インドで注目を浴びた切れ味抜群の「tsumekiri」
岐阜県関市に本社を置く刃物メーカー「貝印」の爪切りが今、インドで売れている。現地ではコロナ禍で衛生意識が高まり、貝印の爪切りが「切れ味抜群」と人気を集めている。
貝印は世界から支持されているが、いまでも関市での刃物の生産にこだわっている。そこには、刀鍛冶以来続く、刃物づくりのスピリットがあった。
この記事の画像(14枚)インドで流通している貝印の爪切り。見た目は日本の物とほぼ同じだが、ピックのようなものが付いているのが特徴。
人気を呼んでいる理由について貝印の現地法人の担当者は、「コロナ禍の影響はあります。そのうえにインド人の間で、健康や衛生に対しての意識が高まっています」と話す。
インドでは手を使っての食事の習慣があり、それだけに新型ウイルスが蔓延するなか、いっそう手指衛生への意識が高まった。
中には、従来売られていた爪切りは切れ味が悪いため、歯で爪を切っている人もいた。そんななか注目を集めたのが、2018年に販売を始めた貝印の爪切りだった。
注目された理由は切れ味のよさ。爪が飛び散らない構造も、人気の1つとなった。
さらに爪の裏についた食べカスなどが取れるよう、ピックのようなものも付け、インド人の生活様式に合わせた。
商品名はあえて「tsumekiri」に。他の商品と差別化を図るため、日本語のネーミングにした。
爪切りは海を越えていま、インドで衛生管理に一役買っている。
昔も今も刃物の町から…刃物メーカー貝印が刀鍛冶の町“関”にこだわる理由
刃物の町、岐阜県関市で創業した貝印。
明治41年小型ナイフの製造からスタートした。
戦後、販売部門は東京へ移転したが、商品の根幹部分である刃物の製造はずっと岐阜県内で行っている。
貝印の遠藤宏治社長:
関には、800年前から刀鍛冶から始まって、長良川の水、「松炭」松ですね、それから良い土が採れたということで、歴史的な背景が連綿と受け継がれています
良質な材料に加え、刃物を作る上で必要なインフラが整っていることも、関を中心とした岐阜県に工場を置く理由だ。
今も東京ではなく、関に住む遠藤社長は「祖父の代から関に住んで、仕事をやってきた。関市には、こだわっている」と話す。
社長「刀づくりからのスピリットを」…貝印100年の技術の粋を集めた医療用メスで世界へ
貝印と言えば、カミソリや爪切りなど家庭用の商品を扱う印象だが、時代と共に変わってきた。今1番力を入れているのが、医療用メス。
中でも「皮膚科用のメス」に注力している。円筒状になっていて、クルッと回すと皮膚が切れる。遠藤社長は「普通にメスで切るよりも円筒状でやった方が、傷口が早く治るということもあるんです」と自信を見せる。
皮膚細胞をこそぎとる「トレパン」と呼ばれる医療用刃物。貝印が世界で50%以上シェアを誇る看板商品だ。医療用だけに、様々な大きさを求められる。
医療現場でも、100年以上続く貝印の技術への信頼。遠藤社長は、「刃物づくり、モノづくりのスピリット。刀づくりの伝統から、岐阜に生まれ育った人間としてこれからもやっていきたい」と話し、これからも関市から世界へその精神を発信し続ける。
(東海テレビ)