日、医師が駆け付けたのは、ひとり暮らしの50代の男性宅。10日前に発症し、入院できない状況が続く中、先月立ち上がったばかりの在宅患者の専門チームが対応した。

 在宅診療の医師:息苦しいですよね。動くと息が切れちゃいますよね。
         きょうは酸素濃縮器というものを持ってきました。
自宅療養者の男性:先が見えないというか。ずっと熱が下がらなかったので。
         起きていられないというか。こうした往診は、本当に安心です。

医師の人件費確保などで、厳しい経営状況が続く中、活用することにしたのが、クラウドファンディングと呼ばれるネットを通じた一般の人からの支援。

医療法人社団 悠翔会 佐々木淳理事長:
医療は総力戦と言われていますが、実は、このコロナとの戦いは、社会の総力戦だと思います

支援は一口3000円から。在宅医療の充実に向けた資金面での新たな試みがスタートする。

内田嶺衣奈キャスター:
このニュースについては、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話をうかがいます。在宅診療の運営コストをクラウドファンディングで集めるという、この試み、どうご覧になっていますか?

経済アナリスト 馬渕磨理子氏:
今回、悠翔会では、保健所からの依頼の増加に伴って、元々運営している通常の在宅医療とコロナ往診の両立が難しくなった背景があります。私自身、在宅医療の医療法人を経て、クラウドファンディングのベンチャー企業で働いている経験がありますので、両方の分野を理解している立場として、医療とクラウドファンディングの組み合わせは、今、最も必要な仕組みだと思っています。

経済アナリスト 馬渕磨理子氏:
特に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた医療現場の支援には、非常に共感が集まりやすいです。数字面で見ても、今回のプロジェクトを手がけているREDYFORで実施された医療系の支援総額は、前年比で、およそ8倍になっています。

内田嶺衣奈キャスター:
伸びてるんですね。様々な支援の形が今あると思いますが、なぜクラウドファンディングが選ばれているんでしょうか?

経済アナリスト 馬渕磨理子氏:
行政の手が、中々、行き届かない中で、市民みんなで、少しずつ力を集める。これが今の逼迫した医療に必要な形の1つだと思っています。また、現場の在宅医療の医師にヒアリングをさせて頂いた際に、行政からの要請で在宅医療を頼まれ、いざ現場に携われば、自分たちのリソースだけでは足りない現状がある。また、コロナ対応をしている間は、自分のクリニックを閉めて従事していることもあるので、持続可能なモデルではないという話も聞いています。

経済アナリスト 馬渕磨理子氏:
今回のコロナで、在宅医療の必要性が、改めて浮き彫りになっています。ぜひ多くの支援が集まって欲しいですし、今回のようなクラウドファンディングによる、医療をサポートする仕組みが、今後、広まって欲しいと思っています。

内田嶺衣奈キャスター:
本当にそうですよね。今回のクラウドファンディングでは、すでに1000万円を超える寄付が集まっています。この数字というのは、医療従事者の皆さんの活動を少しでも支援したいという思いの表れだと思います。こういった取り組みが、益々広がることを願います。

(「Live News α」9月3日放送分)