1年間延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催まで残すところ半年を切った。いまだ新型コロナウイルスの流行が続き不安を感じる声もある中、森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長は「コロナがどういう形であろうと必ずやる」「新しいオリンピックを考える」と発言。女性幹部登用に関する発言と撤回の真意も含め、スタジオに森会長と二宮清純氏を招いて掘り下げた。

森会長「女性蔑視の意図はない」「海外でも誤解を呼ぶため撤回」

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反町理キャスター:
森会長の発言。「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」。「組織委員会も女性は7人くらいおられるが皆わきまえておられる」。発言と撤回の真意は。

森喜朗 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長:
女性を蔑視する意図ではない。発言の前後が消えている。JOCの山下会長は就任後苦労して改革をされてきた。特にガバナンス構造、女性評議員を増やす水準について抵抗がある中、やり抜いて決定されたことに称賛を申し上げた。そして、多くのスポーツ関係団体からも女性が増えると時間が長くなると聞いており、だんだん人数を増やしていけばよいとご注意申し上げた。
しかし、これが大きな話題となり国際関係にまで影響していけば、外国に行って細かく説明するわけにもいかず、お詫びして撤回すると申し上げた。

森喜朗 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長
森喜朗 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長

反町理キャスター:
東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会会長として、海外で報道が広がって海外からの選手派遣等々に悪影響が出ることを一番懸念されたと。

森喜朗会長:
今はとにかく日本に来ていただける体制を整える準備をしている。誤解を呼ぶことは撤回することが大事だと思った。

反町理キャスター:
ご家族などの反応は。

森喜朗 会長:
長い政治生活の間で負の面も多く家内に苦労をかけたが、政治家も辞めて最後のご奉公と思ってやっている中、またえらい心配をかけた。初めは怒っていたが、今朝は笑顔で謙虚にやりなさいと言われた。去年成人した孫も眠れなかったという。心配をかけた。

反町理キャスター:
二宮さん、今回の発言と謝罪・撤回について。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
今朝知り、正直「これはダメだ」と思いました。申し訳ないが森さんの認識不足。女性の社会進出を後押ししようという時代、時計の針を逆に戻すようなことをすべきではない。

無観客なら日本は900億円の損失?

長野美郷キャスター:
先週の木曜日、森会長はIOCのバッハ会長と会談。開催に向けたバッハ会長の温度感・熱意について。

森喜朗会長:
確固たる信念で開催しようと強調されていた。むしろ日本の方が動揺しているのではと考えていた。毎晩のように会議を行い、すべてIOCと相談して了解を得ながら進めているが、競技連盟の皆さんには日本に行くことに不安を抱いたり危険視する人はひとりもいなかったと伝えられた。激励を受けたと思って感謝している。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
最終的な決定権を持っているのはIOC。ほとんど不平等条約だが、東京都との間に開催都市契約が結ばれている。ところが昨年の3月、安倍首相・バッハ会長の間で1年の延期が決まった。つまり国が前面に出て来てフェーズが変わった。
森さんとバッハ会長の関係は良好と思うが、運用においてIOCはシビアな組織。そのIOCの本音は放映権料の収入があるから開催したい。そこでガラガラのスタンドを映すわけにはいかないなどの話もある。しかし森さんの言うように「言うは易し行うは難し」。日本も国が前面に出てきたのだから主張してよい。

反町理キャスター:
IOCが一番譲れない条件は放送権料。4000億円とかいう話がありますが、絶対にそのお金を入れるためには、中止という選択肢はIOCにはない

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
ご指摘の通り。無観客でも放映権料が入る。その場合に痛い目に遭うのは組織委員会、日本です。900億円のチケット代が損失になり、都や国の負担に。せめてIOCが500億ぐらい持ちなさいというのは普通でしょう。IOCはケチだが、そのくらい出してくれないと日本国民は納得しない。

