「大学入学共通テスト」英語民間試験に続いて記述式問題も延期か

センター試験に代わって来年度から新たに実施される「大学入学共通テスト」がまたも揺れている。この新テストの柱の1つだった、国語と数学での「記述式問題」について、政府が導入を延期する検討に入ったのだ。

思考力や判断力などの幅広い学力を把握するために導入されるはずだった記述式問題なのだが、採点を民間事業者が行うことをめぐり、「採点の質の確保」や「公平性」の観点で懸念が噴出していることを受けての措置だ。

センター試験
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この大学入学共通テストをめぐっては、記述式問題と並ぶ柱だった「英語民間試験」の導入が、萩生田文科相の「身の丈」発言に端を発して問題となり、11月1日に文部科学省が来年度からの導入見送りを発表したばかりだった。

萩生田文部科学相の「身の丈」発言(10月24日のBSプライムニュースより)

この英語民間試験は、肝いりの新制度だったはずなのに、なぜこんなことになってしまったのか、そして新たな仕組みをどう構築していくのか。こうした点について検証・検討するための自民党の会議がスタートした。

英語民間試験の導入延期について、自民党が検証開始

12月4日早朝、自民党本部で行われた「大学入試英語の適正実施ワーキングチーム(WT)」の初会合。WTの設置を指示した岸田政調会長は冒頭にあいさつし、文科省に苦言を呈した。

大学入試英語の適正実施ワーキングチーム(WT)初会合で挨拶する岸田政調会長

「実施の導入、あるいは延期といった判断にあたって、事前の説明、あるいは相談、こういったことについて党に対して不十分であったということについては文部科学省に猛省を求めたいと思います。経済状況や住んでいる場所によって、受験生や保護者が不安を感じることのないように、何よりも教育関係者が準備をできるようにしっかり作っていただきたい」

そして文科省は、これまで英語民間試験の導入を進めてきた経緯と、その必要性について改めて説明した。

文科省は、英語の「聞く・話す」はグローバル社会を生きていくために重要と強調

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そもそも英語の民間試験は、従来の試験での『読む』・『書く』だけでなく『聞く』・『話す』も含めた4技能が問われる試験となることから、“生きた英語”の習得につながると期待する声が挙がっていたものだ。

会議で文科省は、1960年の高等学校学習指導要領から「英語の4技能を総合的に育成することが明示されている」と指摘。民間試験を導入することでこの4技能をバランスよく評価することができると説明した。さらに、すでに国立・公立・私立大学の平均として民間試験を導入している大学が36.3%にのぼるとの数字を紹介した上で、英語の民間試験を導入することは妥当だとした。

一方で、「都市部に比べて地方部では受験可能な試験が限定される」など地域事情への対応が不十分であることや、受験生によっては「交通費や宿泊費が発生する」といった経済的な事情への対応が不十分であるといった点を、問題点として改めて挙げた。

その上で、英語の4技能は「グローバル社会を生きていくために極めて重要」だとし、英語4技能の評価の在り方や受験生が平等に試験を受けられる体制作りなどを、今後1年を目途に検討していくと方針を示した。

国会議員からは文科省の対応への不満が噴出

こうした文科省の説明を受けて、会議に参加した国会議員からまず噴出したのは、導入延期へと方針転換した理由が不明瞭だとの指摘だ。

「(文科省が挙げた)問題点、わかっていながら精査できなかったのは管理能力の問題なのか、予算の問題なのか、悪意をもって放置したのかわからない。しっかりと精査すべきだ」
「論点はわかっていたはずなのに最後は萩生田大臣にああいう表明をさせた。その経緯がわからない。誰がどこでどう決定していったのか」

「延期の検討を行っている事実はない」と萩生田文科相(12月6日)

しかし、この日の主題とみられた文科省による一連の対応や民間試験の今後に関しての発言はこの程度にとどまった。なぜなら、議論が日本の英語教育の“そもそも論”へと展開していったからだ。

「日本人が英語をできないのは受験英語のせいだ!」そもそも論が続出

国会議員からは、「根本の問題に立ちかえったほうがいい問題だ」として、「18歳の1年間の受験のためだけにシステム(英語民間試験)を入れていくというのはナンセンスだ」といった、現在の試験制度自体に疑問を呈す声が出た。

指摘に対して文科省は、「高校3年生に限定するのは、公立高校関係者から、教育の早期化や、経済的に有利な人が何度も受けられるのを避けたいという意見があり、そうなった。私立高校の関係者はそもそも自分たちが受ける試験だから限定する必要ないということだったが…」と、公立校の現場の声を尊重した結果だと説明した。

すると国会議員からは、「日本人の英語ができないのは受験英語があるからだ」といった意見をはじめ、今の日本の英語教育そのものについての厳しい指摘が続出した。

「小学校、中学校、高校、大学で勉強するよりも、仕事でいると言われたほうが英語はしゃべれるようになる」
「英語好きだという人は勝手にやる。やらされ英語の負担を外してあげることが大切だ。英語を必須から外したい人はしてやると。そして話せる英語を教育してあげるほうが日本人の英語の底上げになる」

加えて、「日々の授業で、英語の先生自身が4技能を駆使しているのか」「日本の中学・高校教育を担当している先生が本当にみんな英語で授業できているのか」などと教師の質を問う意見も相次いだ。

英語の授業イメージ

言いたい放題・言いっ放しを心配する声も

英語民間試験の導入から、日本における英語教育の在り方という大きなテーマへと様変わりしていった約1時間の議論。会議の終わりには、座長を務める原田前環境相が、今後は英語民間試験の導入を“前提としない議論”が必要だと指摘した。

座長を務める原田前環境相

終了後、会議の参加者からは「今日は初回だから言いたいことを言ったということなんでしょうが、風呂敷を広げすぎるとたたむ時が大変なんですよね」と、困惑気味な声が漏れた。

WTは今後、高校や大学の関係者をはじめ、民間試験団体などからのヒアリングを行い、英語民間試験導入の目的を再確認するとともに、必要な試験方法や体制整備について議論し、来年3月にも、政府に最終的な提言を行う方針だ。どれだけ受験生のためになる、さらには日本人の英語力の向上につながる提言ができるか、議論の行方が注目される。

一番戸惑うのは受験生たち

(フジテレビ政治部 自民党担当 福井慶仁)