2度目となる緊急事態宣言が関東の1都3県に発令されてから2週間、7府県が追加されてから1週間を超えた。しかし全国の新規感染者数は高止まりの状況が続く。政府や自治体の対応にどんな問題があるのか。今必要な対策とは何なのか。今回の放送では、3人の厚生労働相経験者を招き議論を深めた。

”ワクチン担当相”は「船頭多くして船山に上る」か

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竹内友佳キャスター:
菅首相は国会の代表質問の答弁で、河野太郎規制改革担当相をワクチン担当相に任命したことに言及。河野大臣が行うのはワクチン接種を円滑に実施するための輸送や保管・会場設定など各省庁の総合調整。この任命については。

長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表:
予防接種は法律上、厚生労働相の責任。法律的な権限をどう考えるのか。またスタッフには厚生労働省の職員も入り、指揮系統が混乱する危険性がある。ワクチン接種の調整は国土交通省・経産省など多くの省庁を横断する話。それを任せるということだと思うが。

舛添要一 元厚労相 前東京都知事:
私は西村コロナ担当相と田村厚労相が並んでいることにも最初から反対。まして3人目となると「船頭多くして船山に上る」。感染症法は厚労相に権限を集中する体系。

反町理キャスター;
河野大臣はその発信力を期待されているとも言われます。

舛添要一 元厚労相 前東京都知事:
発信力よりもワクチンのクーポンがきちんと届くか。アベノマスクや10万円給付にかかった時間の反省を踏まえて進めなければ。

川崎二郎 元厚労相 自民党衆議院議員:
トップに立つのは田村厚労相。彼が全責任を負い自分の政治生命をかけてやる。
今回は地方自治体の役割が極めて大きく、サポートするなら総務大臣の仕事。そして医師会との調整。突進力ではなく、計画性を持って緻密にやることが一番大事。権力が集中したほうが緻密に計画性を持ってやれるのは間違いない。河野大臣がワクチンを担当するとしても、厚労省への指示はやはり田村厚労相を通してやること。

ワクチンの情報発信は厚労相に一元化を

反町理キャスター:
ワクチンの具体的な方針が出てきました。ワクチンに関する情報がこれから世の中に出てくる中で混乱は心配されませんか。

川崎二郎 元厚労相 自民党衆議院議員:
ワクチンの情報は田村厚労相のところで一元管理し、このワクチンの責任は全部自分が負っている、こういう状況であると会見で国民にきちっと伝えていくこと。

反町理キャスター:
ワン・ボイスにする必要があるということですよね。ワクチンの接種方法や品質、副反応等々について河野大臣、西村大臣、首相も官房長官もしゃべるというのではなく。

舛添要一 元厚労相 前東京都知事:
接種を受けますかと聞くと、40パーセントほど受けないという人がいる。副反応をものすごく心配している。先行する欧米のデータから安全性はわかるが、これらの情報をきちんと出す。しかもワクチン担当だからと河野大臣が出すのではなくて、厚労相が出す。なぜならデータを取っているのは全て厚労省の役人で、他の大臣には渡さない。行政の効率が低下してしまう。厚労省にはしっかりしたメンバーが揃っているから上手く使うべき。

長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表:
今回欧米ではワクチンの試験として第3相試験まで行っている。日本で本来の第3相試験ができる感染率ではないが、もう少し科学的に試験をやる時間をとるべき。総理の発言でこれを飛ばそうとなるのはよくない。
また、国民へのわかりやすい効果の説明を。ワクチンを打てば感染はなくなるのか。あるいは感染の可能性はあるが重症化しないのか。

長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表
長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表

反町理キャスター:
徹底的な情報公開をすると、ワクチンを受ける人が減るというリスクもあるのでは。「周りの人が接種を受けるのなら自分は受けなくてもいい」と思う人が出るかも。

川崎二郎 元厚労相 自民党衆議院議員:
優先順位が決まっており、最初の医療従事者がどう受け止めるかが一番大きい。専門家である医療従事者が接種しなければ誰もしない。医療従事者に対してきちっとした説明をするのは田村厚労相の仕事

長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表:
初めが肝心。初めの説明で国民の皆さんが打つのか打たないか決めるので、本当に大切。

東京と大阪は地方と違い、民間病院の力を

竹内友佳キャスター:
逼迫する医療現場について。感染が確認されても入院や療養待ちという方が、東京都では7500人を超えているという医療現場の状況です。

長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表:
民間病院で受け入れが進まない理由の一つは、もしクラスターが起これば経営が破綻するから。だから受け入れコストと減収見込み、クラスターが起こったときの補償もすべて前払いでお金をお支払いするという措置が必要。

