被爆者代表として平和祈念式典に

山脇佳朗さん;
便利だから、なんとか使いこなして、これまではこういうプリントを配ってたんですよ。

パソコンに向かって作業をするのは、被爆者の山脇佳朗(やまわき・よしろう)さん(85)。
被爆体験の語り部活動を続けていて、いつも自分で作った資料を投影しながら話をしている。

山脇佳朗さん;
体験を話そうという気はまったくなかった、嫌だなと。正直言って最初は全く話ができなかった。当時のことを思い出すと自分がぼろぼろ泣いたりしてね。

山脇さんは、8月9日の平和祈念式典で、被爆者代表として「平和への誓い」を読みあげる。
語り部としての恩返しと考えているという。

亡くなった父を前に…今も残る後悔の念

山脇さんは11歳の時、爆心地からおよそ2kmの長崎市稲佐町で被爆した。
双子の弟と早めの昼食をとろうと、家に入った直後だった。

一緒に住んでいた父親は爆心地から500mの工場で爆死した。

兄と弟と3人で父親を荼毘に付したことは、今も山脇さんの脳裏に焼きついている。

山脇佳朗さん;
お父さんの頭の骨だけ拾っておしまいにしよう。そういって頭蓋骨の部分を火箸でコツコツと突ついた。
そうすると、この部分が石膏細工を崩したように、もろくボロボロとくずれてきた。
頭蓋骨の間から半焼けの脳が流れ出した。それを見たら、兄が最初に火箸を捨てて逃げ出した。
私達もその後を追って逃げ出した。

数日後、山脇さんたち兄弟は、母親がいた佐賀に向かった。
母を気遣って、父親が亡くなった出来事をしばらく伏せていたという。

自宅に遺影を飾っている山脇さんは、父親を放置したことに今も後悔の念がある。

思いを世界に…被爆体験を英語で

山脇佳朗さん;
食事したり、話をした父親の姿はもはやそこにはなかった。

先月、山脇さんは、NPT核拡散防止条約の再検討会議 準備委員会の議長と面会し、被爆体験を英語で語った。

山脇佳朗さん;
地球上から核兵器を廃絶し、長崎を最後の被爆地にするために力を貸してください。

NPT再検討会議の準備委議長 サイエド・ハスリン マレーシア国連常駐代表;
いつかは長崎が最後の被爆地になるよう、望んでいます。

山脇佳朗さん;
自分の気持ちが通訳を介して話が伝わるのかなと、本当に伝わっているのかなと言う気持ちがあって。
(英語で語ることで)よく心に伝わるということは感想としていってもらう。(海外の方も)熱心に聴いてくれる。

被爆者の心を届けたい…その思いから、平和祈念式典では世界に向けて、英語でもメッセージを発信する。

山脇佳朗さん;
ぜひこれだけのことを持ち帰ってほしい」という言葉を入れたい。
世界全体の動きを見ると、私たちの期待を満たす方向に行っていない。むしろ逆行することもでてきている。
式典を通じて持ち帰ってほしいと思う。

若い世代が「交流証言者」に

長崎純心大学 松野世菜さん;
こんにちは~。

山脇佳朗さん;
どうも、はじめてですね。

山脇さんの自宅を、1人の女性が訪れた。
長崎純心大学に通う、松野世菜さん(21)。
終戦後、高校に進学せず就職をした山脇さんの生活について、話を聞きにきた。

長崎純心大学 松野世菜さん;
周りの人たちは、東高校や西高校に行って、就職していたんですか?

山脇佳朗さん;
大学行ったり、就職したり。
三菱電機の技術学校行く途中で、西高校に行く近所の子とすれちがったけど、恥ずかしいような、気まずい感じでした。
父さえ亡くなっていなければ、大学行ったり高校行ったりできたんでしょうけどね、その点は非常に残念。

松野さんは2年前から、被爆者の体験を被爆者に代わって語り継ぐ「交流証言者」として語り部活動をしている。
山脇さんの被爆体験をおよそ1年かけて聞き取り、自らの言葉で伝える。
わずか2年のうちに、全国各地で20回以上の講話をした。

長崎純心大学 松野世菜さん;
被爆していない、戦争を経験していない世代でも、こういう話を伝えることができることが周りの人たちに伝えられる。語り継いでいくキッカケになるとおもう。

山脇佳朗さん;
最初は非常に心配だった、戦争体験もないし。
繰り返すことによって当時の様子を理解してもらう、話ができるようになった。積み重ね、お互いの積み重ねでやっと交流証言が成り立つ。

被爆者の思いを、どれだけ多くの人に伝えられるか。なかでも、これからを生きる世代に広げていくため、山脇さんは松野さんのような若い人に期待を寄せる。

山脇佳朗さん;
私達の被爆体験は、残酷さを伝える媒体であると考えるべきだと思う。
被爆者の体験を通じて、原爆がいかに残酷だったかを伝える。

あの日から74年が経った今、体験した被爆者とそれを受け継ぐ人たちが、それぞれの言葉を重ねながらメッセージを発信している。

(テレビ長崎)

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