埼玉県熊谷市は、消防署が毎日正午に鳴らすサイレンを2020年いっぱいで終了すると発表した。
 

出典:熊谷市
出典:熊谷市
この記事の画像(5枚)

このサイレンは熊谷市にある4つの消防署が正午を知らせる時報と、設備の点検を兼ねて毎日鳴らしてきたもので、中央消防署が作られた昭和30年ごろから続いているという。
しかし、一部の住民からサイレンを「騒音」だとする苦情が寄せられたことなどの理由から、来年から鳴らさないことを決めたという。
 

多くの人が聞き馴染んでいそうな音に苦情が寄せられるケースは他にもある。
編集部では1年前に、年越しの風物詩である「除夜の鐘」がうるさいとクレームがあり、鳴らす時間を深夜から夕方に前倒ししたお寺を取材している。
(参照記事:「除夜の鐘がうるさい」時間を前倒しするお寺増加…“効果”は薄れないかも聞いてみた
 

苦情で「除夜の鐘」を前倒しする寺も…
苦情で「除夜の鐘」を前倒しする寺も…

熊谷市の消防サイレンは、時間変更ではなく完全に無くなってしまうことが決定しているのだが、Twitterでは様々な意見が飛び交っている。

・一部の苦情でなんでもかんでも辞めるのはどうかと思う
・苦情を言ったのは何人ぐらいなのかとても気になる
・サイレンの音で気が付くから便利だったのに…
・必要という声が上がれば再開するのか?

長年暮らす地域住民の中には生活の一部になっていた人もいるだろうが、今回ネットでも話題になっているように実際どのくらいの人が苦情を言ったのか?逆に再開を望む声が集まればまたサイレンを鳴らすのか?
埼玉県熊谷市の消防総務課に聞いてみた。
 

苦情は年に数件です

――どのぐらいの苦情があった?

特に統計などは取っていませんが、こちらに来る苦情は年に数件ぐらいです。
その反面、長年続けてきたので市民のみなさんに親しまれてきた部分はあるかと思います。
 

――正午のサイレンを辞める理由は?

まず、サイレンに代わって「防災行政無線」が市内全域で流れるようになったので、それと役割が被っていました。
また、実はサイレンをお昼に鳴らす法的な根拠はなにもないんです。そして、県内近隣市町の消防署を調べてみたところ、消防庁舎でお昼にサイレンを鳴らすところはないことが分かりました。

それに加えて年に数件の苦情を頂きます。生活様式が変わり、サイレンを騒音だととらえる方もいらっしゃるのでしょう。これらの理由を総合的に判断して終了することになりました。
 

――生活様式の変化とは?

これはあくまで私見ですが、昔、畑仕事などをされている方の中には、消防署のサイレンを生活の目安にしていた人も、たくさんいらっしゃったと思いますが、それが変わってきたのでしょう。
 

防災行政無線で毎日正午に「熊谷市歌」を流している

実は、熊谷市は2007年に2つの消防署で正午のサイレンを中止している。さらに正確な時期は不明ながら、それより前に辞めた消防署も1つあるという。
その後、消防署の統合などを経て今回4つの消防署がサイレンを中止することで、正午を知らせるサイレンの音は完全に無くなる。
 

しかしその一方、熊谷市では市内の至る所にある防災行政無線で、毎日正午から約10秒間「熊谷市歌」を流している。これは無線のデジタル化事業が完了した2018年4月から市内全域で行われているそうだ。
 

――消防サイレンは本来どんなときに鳴らすもの?

例えば、消防署の近くで火災があった場合は、こういうリズムでサイレンを鳴らしなさい、などという事柄が法的に定められています。このため消防署にはサイレンが設置されているんです。

しかし今は、どこで火災があったなどの情報は、電話やメールによるサービスで案内できるようになっていますので、消防サイレン自体も鳴らす必要性があまりなくなってきています。
 

――正午のサイレンは点検も兼ねていたというが今後は?

サイレンを鳴らさず、電源が入るかどうかの点検は簡単にできます。
今後は、他の機材を点検するのと一緒に月に一回ぐらいの頻度になってくるかと思います。
 

――サイレン終了を惜しむ声は?

昨日12月1日に公表したんですが、惜しむ声は今のところ1件も入ってきていないですね。
 

――サイレンが必要だという声があれば再開する?

消防は公の機関ですので法的な裏付けがないと再開は難しいところがあります。
現状ではそういった声が、皆様から寄せられたとしても来年1月1日以降は、サイレンを鳴らさない方向です。
 

※イメージ
※イメージ

実は、消防署のサイレンと防災行政無線は正午の同じタイミングに流れているそうだ。
ちなみに防災行政無線への苦情はないのか、管轄する危機管理課と企画課に聞いてみたところ、どちらも担当者は記憶にないと回答。

サイレンを年内で終了する理由の1つには苦情もあるが、生活様式の変化や他のインフラが整備されたことなどが背景にあったようだ。
 

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。