黙って食べる、「黙食」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
コロナ禍の今、この「黙食」を勧める飲食店が増えている。そして、この影響は意外な業界にまで広がっている。

そば屋で好評な「黙食」

北海道札幌市中央区の、そば店「そば処 ふうび」では、至る所に「黙食」と書かれたポスターが張られている。
店内で聞こえるのは天ぷらを揚げる音や麺を水でしめる音。そして、客がそばをすする音だけ。

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客:
みなさん、話もせずに食事だけ楽しんでいる

昼時にはグループでやってくる客も多いのだが、料理が出てくるまで黙って待ち、黙々と食べて帰っていくという。

この「黙食」とは、福岡県のカレー店が感染対策として考え出した言葉。
SNSで、デザインしたポスターを「自由に使って」と発信し話題となった。

コロナ禍で客が4割も減った「そば処 ふうび」では、1月20日からポスターを掲示し黙食を勧めている。

そば処 ふうび・石野裕司さん:
最初は(客の反発が)不安だった。少し客に我慢して協力してもらって、乗り切りたいなと思っています

「沈黙」でリスクが大幅軽減

黙食の効果はどれほどなのか、スーパーコンピュータ「富岳」を使ったシミュレーションでは…

食事中マスクを外し話すと飛沫が飛ぶが、正面よりも横の人の方が5倍の数の飛沫を浴びることなどが推定された。

しかし、黙って食べれば、このリスクが大幅に軽減する。
店主おすすめの「えび天ざるそば」を会話をせず一人で味をかみしめる“沈黙のグルメ”を味わってみる。

三宅真人 記者(心の声):
うん、コシのある麺にあっさりとしたつゆが絡み合い、のど越しがバツグンに良い。エビ天は、サクサク!黙って食べると、味わいがいつも以上に深い

客にも好評だという。

客:
いい試みだと思います

ーー何を考えていた?

客:

大体、いつも親子そばといなり寿司だな。腹が減ったからうまいなあと

客:
他の人が静かなのは安心して食べられる。仕事のことを考えながら食べている。次は何をしようかなとか

一人で幸せを噛みしめる「黙浴」

沈黙はほかの業界にも広がっている。北海道・札幌市清田区のスーパー銭湯「湯の郷 絢ほのか」。

7種類の湯舟がある浴室。温度はぬるめのものが多く、一人ひとりが静かにゆっくりと入浴を楽しんでいた。
「湯の郷 絢ほのか」はコロナ禍の影響で2020年4月から5月にかけ休業。営業再開後も客は例年の半分ほどに落ち込んでいる。

湯の郷 絢ほのか・笹島慎介 支配人:
客同士が大声で話すのが(感染対策上)怖いという声があった。少しでも安心感を伝えられればと思い実施した

しゃべらずに入浴することで安心して来店してほしいと、黙食にヒントを得て、1月からポスターを掲示している。

三宅真人 記者(心の中の声):
ああ、気持ちいい、これはたまらない。黙って入っていると体がゆっくりと温まっていくのを感じる

常連客にとっては湯船につかりながらの会話も楽しみの一つだった。

客:
お互いに協力しあわないと、何かあったら困る

ーー何考えていたんですか?

客:

幸せだと思っていましたよ、本当に

コロナ禍で広がる黙食や黙浴。新たな生活スタイルで生まれる沈黙の時間をしばし楽しんでみるのもいいかもしれない。

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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