立憲民主党の“議席倍増”をどう見るか

 
 
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自民党-9、公明党+3、国民民主党-2、日本維新の会+3、共産党-1。
この数字は、参議院選挙の前後での各党議席数の増減である。その中で+8と議席を増やした政党がある。比率で言えば改選前の倍近い議席を獲得した立憲民主党だ。数字だけを見れば十分躍進と言うに値する。枝野代表は大勢判明後、こう評価した。

「大きく議席を伸ばすことが出来た。野党の連携は大きく前進することが出来た」

さらに次期衆議院選挙に向け「しっかりとした政権構想を示し、野党の連携を強化して臨みたい」とも強調した。

 
 

発足しておよそ2年。かつて「希望の党」を立ち上げた小池東京都知事らに排除されたグループとして、その歩みをスタートさせた立憲民主党は、いまや野党第一党の立場を確立した。だが、政権交代が現実味を帯びているかには疑問符が付くのが大方の見方だろう。この参院選を通じて立憲民主党は自民党に対抗しうる、そして政権を担い得る政党に近づいたのだろうか。

選挙終盤の失速

選挙前、立憲の評価は高かった。20議席程度、つまり倍以上の議席を獲得するのではないかという観測は各所にあった。だが、ふたを開けてみれば17議席。倍増とはいっても当初の予想ほどは伸びなかったというのが実態だろう。

東京では2人目の候補が僅差で競り負け、京都では共産党の後塵を拝した。静岡では国民民主党現職に地力の差を見せつけられ、大阪では当選圏に遠く及ばず6位に沈んだ。

全体の勝敗を左右する32の1人区で、野党は全ての選挙区で候補者を一本化したものの、結果は10勝22敗。「旧民進党が分裂した際の怨念は簡単には消えない(参議院関係者)」と言われるように、共闘は形だけだったと指摘されても仕方ないだろう。

自民党の危機感も野党に対してというより、地盤を固めていない身内の候補や党内の緩みに向いていたように思われる。

れいわの野望に埋没?

さらに今回の選挙で注目されるのは「れいわ新選組」が2議席、「NHKから国民を守る党」が1議席、それぞれ比例で議席を獲得した点だ。特にれいわの山本太郎代表が個人で獲得した99万票は、大規模な組織を抱える他の政党の比例候補と比較しても飛びぬけた数字だ。

 
 

このれいわ全体の比例票は230万票。十分政権批判の受け皿になったと言っていいだろう。
枝野氏自身もれいわの議席獲得を歓迎する一方で「立憲民主党に投票してみようという期待感を伝えきれなかった」と立憲としての反省も口にしている。

このれいわが野党に及ぼす影響について、自民党関係者からこんな見方が聞かれた。「れいわは障害者の視点から、反権力を鮮明にしている。表向きは政権に対する挑戦だが、結果として生じるのは他の野党の埋没だ」。さらに「れいわは野党の中で存在感を増し、キャスティングボートを握りたいのではないか」というのだ。

8月1日に召集された臨時国会を巡っては、重い障害をもつ2人のれいわ議員に対応するためのバリアフリーが大きな話題となっている。山本太郎代表の仕掛けによる“れいわペース”の兆しが早くも見え始める中、立憲が政権獲得に向けて存在感を増すことは出来るのだろうか。

 
 

存在感が問われる“既成政党”

選挙に長く携わってきたある関係者は、この「れいわ」や「N国」の議席獲得と、東京や神奈川で議席を獲得した日本維新の会に触れ「非既成政党への支持の広がりだ」と指摘している。

与党にも野党にも入れたくない…つまり既成政党を敬遠した有権者が、維新やれいわ、N国といった、いわゆる「第3極」に流れたという分析だ。もちろん、その既成政党には立憲民主党も含まれる。

実際、各党の比例票は前回2016年に比べ、自民-240万、公明-100万、共産-150万、社民-50万と軒並み減少傾向だ。立憲、国民両党は旧民進党時の得票から微減に留まっているが、投票率の低下という事情を差し引いても、各党とも決して楽観は出来ないだろう。

 
 

今や名実ともに、野党第一党の座にある立憲民主党だが、参院選での議席増という現実とはうらはらに、存在感の低下と既成政党離れという影が忍び寄っているのかもしれない。その影がどこまで広がるか、また払しょくできるかは、約2年以内に必ず行われる衆院選で問われることになる。

(フジテレビ政治部デスク 山崎文博)

山崎文博
山崎文博

FNN北京支局長 1993年フジテレビジョン入社。95年から報道局社会部司法クラブ・運輸省クラブ、97年から政治部官邸クラブ・平河クラブを経て、2008年から北京支局。2013年帰国して政治部外務省クラブ、政治部デスクを担当。2021年1月より二度目の北京支局。入社から28年、記者一筋。小学3年時からラグビーを始め、今もラグビーをこよなく愛し、ラグビー談義になるとしばしば我を忘れることも。