中華包丁が空から降ってきた

11月15日朝8時、通勤ラッシュ時間帯の四川省成都のバス停に、突然空から包丁が降ってきた。「バン!」包丁は大きな音を立てバス停の天井に当たって跳ね返り、バス停にいた市民の脇をかすめて足元に落ちた。目撃者によると当時バス停には2,30人がバスを待っていたという。落下物が包丁だったことを知った人々は驚き、皆一目散に現場を離れた。幸いにもけが人はなかったが、突然の出来事に、他にも何か落ちてくるのではないかと現場は騒然となった。

警察が駆け付けると包丁はバス停の脇に落ちていた
警察が駆け付けると包丁はバス停の脇に落ちていた
この記事の画像(11枚)

中国メディアが報じた写真を見ると、落ちてきたのはいわゆる文化包丁よりも一回り大きい中華包丁だった。当たっただけでも大けがの恐れがあり、刺さった場合は命も危ない。

通報を受け、現場に駆け付けた警察はほどなくして、バス停前にあるマンションの10階に住む、30歳の女を拘束した。

調べによると、女は交際相手の男性と10階の部屋に同居しており、この日2人は未明に酒を飲みに出かけ、午前7時過ぎに帰宅。酒に酔った状態で、些細なことで口論になった。、激昂した女はテーブルの上のものを部屋にまき散らし、更に台所から包丁を持ち出すと、窓の外に投げ捨てたという。

警察の調べに対し女は容疑を認め、公共の安全に危害を与えた疑いで刑事拘留された。

10階の女の部屋 物が散乱している
10階の女の部屋 物が散乱している

社会問題化する高所からの落下物

中国の大都市では、経済発展に伴い高層マンションが雨後の筍のように建設されている。それに伴い近年、高層階からの落下物をめぐる事件・事故が相次いでおり社会問題化している。落下物の種類も多種多様だ。包丁だけではなくガチョウやバーベルなど、何が落ちてくるか予想もつかない。

4月21日 貴州省で女性が電動バイクで路上を走行中、突然空から降ってきたガチョウと接触し、転倒、けが。ガチョウは飛ぶのが苦手な鳥で、ビルの屋上で飼われていたものだった。
(↓動画:画面左上から右下へ落下する物体がガチョウ ガチョウにあたりバイクが転倒)

6月13日 広東省深圳市で、母親と一緒に幼稚園に向かって歩いていた5歳男児の頭上に突然落ちてきた窓ガラスが当たり、男児は死亡。

窓ガラスが当たった男児を抱きかかえる母親
窓ガラスが当たった男児を抱きかかえる母親

6月22日、広東省深圳市で、32歳の女が家の掃除中に誤って筋トレ用のバーベルの重りを落とし、路上を歩いていた女性に当たり大けが。

落ちてきたバーベルの重り
落ちてきたバーベルの重り

7月2日 貴州省で10歳男児が高層階から消火器を投げ落とし。女性に当たり死亡。

女性に当たった消火器
女性に当たった消火器

11月13日 浙江省でエアコン設置作業中、作業員が部品を22階から落とし、3歳男児の頭を直撃。男児は意識不明の重体。

落ちてきたエアコン部品
落ちてきたエアコン部品

以上はここ数か月間で報じられたケースの一部でしかない。このほかにも落下物による死傷事故、車などの物損事故は度々起きており、そのたびにネットで話題となり、対策を求める声も挙がっている。

「死刑」の可能性も

実は成都の包丁投げ落とし事件の前日、中国の最高人民法院(最高裁に相当)は「高所からの放物、落下物事件の法に依る適切な審理についての意見」という、落下物事件防止に向け厳罰化などを求めるガイドラインを発表したばかりだった。「意見」は、結果が重大な場合は、最高刑が死刑の「故意殺人罪」を適用するよう求めている。こうした方針が示された翌日に早速このような事件を起こしたお騒がせ女について、中国メディアは「以身試法」(身を以て法を試した)と揶揄している。

【執筆:FNN北京支局長 高橋宏朋】

「中国トンデモ事件簿」すべての記事を読む
「中国トンデモ事件簿」すべての記事を読む
高橋宏朋
高橋宏朋

フジテレビ政治部デスク。大学卒業後、山一証券に入社。米国債ディーラーになるも入社1年目で経営破綻。フジテレビ入社後は、社会部記者、政治部記者、ニュースJAPANプログラムディレクター、FNN北京支局長などを経て現職。