乳がんは骨転移対策が重要!

乳がんの遠隔転移は骨、肺、肝臓、脳などに生じることが多いのですが、約30%の患者さんでは、最初に骨に転移が起こります。そのため、乳がんは骨転移が生じてからの療養生活が比較的長くなります。また、多くのがんは最初の治療から5年を経て再発・転移がなければ「寛解」とされます。

しかし、乳がん細胞は増殖が比較的ゆっくりのため、最初の治療から10年を越えてからの骨転移もあり得ます。
以上のことから、乳がんでは骨転移対策がとくに重要となります。

骨が破壊されたスペースにがん細胞が住み着く!

骨転移は、乳房の近くや体幹部に近い骨(脊椎、肋骨、骨盤、大腿骨、上腕骨など)に生じやすいことがわかっています。では、骨への転移はどういったメカニズムで起こるのでしょうか?

骨は、古い骨を溶かす「破骨細胞」と、新しい骨を造る「骨芽細胞」が交互に働き、常に生まれ変わっています。乳がん細胞は、血液の流れにのって骨に移ると、「破骨細胞」の働きを過剰に活発にします。その結果、「破骨細胞」と「骨芽細胞」のバランスが崩れて、「破骨細胞」が骨をどんどん溶かしていきます。

すると、がん細胞は骨が破壊されて生じたスペースに住み着きます。しかも、造血機能等がある骨には、細胞が必要とする成分が豊富に含まれるので、がん細胞はこれを取り込み、さらに増殖するのです。

「痛み」というサインを見逃さないで!

骨転移には、主に4つの症状があります。
痛み ●骨折 ●脊髄圧迫 ●高カルシウム血症
最初の治療から何年か経っていても、体にしつこい痛みを自覚したときには、骨転移が疑われます。

痛みは、患者さんにしかわかりません。痛みという「悪化のサイン」を見逃さず、必ず主治医に伝えて下さい。
痛みが強いか、弱いかは問題ではありません。痛みが出現しているかどうかが、重要なポイントなのです。 

病とうまく付き合って生きる気持ちも大切

骨など、遠隔転移が認められた場合の病期はⅣ期と診断されます。ここまで進行すると、残念ながら、がんを根治することは出来ません。

治療は、薬物療法(化学療法、ホルモン療法、抗HER2療法)を行うことが基本です。通常、手術は行いません。薬物療法も、生活の質の維持を重視するため、抗がん剤よりも副作用の少ないホルモン療法等が優先的に行われます。

乳がんは、他のがんに比べて進行が緩やかです。骨転移が判明してから、10年以上も元気に過ごされるケースもあります。 病とうまく付き合いながら、前向きに生きていく気持ちを持つことも大切でしょう。


(執筆:Watanabe Chiharu)