逮捕から58年後、一度は死刑が確定しながらも無実を訴え続け、再審=やり直しの裁判で無罪が確定した袴田巌さんの「袴田事件」。
そして、女子高校生を殺害した罪などでの逮捕から63年、無期懲役で服役した石川一雄さんが無罪を訴え、亡くなった今もなお、遺族が再審を求め続けている「狭山事件」。
2つの事件の「うそ」と「ほんと」から、戦い続ける2つの家族と、日本の司法が抱える問題を見つめるドキュメンタリー映画「うそがほんとに ほんとがうそに」が、10月31日に大阪の第七藝術劇場で公開され、金聖雄監督と劇中に登場する袴田さんの姉・ひで子さん(93)による舞台挨拶が行われた。
■93歳・袴田ひで子さん 大阪で舞台挨拶「法律が悪いからこうなる」
「大阪に来るのでおしゃれをした」というひで子さんは、花柄のブラウスに、30代の頃に給料から天引きして購入したという指輪をつけて登壇した。
93歳の今も、再審や冤罪のシンポジウムなどがあれば、地元の静岡県浜松市から各地を訪れている。
そこには、ある強い思いがあるからだ。
「巌だけが終われば、それでいいという問題ではありません。やっぱり法律が悪いから、こういうことになるんです。“再審法”も少しは変わるかと思ったけれど、ほんの少ししか変わらなかった」(袴田ひで子さん)
■再審法の見直しは5年後「あと5年ぐらいは私も大丈夫でしょう」
ことし7月、再審制度を見直す改正刑事訴訟法が成立した。
改正された法律では、再審が始まるまでの期間が長期化する原因と指摘され続けてきた検察の不服申し立て(抗告)の原則禁止が盛り込まれたものの、「十分な根拠がある場合は認める」とした例外を認めた。
さらに検察側が持つ証拠について、「再審の請求の理由に関連すると認められる証拠」の提出を裁判所が命じることになったが、証拠の全面開示は見送られるなど、冤罪の被害者や日弁連などが求めた改正とはならなかった。
一方で、制度を5年ごとに見直す規定が新たに設けられ、ひで子さんは、5年後の改正への意気込みを語った。
「また5年後に変わるという話もあります。だから、あと5年は頑張っていかなければならないと思っています。国にとっても初めてのことですから、そう簡単には変わらないのでしょう。でも、私は大改正してもらいたいと思っています。あと5年ぐらいは私も大丈夫でしょう」
■「狭山事件」亡くなった石川一雄さんに代わり妻が再審請求
ひで子さんが、弟の巌さんを“取り戻した”一方、無期懲役で服役し、仮釈放後、無実を訴え続けた「狭山事件」の石川一雄さんは去年、86歳で志半ば急逝した。
49年間、「開くことがなかった再審の扉」を、一雄さんに代わって今度は、妻の早智子さんが開けようとたたき続けている。
15年の記録を映画にした金監督は、映画が「狭山事件」再審開始の後押しになればと話した。
「僕はこの映画を通して、冤罪の理不尽さを知ってもらいたいと思っています。ひで子さんも、最初から今のように明るかったわけではありません。だからこそ、いい結果(再審無罪)が必要なんです。
早智子さんも、本当に苦しい状況にいます。その状況を一歩でも動かすために、映画が役に立てばと思っています」(金監督)
映画は全国で順次公開される。
■「狭山事件」とは
1963年に埼玉・狭山市で女子高校生が行方不明となり、その後、遺体で発見される。
警察は身代金を取りに来た犯人を取り逃がし、付近の被差別部落を中心に捜査を進めた末、石川一雄さんを逮捕。
一審は死刑判決、二審で無期懲役刑が言い渡され服役した石川さんは1994年に仮出所後、再審請求を続けてきたが、去年死去。
