災害への備えなどを特集する「いのちを守る」。今回は「山岳遭難」。
ここ数年、山菜採りに出かけた高齢者の山の事故が相次いでいる。楽しいはずの山菜採りで痛ましい事故を防ぐには。

4月から6月ごろに集中…山菜採りでの遭難

2021年5月3日。仙台市太白区秋保町で山菜採りをしていた男性が崖から滑落し、死亡する事故があった。

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宮城県警によると、2020年 宮城県内で発生した山岳遭難は過去10年間で最も多い38件、45人にのぼり、7人が命を落としている。
2021年は、さらにそのペースを上まわり、5月末の時点で14件、15人が関わる山の事故が発生し、うち3人が死亡した。

こうしたなか、宮城県警が注意を呼び掛けているのが、4月から6月ごろに集中する山菜採りでの遭難。

原因の多くは「道の迷い」、そして「滑落や転落」。
とくに、身近な山や行き慣れた山で遭難する高齢者の事故が目立つ。

山岳遭難を防ぐためにすること、しないこと

泉岳自然ふれあい館 下山倉美さん:
これがワラビですね。この辺だけでもこれだけ採れる

泉岳自然ふれあい館の館長、下山倉美さん。里山に詳しい下山さんと実際に泉ケ岳を歩きながら、山岳遭難を防ぐポイントを教えてもらった。

泉岳自然ふれあい館 下山倉美さん:
どうしても下を向いて採りながら行くので、時々は周りを見て、自分の位置を確認する

山岳遭難を防ぐための1つめのポイントは「周りを見る」。
山菜採りに夢中になると、つい視線が下に集中し、自分の位置がわからなくなってしまう。

泉岳自然ふれあい館 下山倉美さん:
林の中に入ると下ばかり見て採っていくから、自分の居場所を見失ってしまうことがある。時々は空を見ながら、自分の位置を確認しながら進むことが大事。つい夢中になってしまうと『自分はどこにいるのだろう?』となる

まわりを見ることで、障害物にぶつかったり、けがをしたりすることも避けられる。

山岳遭難を防ぐ2つ目のポイントは、「物につかまる」こと。

泉岳自然ふれあい館 下山倉美さん:
急斜面はまず滑る。なので必ずつかむ。物をつかむ。自分が滑るのを防ぐ。そして必ず片手を空ける。こっちを空けたら、こっちで採るということを気を付ける

常に片手で木や草などをつかみながら、もう一方の手で山菜を採る。こうすることで斜面から滑り落ちるのを防ぐ。

しかし、それでも避けられないのが万が一の事故。
そんなとき、下山さんは3つ目のポイントとして「動かない」ことを勧める。

泉岳自然ふれあい館 下山倉美さん:
動ければ、自力歩行可能なら構わないが、ねん挫などで歩けなかったら、そこで待つ。あとは迷わずに119番する。救急要請することが一番

動かずに救助を求めるためにも、携帯電話は必需品。
さらに、もし遭難した場合、助かるために重要なのが「目立つ服装」。

泉岳自然ふれあい館 下山倉美さん:
雨具も赤を使っているが、もし万が一のときには、これを着る。蛍光で目立つので、これだと空からも見やすいかと思う

これは、北海道警察がヘリコプターから撮影した実験の様子。画面の中で4人が助けを求めている。実験では赤や白の服装が上空から目立ちやすく、黒や青は見えにくいという結果になった。

泉岳自然ふれあい館 下山倉美さん:
私は予備に手鏡を持っているんですね。もし遭難したときに、これで光をヘリコプターに。服の色とこれで光を反射させる

今回、歩いたのは泉ケ岳のほんの入口。それでも足場が悪く何度も転びかけるなど、山は常に危険と隣り合わせだと感じた。
山岳遭難を防ぐには、どんな身近な山でも油断しないこと。そんな当たり前の基本の大切さをあらためて実感した。

(仙台放送)

仙台放送
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