新型コロナウイルスの感染拡大はいまだに終息の兆しが見えない。
シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法をわかりやすく解説。
今回は「江戸川病院(東京・江戸川区)」の腫瘍血液内科副部長でがん薬物療法専門医の後藤宏顕先生に、大腸がんに次いで日本人が多くかかる「胃がん」の症状と日本人に多い理由などについて話を聞いた。
胃がんの症状
後藤宏顕先生:
がん細胞の数が増えると、がん細胞にエネルギーをとられてしまい、体が痩せていったり、体重減少が起きます。
痩せていっている状態というのは、かなり進行していることを意味します。
早期に見つかった場合は体重減少はあまりありません。
胃がんがすでに発生している場合は、「胃の痛み」とか、胃にご飯が溜まっている感じの「消化不良」、または「潰瘍の形成」、潰瘍は胃がえぐれている状態でしみたり痛かったりします。
さらに進行すると胃が動かなくなって、ちょっと水分をとっただけでも気持ち悪くなったりといった症状が出ます。
胃の調子が悪いというのはよく感じる症状だと思いますが、それが続いたり繰り返す場合は胃の粘膜が警告を出していると考えて、早めに胃カメラをする必要があります。
それで問題がなければ安心して生活に戻れると思いますが、あまり我慢し続けないことが大切です。
日本人に胃がんが多い理由
後藤宏顕先生:
日本人や韓国人は胃がんがとても多いです。実は欧米ではとても少ないです。
その理由は、ピロリ菌だと言われています。
ピロリ菌は欧米にも存在していますが、その違いは毒性に問題があるといわれています。
日本の土壌の中に古くからある毒性の強いピロリ菌に、上下水道が発達する前に罹ってしまっているようで、65歳以上の6~7割がピロリ菌を持っているといわれています。
若年者は少なくなっていますが、口から口へとうつる可能性があるので、若年者だから感染していないわけではないので注意は必要です。
ピロリ菌感染を起こして炎症が続き、胃の粘膜が悪くなり、塩分の強い食べ物やアルコールによって弱くなった胃粘膜に刺激が加わり、がんが発生すると言われています。
(一般的に)よく言われるのが喫煙、アルコール、紫外線など発がん性物質は可能な限り避けた方がいいですが、全てを避けて生活するのはもはや困難なので、意識しつつ検診や人間ドック、症状があったら速やかに相談するなどの心構えが必要かと思います。
胃がんは遺伝する?
後藤宏顕先生:
胃がんの原因はピロリ菌だけではなくて、ピロリ菌に感染していなくてもなる「スキルス胃がん」が知られています。
原因ははっきりしていませんが、おそらく遺伝子のレベルで変化が起きていると言われています。
「遺伝する病気」と「遺伝子の変化がある病気」は似ているようで違うんです。
例えば、一部の乳がんや卵巣がんは遺伝子の変化を受け継いでしまう。そういったがんは遺伝するかもしれない。
胃がんの場合は遺伝するとは今のところ言われていません。
生まれてきて、何かしらの遺伝子を傷つける要因が発生して症状が出てきてしまう。
ただ、何が原因かはまだわかっていません。
スキルス胃がんは気をつけようがないです。
今後の未来の話ですが、もし血液検査とかで身体中に回っている微細ながん細胞を捉えることができれば、遺伝子検査、解析を行うことで、どんな遺伝子の変化によって胃がんが起きているのかが解明されるかもしれない。
胃がんに限らずそういった検査が期待されているので、今後何かわかってくるかもしれません。
次回は、「胃がん治療の最前線」について解説。