森喜朗会長:
敵対関係ではなく、協力してすばらしいオリンピックにしようと話し合っている。ただ、スタンドに人がいることと選手が競技をできること、どちらが優先なのか。選手たちはあんなに努力をしてきた。パラリンピックの選手には結婚や出産を遅らせた人もいた。その苦労をなんとか実らせてあげたい。選手たちがこの夏に思いきりプレーできるようにすることが組織委員会の一番大事な仕事と思っている。

反町理キャスター:
五輪とはそもそも五大陸の意味。コロナの今の感染状況を見たときに今年の夏にどこかの大陸から選手団が来ない、IOCがその状況での開催判断をする可能性については。

森喜朗会長:
それは困るから努力している。しかしこれは組織委員会ではなく世界各国の政府の所管。政治にはしっかりお願いしますという気持ち。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
あらゆる状況に備えておくべき。マラソンをいきなり東京から札幌に変更したが、小池都知事も本当に知らなかったはず。IOCはそういうことをやる。何が起きてもおかしくはない。

どれだけ関係者が来るか、決めるのはIOC

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏
スポーツジャーナリスト 二宮清純氏

反町理キャスター:
ワクチンが間に合うのかという話。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
現状、仮に7月に開催できるとしても国民がワクチンを打つ時期とちょうど重なる。

反町理キャスター:
ワクチンが間に合うという幻想は崩れたと。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
また、IOCの古参の人から、開催のため選手たちにワクチンの優先接種権を与えたらという話が出た。しかし私はこの優先接種論には反対。選手からもワクチンが最も必要なのはエッセンシャルワーカーだという声がある。

反町理キャスター:
すると、ワクチンなしでどこまでできるかという話に。人数の規模の話にもなる。

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
選手は全世界で1万500人ほど。関係者が7~8000人。選手を削るのは難しい。問題は役員・関係者。毎回オリンピックには各国から関係者としてわけのわからない人がいっぱい来て、買い物ばかりしていたりする。そういう人は切る。
ただ権限はIOCにあり、組織委員会にはない。言い方が悪いかもしれないが、IOCからすれば開催都市である東京都は場所貸し。そして組織委員会はイベント屋。すると組織委員会としては、東京都が旗を下ろさない限り準備し続けるしかない。

反町理キャスター:
森さんの側からは人数を減らせと言えないんですか。

森喜朗会長:
IOCの決めた枠だが、できるだけ控えていきましょうとは言える。しかし我々は当初言われただけの人数だけは確保して開催できるようにしてある。一方でできるだけお金をかけないための努力をしようという心境。

招待客をどこまでいれるのか、難しい判断に

長野美郷キャスター:
新型コロナの収束が見通せない中での開催で、観客をどこまで入れるのか。森会長は、無観客には基本的にしたくないがそれも考えないとシミュレーションにならないと発言。この背景と真意は。

森喜朗会長:
質問に答えての発言だが、900億円分のチケット代は組織委員会にとって大きな財源。入らなければ困るが、それだけを追いかけてはいけない。ラグビー、サッカー、野球などのスポーツの観客動員を参考に、多くのケースを考える。一方、コロナ感染者の増減も見て、この結論は最後に出す

反町理キャスター:
考えられるパターンは「フルスペック」「日本在住の観客+海外の招待客」「観客数を半分にする」「無観客」。どのパターンに? 

スポーツジャーナリスト 二宮清純氏:
状況次第で全部ありえる。ただ900億の損が出る無観客に踏み切るのは簡単ではない。オペレーションは簡単にはなるが。
また、世論調査を見ても日本国民が一番心配しているのは外国からの変異株の流入。そこで海外からは招待客、VIPだけを入れるとしても、これも難しい。VIPにも10段階ほどありどこまで招待するのか。森さんが調整すると思うが。

森喜朗会長:
一般のお客さんが楽しみにしていたのに、なぜ偉い人だけは入国できて一般の人は入国させないのかと。日本がそういう国だと見られてもいけない。ケースバイケースで考えなければならない難しい問題。

BSフジLIVE「プライムニュース」2月4日放送