川崎二郎 元厚労相 自民党衆議院議員:
東京は民間病院が72%で、公的病院が28%。地方では50%が公的病院。だから東京や大阪と地方の問題を混ぜて議論してはいけない。東京・大阪では、かなりの民間病院に助けてもらわなければ地方並みにならない。
そこで、長妻さんの言う通り財政的支援を担保しながら、大学病院を動かすために厚労省が文科省とも連携してやっていく以外にない。

舛添要一 元厚労相 前東京都知事
舛添要一 元厚労相 前東京都知事

舛添要一 元厚労相 前東京都知事:
資源の最適な配分がなされていない。非常時における平時からの組み替えを、最初から東京都も国もやっていないのが問題。ひとつはプレハブでいいから専用病院を作ること。もうひとつは公的な病院をコロナ専用に変える。全部手遅れになっているしわ寄せが今来ている。

反町理キャスター:
来週以降に与野党の協議が始まると見られる感染症法の改正案。政府案は、医療機関に対する協力要請、それに従わない場合勧告ができ、さらに従わない場合は病院名の公表もできる内容になると見られます。

長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表:
先ほど述べた財政的な補償や、専門家がいない場合の指導などを整え、誰が見てもこれで断るのはおかしいという状況で従わない場合、それはありうると思う。しかし、それらの前提をすっ飛ばして病院にそっぽを向かれると大変なこと。注意して運用を議論する必要がある。 

事業者ごとに適切な規模の補償を

竹内友佳キャスター:
この国会で早期成立を目指す特措法改正案。命令に違反した事業者に50万円以下の過料の新設が盛り込まれています。緊急事態宣言の前段階でも、違反した場合は30万円以下の過料。

長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表:
気になるのは、「まん延防止等重点措置」の段階でも30万円の過料がある。知事が国と連携して要請・命令をすることができる。科学者が集まった中央の合理的な判断がなかなか行き届かないところで過料を取られるというのは非常に不透明で、濫用の恐れがある。なぜ緊急事態宣言下だけにしないのか。

舛添要一 元厚労相 前東京都知事:
命令に従わないと罰金なのだから、休業補償が見合っていなければダメ。どこも同じ金額で補償するのではなく、きちんと前年度の税務報告を見て、売上高の何割などとしなければ。

川崎二郎 元厚労相 自民党衆議院議員
川崎二郎 元厚労相 自民党衆議院議員

川崎二郎 元厚労相 自民党衆議院議員:
与野党間で詰めて解消できる話と思う。実際どれほど儲かっているかということはなかなか見えにくいが、スピード感を持ちながらもう少し規模別に補償する方法はあるのでは。
今まではあくまで中小企業対策でやってきたが、大型店の話にもなってきている。大企業にお金を出すとずいぶん嫌がる政党がいるが、大企業は多くの従業員を抱えている。国民のコンセンサスもそこに持っていかなければ。

舛添要一 元厚労相 前東京都知事:
大手の飲食店チェーンなどでは、50万円の過料を払うとしても営業を続ける方がいいとなる可能性がある。

長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表:
それが一番怖い。そうなれば日本の法治国家としての秩序は崩壊します。まん延防止等重点措置を含めてよく考え、補償をセットにしなければ大変なことになる。

入院拒否の感染者らに刑事罰は必要か

反町理キャスター:
個人に対する規制強化の話。入院を拒否したり入院先から逃げ出した感染者に対しては1年以下の懲役または100万円以下の罰金。調査に応じない感染者に対し50万円以下の罰金。

舛添要一 元厚労相 前東京都知事:
私は反対。もちろん抑止力として働くことは認めるが、これにより検査拒否者が増えることのほうが怖い。

長妻昭 元厚労相 立憲民主党副代表:
刑事罰となると前科がつき、いろんな影響が出る。実際にこのようなケースがどれだけあったのかという点をきちっと見ながら議論していきたい。ただ、保健所は追跡調査に法的根拠がなく大変困っているので、これは解決しなければ。

川崎二郎 元厚労相 自民党衆議院議員:
自民党は去年の夏前からずっと言っている話。ルールを守れない人には刑事罰で対応すべきと党は強く要求しており、私もそう思う。

BSフジLIVE「プライムニュース」1月20日放送