12月特集は「こんなはずじゃなかった…コロナの1年」。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄され、その影響は社会だけでなく、異例の臨時休校など、学校教育においても大きかったのではないだろうか?

子供もマスク着用が必須となった(画像はイメージ)
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新学期が始まるとほぼ同時に緊急事態宣言が発令され、入学式に出席することなく、自宅学習を強いられた児童や生徒もいたことだろう。そして宣言が解除され学校が再開した後も、感染予防の観点から子供たちが楽しみにする運動会などの学校行事が中止や規模を縮小しての開催となった。

このような異例の1年となり、今、先生たちが頭を悩ましているのが、卒業アルバム制作だ。例年であれば掲載できた行事の写真が今年度はなかったりすることから、構成なども大きく変わってくるはず…。子供の生き生きとした表情も今年はマスクが隠してしまっているかもしれない。

では実際の現場はどうなのだろうか? やはりコロナで卒業アルバムづくりは大変なのか?
新潟市内にある小学校に話を聞いた。

現状は全体で2ページ分の写真が不足

ーーそもそも卒業アルバムの制作は、例年どのような点に苦労している?

まず、撮影が児童の出席状況に左右される点です。当校ですと、クラブや委員会の集合写真も撮影しますので、児童が休んでしまった場合は別日に撮影するなどの対応が必要となってきます。写っていない児童がいないようにするということにとても気を遣っています。

加えて、卒業アルバムに掲載される児童一人一人の登場回数のバランスの調整です。大切な思い出が詰まったものですので、「ある児童が一回も出ていない」ということはあってはなりません。児童全員について、アルバム内に何回登場するかを担任が数え、もしあまり写っていない児童がいた場合は、新たに写真を探して加えたり、差し替えたりするということも、実は行っています。

アルバムに掲載される児童一人一人のバランスが重要(画像はイメージ)

ーーさらに今年は、コロナ禍で行事が中止・縮小となった。特に何が大変だった?

「今年度は行事がどうなるか分からない」ということは、4月の段階で予測できましたので、写真館さんと密な連絡を取り、授業風景などをこまめに撮り溜めていました。行事の写真が、アルバムでは大きな割合を占めるのですが、「もし修学旅行が中止になった場合は?」「例年は5月に開催している運動会も休校期間中となる。ではどうするか?」などと、常により良い形を模索しました。

結局、運動会は規模が小さく午前中で終わる形式で開催しましたので、アルバムに掲載する写真は大幅に減少し、例年では大きなコマとなるリレーや優勝旗を受け取るシーンがありませんでした。12月中旬の現状として、アルバム全体で2ページ余っているので、それを今、どのような写真を掲載するかという相談をしています。

運動会は規模が縮小され、リレー種目を行わなかった学校も(画像はイメージ)

児童のマスク姿の写真が多いのも実情

ーーその空いているページはどうなる予定なの?

児童が図工の作品を持って個々が登場する写真を追加するか、卒業式のページを加えて、完成を2カ月ほど遅らせることも検討しています。アルバムは卒業式当日に渡すということもあり、これまでは卒業式の写真を使用していませんでした。ただし、卒業式も今後のコロナの状況次第でどうなるかわかりませんので、現状でも不確定な要素があります。


ーーその他で言うと、2020年はマスク着用が必須になった。やはりマスク姿の写真は多い?

個人や集合写真では、換気をしっかり行いながらシャッターを押す一瞬だけマスクを外して撮影しましたが、日常のスナップ写真や授業風景、修学旅行の体験学習などでは、どうしてもマスクをしていなければなりません。カメラマンさんが撮影するから外してというわけにもいかない場面もあり、児童のマスク姿の写真が多いのが現状です。

卒業アルバムに卒業式の写真が入る可能性も(画像はイメージ)

ーーこのような状況であれば、今年は制作が遅れている?

例年ですと、年末年始の冬休み中には、担任が集まってどの児童が何回登場するかなどの最終確認を終わらせています。現段階で2ページ分が空いていますので、その分が遅れている状況となります。

ーー最後に、この卒業アルバムを児童にどう受け取って欲しい?

卒業アルバムは、児童はもちろんですが、ご家族も楽しみにしている大事なものです。今年はいろいろと制約がありましたが、できるだけ児童の思い出がぎゅっと詰まった、例年どおりとは言えないまでも、皆で助け合って過ごしてきた1年です。アルバムもできるだけみんなが笑顔で素敵な写真が入るようにということで、担任が一丸となって制作しています。

また、今はコロナというとても大変な状況ではありますが、卒業して数年後にアルバムでマスク姿の写真を見返したときに、「この時は、こうだったね」「大変だったけど、いろいろ工夫して楽しかったね」と言えるような形にしたいと考えています。

アルバム制作の効率化を図るサービスが登場

そのような中で、インターネット写真販売フォトストアなどを運営する株式会社エグゼックが、少しでも負担を減らそうと卒業アルバムの業務効率化システム「アルバムスクラム」の提供を今年5月から開始している。

顔認証で写真にうつる子供たちの顔を判別できるというが、実は先ほど紹介した小学校でも導入している。本格的な利用はこれからとなるそうだが「1番気を使い、時間の掛かる作業にこの顔認証システムを活用できるのは、とても助かる。よく見ないと分からないような小さな写真もしっかり認証できていたので、確認作業の大幅な短縮を期待したい」と話していた。

選択した写真に児童が何回登場したかを瞬時にカウントしてくれる(画像提供:株式会社エグゼック)

このように現場の教師からも期待される「アルバムスクラム」は、具体的にはどのようなものなのだろうか? エグゼックの担当者に話を聞いた

ーー「アルバムスクラム」とはどんなサービス?

