信頼していた学校の先生から、もし性暴力を受けたとしたら…。
学校で教員による性暴力がなくならない中、12月には、教員など子どもと接する仕事につく人の性犯罪の「前科」を確認する新たな制度が始まります。
12月から国が始めるのは、教員などの性犯罪歴を照会する新たな制度。
果たして、子供たちを守る一手となるのでしょうか。
■30代の男性教員が男子生徒に下半身などの画像を要求か
10月、大阪府箕面市の私立高校で発覚したある問題。
【学校のコメント】「ある教員から生徒に対し、SNS上で個人的かつ極めて不適切な関わりがあったことが発覚いたしました」
箕面学園高校で、男性教員が複数の男子生徒に、性的な画像を要求していたことが明らかになったのです。
【学校関係者 Aさん】「断ったりしたときに、『試合に出られなくなるかもしれないよ』(と教員に言われたり)。(送った画像を)消すように指示があったと聞きました」
「newsランナー」の独自取材に答えた学校関係者は、「教員が部活動の顧問という立場を悪用していた」と証言。
学校によると、30代の男性教員が10人以上の男子生徒に対し、SNSで下半身などの画像を要求したり、買い物に誘ったりしていました。
教員は10月26日付で退職しています。
別の関係者によると、この男性教員は懲戒解雇になったということです。
学校関係者は、「生徒の一部は入学した当初から3年近く性被害を受けていた」と話します。
■男性の性被害の“特徴”
専門家は、教員と生徒という“力関係”に加え、男性の性被害の“ある特徴”が被害を見えにくくしていると指摘します。
【立命館大学OIC総合研究機構 宮崎浩一さん】「男性の被害者の場合、誰かに相談する、被害を訴えることにすごく時間がかかる。
これまでずっと、“男性が被害に遭うことはない”というイメージの方が強かったので、自分にあったことは気持ち悪いけれど、『性暴力だった』と名前を付けられるかというところの障壁がある」
■「無垢な少年を性のはけ口に」 長年抱えるトラウマに
30代の後藤慶士さんは、小学5年の時に家庭教師の男性から性暴力を受けました。家庭教師は勉強を教えてくれるだけではなく、遊び相手にもなってくれるお兄さんだったということです。
【後藤慶士さん】「小学生の勉強なんで隣同士になりがち。隣同士のところから、少しずつ膝の上に乗せてくるみたいな感じがあった」
少しずつ近づいていった、身体の距離。やがて、性的な行為へと変わっていきました。
【後藤慶士さん】「一番初めは多分キスから始まって。当然、性器への接触はありました」
しかし、小学生だった後藤さんは、それを性暴力だとは理解できませんでした。
【後藤慶士さん】「すごく仲のいいお兄ちゃんみたいな感じだったので、延長線上で遊んでもらってると思っていた。
(性暴力だと)気づいてからは男性恐怖症になってしまって。周りは気持ち悪がるだろうなとか、なついてるお兄ちゃんみたいな感じになっていたので、より言いづらい」
両親に打ち明けたのは、大人になってからでした。
長年、1人で抱えてきた経験は今も後藤さんを苦しめることがあります。
【後藤慶士さん】「先日、フラッシュバックを久々にして、すごくトラウマの1つとして残っていた。無垢な少年を性のはけ口として使っていく。自分の“都合のいい道具”に育てていくっていうことになるので、人間性として、どうかなと思いますし、気持ち悪いことだなと」
後藤さんは家庭教師からの性暴力でしたが、学校での教員による性犯罪は後を絶ちません。
■12月25日からスタート「日本版DBS」
文科省によると、2024年度に性犯罪・性暴力などを理由に懲戒処分を受けた教員などは247人。
懸念されるのは、過去に性加害をした教員が再び教壇に立つこと。
それを防ぐために、採用にあたって、過去に性暴力を行った教員を排除する仕組みがあります。
児童や生徒への性暴力で、懲戒免職や懲戒解雇になると教員免許が失われるのです。
そして、12月25日から新たに始まるのが、イギリスの制度をモデルにした「こども性暴力防止法=日本版DBS」。
【中司宏こども政策担当大臣】「子供への性暴力は、子供の権利を著しく侵害をする。生涯にわたって心身の発達に深刻な影響を与える。絶対に防がなければならない」
学校や保育所などが、子供と接する仕事に就く人に対して、不同意性交や痴漢、盗撮など対象となる性犯罪の前科を国に確認します。
その前科が確認されれば、子どもと接する業務に就かせないなどの措置が必要になります。
■過去の性加害を知るには“限界ある”課題
しかし、この網をくぐり抜けるケースも想定されます。
自主的な退職で教員免許の処分に至らず、DBSの対象となる前科がない場合、次の職場となる学校側は、過去の性加害を把握することが難しくなるのです。
大阪府内にある高校の教頭は、「教員を採用する時に、過去の性加害を知るには限界がある」と話します。
【大阪府内の高校の教頭】「実際は(性加害の過去が)あっても、教えてくれないと思う。一身上の都合と履歴書に書くでしょうから」
そのため、他校とも連携しながら採用の候補者について調べています。
【大阪府内の高校の教頭】「大阪府の私立高校から、(転職のため)履歴書を送ってきた場合は、かつてはしていなかったが、転職前の学校にどんな人ですかと聞く」
■「加害者が加害を行えない環境を」と専門家
教師の採用をめぐる転換点。
一方、憲法で職業選択の自由が認められている中、無制限に規制の対象を広げることができない事情もあります。
【立命館大学OIC総合研究機構 宮崎浩一さん】「有罪になっていないけれど加害を行った人たちは、また子供と関わる仕事に就くかもしれない。加害者が加害を実際に行えない環境をつくる方が、より重要」
安全であるはずの学校を、安全であり続けるために。
「日本版DBS」は対策のカギになるのでしょうか。
■「日本版DBS」は大きな一歩 しかし初犯を防ぐ制度ではない
こども家庭庁の審議会部会委員を務めるジャーナリストの岸田雪子氏はこのように話します。
【岸田雪子氏】「日本は子供を性暴力被害から守る取り組みというのは、今まで遅れていた。その意味では、この日本版DBSが作られたことは大きな1歩。ただこれで決して十分ではない。
なぜならば、これはあくまで前科を調べられるということなので、再犯つまり2回目、3回目の犯罪を防止するというものであって、初犯はこれだけでは防げない。
最初の性暴力をどう防ぐのかということは、いくつもポイントあるが、私は極めて重要だと思っているのは、性の学びだと思っている。
実は全国の公立学校で性暴力性犯罪によって懲戒処分を受けた教員に、『どんな行為をしたのか』を調査したものがある。それ見ると、実は触る、盗撮をするよりも多いのは性交なんです。
性交を子供たちはどこで学んでいるか。学校では性交は性教育の中でも外されていて、実際に教えてる学校はほとんどありません。
そうした中で子供たちは自分の身に起こっていることが、性被害だと気づけるだろうか。あるいはそれを周りの大人に訴えることができるだろうか。
私たちは性の学びを、タブー視せずに子供たちにどこでどんなふうに教えるべきだろうか。根本から議論する必要がある」
(関西テレビ「newsランナー」2026年11月4日放送)
