新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、在宅勤務が推奨されて約1年が経過。オンラインでの会議やミーティング、営業、商談なども徐々に当たり前になりつつあるが、まだその環境に慣れない人もいる。

そこで「仕事ができる人の話し方」(青春出版社)の著者であり、元NHKキャスターでコミュニケーションコンサルタントの阿隅和美さんに、対面やオンライン会議・ミーティングでの話し方、伝え方のコツについて聞いた。

著書では、会議・ミーティング以外にも雑談や提案営業、飛び込み営業、商談、セミナー、プレゼンなどさまざまなビジネスシーンにおける対面・オンラインでの話し方を具体例と共に紹介している。

対面の代用ではない。

コミュニケーションコンサルタント・阿隅和美さん
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前提として阿隅さんは「オンラインは対面の代用ではない」と指摘する。「今、オンラインなのは仕方ない」ではなく、コロナが収束したとしてもオンラインは活用され、ビジネススキルの一つになっていくという。

コロナの影響で急速にオンラインがメインになり、馴染めない、苦手だと感じている人は、対面での会議・ミーティングのやり方を意識しすぎているのかもしれないとも。

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「対面は“察する”部分も多かったのですが、オンラインはその条件が崩れました。しっかり伝えないとわかり合えないこともあります。対面とオンラインでは、情報・感情・意思の3つのやりとりが違うのです」

対面ではノンバーバル(非言語)な部分も含めて、“察すること”で通じていたことがオンラインでは難しい。意思や感情をハッキリ示し、自分の思いを言葉にして相手が受け取りやすく伝えることが重要になる。

ルール決めとウォーミングアップを

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オンライン会議・ミーティングで“話す側”は、まず2つの事前準備が必要になる。

1つ目は「ルール決め」。発言方法やチャットの使い方などのルール決めとアジェンダを作り、会議の目的やゴールを共有する。

会議でプレゼンする場合は、発言時間を決めておくことも大切。これはオンラインに限らず、対面の場でも生かすことができる。

2つ目は声を出すための「ウォーミングアップ」。在宅勤務だと声を出す機会も減り、オンライン会議・ミーティングでいきなり発声する人もいるはず。

対面以上に声の影響力が大きいオンラインでは、息をたっぷり吸うことが大事。深く息を吸ってお腹を膨らませ、また吐くことで“お腹から声を出す準備”が整う。加えて、「笑顔」の用意も。

長時間、パソコンとにらめっこをしてあまり話さないでいると、どうしても表情筋や唇、舌の筋力が硬くなってしまう。滑舌や聞き取りやすい発声は「口を縦に開く」ことだ。

表情筋をほぐし、口を大きく開かせることで聞き取りやすくなるため、ウォーミングアップとして「あ・か・さ・た・な」などと発声することで滑舌の改善につながるという。

話す時は「表現」「まとめ方」がポイント

実際に話をする時のポイントは「表現」と「まとめ方」の2つ。

1つ目の「表現」は、テンションや声質のこと。

対面よりもオンラインは聞き取りにくく、テンションや声質は「リアルの3割増を意識してください」と阿隅さんはアドバイス。

「自分の中でハキハキとやっているつもりでも、相手からすると抑揚がついていない、やる気がないと感じてしまう」こともあり、声のトーンを高めに、テンションを上げ、「少し大げさかな」と思う程度がちょうどいいそうだ。

オンラインで自分の声がどう届いているのかを知る一番の方法は、録音してみること。「研修でも録音や録画をすることで、『こんなつまらなそうに話しているんだ』と驚く人も多く、自分のイメージする“話し方”と乖離があることに気付きます」と阿隅さんは言う。

オンラインで届く自分の声を知ることで、改善策を考えることができ、“3割増し”の感覚もつかむことができる。オンラインで上手く話すことができれば、それが自信にもつながっていくのだ。

2つ目の「まとめ方」は、話の全体地図を冒頭に伝えること。オンラインでは、集中力が持続しにくく、カメラをオフにすると手元が映らないため、別作業をされてしまうことも。だからこそ、わかりやすく伝えることが必要になる。

オンライン会議・ミーティングの場では、テレビニュースの伝え方を参考にするとよいと阿隅さんは言う。

(1)リードと呼ばれる「何がどうした」(話の地図)…15秒以内、80文字程度
(2)ニュースの概要や理由、背景
(3)「こんなこともあります」という状況や感想、エピソードなど

テレビニュースで用いられている3つの構成を使うと、オンラインではわかりやすさがアップする。さらに優先順位を決めて、内容の取捨選択をするとよりスピーディになる。

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他にも具体例として、会議・ミーティングで「初対面」というシーンで会話のきっかけがつかめない場合。対面ではオフィスの眺望や社員の少なさを感じたら「みなさん、テレワークですか?」など、相手にとって身近な話題を投げかけるといいという。

オンラインは、初対面だとぎこちなくなりがちだが、対面と同じように身近な話題を投げかけ、会議前に会話の“キャッチボール”をすると本題に入りやすくなる。

またオンラインになったことで、上司が部下との意思疎通でうまくいかないことも多いようだ。部下に指示を出す時、「あれ、やっておいて」など曖昧な指示を出すと、ミスを招く原因に。