卒業アルバムを制作されている写真館様向けのサービスで、写真館様が先生にアカウントを発行することができるので、先生と一緒にご利用頂いています。

2つの特徴があり、まず弊社の顔認証AIの技術を用いて写真選定の補助ができることです。アルバムスクラムに取り込んだ写真の中から良いと思う写真を次々と選んでいくと、選ばれた写真にどの児童が何回登場しているかを顔認証が自動でカウントしてくれます。登場回数が少ない児童がいた場合は、取り込んだ写真の中からその児童の写真だけを顔認証で抽出できます。写真選定をする段階で、全児童の登場回数をまんべんなくすることができるのです。

また卒業アルバムの制作で時間が掛かるとされている掲載児童のバランスの調整においても有効です。クラスの児童それぞれがアルバムに何回掲載されているのかが瞬時にカウントされるのです。さらに写っている児童の写真の大きさをポイント化して表示し、「ある児童の写真は小さいものばかり」ということがないようにしています。特に先生からはこの機能が感謝されています。


ーー今年はマスク姿の写真も多いはず。AIで顔認証するとのことだが、精度はどれくらい?

高い精度で認証できていると考えています。またマスク姿での顔認証ですが、弊社が確認した範囲では多少精度は落ちますがそれでもしっかりと児童を判別しており、こちらについても自信を持っています。

選択した児童が写真のどこに写っているかも分かる(画像提供:株式会社エグゼック)

ーーこのサービスを先生にはどう使ってもらいたい?

すでに全国の学校で利用いただいていますが、ご担当者からは「便利で来年度も使いたい」と大変好評です。今年はコロナで特に忙しいかと思います。少しでもアルバム制作のお手伝いができれば嬉しいです。


なお同社によると、コロナ禍ということもあり、今年度は無償でサービスを提供しており、来年度から本格的な運用となるという。

制作を断念した学校も…写真会社が無償制作で支援

一方で、コロナ禍の今年度は制作を断念した学校もある。全国の卒園卒業アルバムを制作する株式会社夢ふぉと(大阪市)によると、同社では例年3000校に卒業アルバムを届けているものの、今年はそのうち30校ほどが制作を断念したというのだ。

そのような現状もあり、同社は「思い出づくりプロジェクト」を立ち上げ、卒業アルバムの無償制作を企画。全国の約100校から応募があり、抽選で10校に卒業アルバムを贈ることにした。これまで学校で撮影した写真などに加え、寄贈したデジタルカメラで授業風景などを撮影してもらい、これをまとめて卒業アルバムにするという。

学校に無償提供する卒業アルバムのイメージ(画像提供:夢ふぉと)

やはり全国の学校からどんな声が届いているのだろうか?そして無償提供を決定した理由は? 夢ふぉとの担当者にも話を聞いた。

ーーなぜ卒業アルバムの無償提供を決めた?

学校行事の中止や縮小などで子供達の思い出をつくる機会が失われています。弊社は一介の卒業アルバム制作会社ではありますが、思い出づくりの総合カンパニーとして今後成長していきたいというビジョンがあります。弊社が現在出来ることは何かと考え企画を実行致しました。

最初は、行事が開催されずこの1年の写真がないというお声が多く届いておりましたので、「写真がないなら自分の手で写真を撮ろう」という考えで10月に「インスタントカメラの寄贈」を企画し実行しました。想定以上の応募数に驚いたのですが、応募いただいた学校からの様々なお言葉を拝見すると、ほとんどの学校で先生方が生徒の為に何かできないものかと思案なさっているご様子でございました。

その中に「今年は卒業アルバム制作は残念ながら断念しようと思う」というお声が複数ございましたので、子供達が可哀想であると思い、第2弾として「卒業アルバムの無償提供(コンパクトデジタルカメラ付)」を企画しました。


ーー当選した学校からは、どのような声が届いている?

例えば、 当選した学校から応募時にこのような声をいただいております。

今年度は学校生活のスタートも遅れことごとく学校行事もなくなり生徒たちの思い出に残るものがなかなか作れていません。今年だから「何もできない」ではなく今年だからこんな特別も経験できた「今年ならでは」の想いをけなげに頑張っている少人数の生徒たちに味あわせてあげたら、、、と思いました。卒業アルバムについては作ってあげたいとは思っていますがどうしたものやらと困っていました。

臨時休校で授業が遅れ行事を開催できない学校も(画像はイメージ)

アルバムを見た際によみがえる思い出は、心を温かくしてくれるはず

ーー今年のアルバム制作に当たり、学校からはどのような声が寄せられていた?  

「行事が少なく写真がない」「卒業アルバム内に行事写真のページがつくれないが、その代わりどのようなページを作ればよいかが分からない」といった掲載する写真に関する悩みに加え、「コロナ禍で授業が遅れていて行事を開催したくともスケジュールが厳しい」「卒業アルバム制作に着手する時間が取れない」という時間的な問題があったようです。

このほか、「感染防止の為に極力部外者(カメラマン)の立ち入りを避けたい」という、感染予防に関する苦労もあったようです。


ーー最後に、完成した卒業アルバムをどのような思いで受け取ってほしい?

誰もが初めて経験するコロナ禍で様々な事を判断することが難しい1年でしたが、アルバムを手にし写真を見た際に心によみがえる思い出は、心を温かくしてくれるはずです。「色々なことがあったけれど、学校生活で沢山のよい思い出がつくれてよかった」と感じていただけたならば、嬉しい限りです。
 

新学年が臨時休校から始まり、学校再開後も行事の中止・縮小など、異例の年となるであろう2020年度の学校生活。

先生やアルバム制作会社の担当者が話すように、大変な年だったと思うが、アルバムを受け取ることができた児童生徒は、この1年を思い出の一つとして将来思い返してほしい。

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