富山県沖で「アカナマダ」を捕獲
3月30日早朝、富山県の射水市堀岡沖で「アカナマダ」と呼ばれる謎の魚が定置網にかかった。
銀色の体に飛び出た額、そして濃い赤色の背びれが特徴のアカナマダは、捕獲量が少なく未だ謎の多い生き物で、現在は魚津水族館(魚津市)に保管されている。
その見た目が「リュウグウノツカイ」や「サケガシラ」のように細長く平らなことから、深海魚だということはなんとなく想像できるが、具体的にはどのような魚なのか知らない人も多いことだろう。
なお富山県では、この少し前の3月27日にも、高岡市伏木の沖合に仕掛けられた定置網でアカナマダが捕獲されている。
このアカナマダについて、魚津水族館の飼育員・木村知晴さんに特徴などを聞いてみた。
リュウグウノツカイよりも珍しい
ーー3月30日に捕獲されたアカナマダについて教えて。
全長78.4センチ、体重1.26キロ。体は銀色、各ひれは赤(朱)色~薄い赤色です。
主な特徴は、体は細長くて平たく、頭部が前方に張り出しています。背びれの先頭のスジである鰭条(キジョウ)が長く、尾びれと尻びれは小さく腹びれは極小、総排泄孔(肛門)が体の後部にあり、総排泄孔からスミを噴出します。
ーーどれくらい珍しい魚なの?
とても珍しいです。最近よく話題になるリュウグウノツカイよりも珍しいです。日本周辺でのアカナマダの記録(正式な報告)は数十例程度と思われます。当館が富山湾で確認しているアカナマダは過去に11例あり、今回の個体で12例目となります。
ーー実際に見た時はどう思った?
体の色が非常に美しい魚だと思いました。
なお同館では、捕獲されたアカナマダを3月31日まで展示した後、現在は研究等に使いやすいように冷凍保存しているとのことだ。また、今回の個体ではないが、2019年の春に捕獲されたアカナマダを試食したことがあるそうで、味はあっさりした白身で不味くはなかったという。
水族館の飼育員もとても珍しいと語る「アカナマダ」について、さらに生態を知りたい。深海魚に詳しい高知大学理工学部生物科学科の遠藤広光教授にも、お話を聞いてみた。
稀に岸近くでも見つかる深海魚
ーーアカナマダの分類を教えて。
アカマンボウ目アカナマダ科アカナマダ属の種で、学名はLophotus capellei。この属には世界で4種が含まれ、そのうち本種のみが日本周辺に出現します。しかし、この属の分類は、再検討の必要があると考えられています(これまでに十分調べられていません)。
ーー生息域はどこ?
日本では、おもに南日本の日本海側と太平洋側ですが、北海道南部や青森県での記録もあります。北太平洋の西部と東部に分布。
沖合にすみ、成魚は通常水深500メートルより浅い中深層にすみ(およそ水深200〜500メートル)、仔魚や稚魚は表層付近での採集例があり、稀に岸近くでも見つかります。水深帯は0〜1,000メートルです。
ーー普段何を食べているの?
イカ類や魚類を食べるようです。
ーー特徴は?
腸に沿って墨汁嚢(ぼくじゅうのう=墨袋)をもち、肛門からスミを出します。捕食者に襲われた場合に、防御としてスミを出すと考えられています。数センチの大きさの稚魚もスミを出します。
ーー最大どれくらいの大きさに成長する?
(現在知られる最大の大きさで)全長2メートルに達します。
ーー飼育はすることはできる?
わかりません。
ーーアカナマダはどれくらい珍しいの?
自然史博物館での標本数は少ないと思いますが、日本の魚類標本のデータベースを検索すると20標本程度が出てきます。リュウグウノツカイやサケガシラよりも目にする機会が、かなり少ないでしょう。
浅い所でも発見されることもあるそうだが、遠藤教授に聞くとアカナマダは“深海魚”だそう。
「生態が詳しく分かっていない」というまだまだ謎の部分が多いが、冷凍保存された個体を含め、技術進歩によりその生態が解明され、徐々に正体が分かってくることを待ちたい。
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