対面であれば互いに近くにいるため確認できるが、オンラインではそうはいかない。だからこそ、上司は5W1Hで言葉にして伝えることが大事。「知らない相手が見てもその作業をできるレベル」で指示を出すと、認識の食い違いをなくし、ミスも少なくなるため、意識してほしい。

30秒で言いたいことを伝える

ルールを決めて、事前準備をした上で、オンラインでしっかりと伝えるためには「時間の意識」を持つこと。この「時間の意識」は対面でも持っていたい感覚だという。

対面・オンラインでも1回の発言は「30秒」に留め、相手に渡すことがコツ。

「対面以上にオンラインは長い話だと離脱されやすいため、言いたいことを要約することが大事。30秒で伝えたいことを話せるように準備しておく。もし、長く話したい場合は『30秒ほどでこういう話を提議して、理由や問題提起も簡単に加えます』と流れを示した上で『その後、詳しく説明していいですか?』と了解を取っておくといいです」

言いたいことの要約は、「文章にして書くこと」が一番だという。阿隅さんはキャスターとしての経験から「取材したことをまとめて、限られた時間で報告する」ことを行ってきた。

紙に“言いたいこと”を書き出して、不要な言葉をそぎ落とし、大切な言葉を残す。そして時間を計りながら、話してみる。伝えたいことを伝える練習は地道な努力が求められるが、それをやることで「メキメキと上達する」そう。

もう一つ、一文が長いと相手を疲れさせてしまうこともあるため、「一文を短くする」ことも意識するといいという。

「会議やミーティングはよく知っている間柄だとなあなあになりがちですが、心の持ちようです。次は上手くやろうとチャレンジして、コツコツ積み上げていくこと。話し方が上手くなると評価にもつながります」

また、対面でもオンラインでも「話のノイズをカット」することで、信頼感も生まれるという。「え~」「あの」「まあ」のほかにも、「~的には」「~みたいな」という言葉を人は無意識に使ってしまいがち。録音することで言葉のクセにも気づくことができ、無意識に発する言葉のノイズをカットするだけで、話す内容の信頼度が高まり、相手の耳に届くようになる。

相槌とうなずきを使って

次にオンライン会議・ミーティングでの“聞く側”の姿勢について。対面以上に“見られている”意識が高まっている人もいるだろう。

ついつい、大きなリアクションやカメラをじっと見つめてしまう人も多いはず。

阿隅さんは「喜怒哀楽を表情で現わしたり、大きいリアクションをすることは疲れてしまい、会議を聞く状態にはなりません。大切なのは頷きで、あごの上下の動きを見せることです。表情に関しては自分が発言者に対して、協力する間柄かで、満面の笑みか普通の笑み、真剣な表情など臨機応変に変えていいと思います」

聞く側の姿勢として対面でもオンラインでも、「無表情・無視・無反応」は相手の本音を引き出せない。つい本音をこぼしたり、話を聞くのがうまい人は「表情・視線・反応」の3つで“傾聴している”という合図を相手に送り続けているのだ。

対面の場合、表情は笑顔で視線は相手の鼻のあたりを見つめ、自分のおへそを相手に向ける。大きく1回ずつうなずいて、反応を示すことがポイント。

一方のオンラインは「うなずきと相槌のコンビネーション」が重要とのこと。あごの動きを見せるうなずきと、ミュートの場合でも「そうか」「すごい」など感嘆詞の相槌を、声に出して(口を動かして)聞いていることを印象付ける。

また、マイクをオンにしている時、声が被ってしまうこともあるが、相手が話している時は無言で頷き、会話の切れ目に相槌を入れるのが効果的だという。

ただし、会議・ミーティングは、大人数で行うもの。自分だけ意識を高めても、質が良くなるわけではないのが残念なところかもしれない。

「会議・ミーティングを仕切るリーダーが変えていかないと変わりません。外資でも生産性を上げている企業は発言の時間を決めるなどして、会議を行っています。時間内に発言が収まらないと“成果がない”とみなされ、必死に伝わる話し方を練習しています。今ではそれが生産性を上げ、テレワークでの仕事のはかどりにつながったようです」

オンラインの面接でも使える

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オンラインでの話し方のコツは、ビジネスだけでなく、就職活動でも用いることができる。就職活動の面接は相手と初対面のことが多く、“元気に明るく話すこと”が特に重要になる。

阿隅さんも「就活でもビジネスと基本的なポイントは変わりません。自分の声の質を知らないと自己PRの内容がどんなに良くても印象に残りにくい。特に声のボリュームには気を付けてください。あまり小さいと弱弱しく聞こえたりするため、姿勢を正してお腹から声を出す。目の前のパソコンよりも遠くに人がいる意識で放物線に声を投げるようなイメージで話をすることが大切です」とアドバイス。

慣れてしまえば「オンラインの方が便利だ」と感じる人も多いかもしれない。徐々に“当たり前”になりつつある「オンライン」でのビジネス。少しずつスキルを上げることで、自分の可能性を広げていくことにつながっていくのかもしれない。

阿隅和美
WACHIKAコミュニケーションズ株式会社代表。大学卒業後、中部日本放送アナウンサーを経て、NHK衛星放送キャスターとして活躍。現在はTV現場で培った技術を活かし、のべ1万5000人以上に対して、ビジネス現場でのコミュニケーションを発揮、成果を出す人材を育成する研修・講座・講演などを実施。著書に『心をつかみ思わず聴きたくなる話のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

「仕事ができる人の話し方」(青春出版社)