「被害者が部下の職員であったことと、性交した事実については争いません。抗拒不能(抵抗できない状態)であったことについては否認し、争います」
2年ぶりに法廷に姿を現した元大阪地検・検事正の北川健太郎被告(67)。部下だった女性が酒に酔い、検事正と部下という関係で、抵抗できないことを認識しながら性的暴行を加えた罪について、こう述べて無罪を主張しました。
一方、被害を訴える女性は、PTSDと診断されるなど苦しみ続け、第三者委員会による調査を検察に求めたものの応じてもらえず、検事を辞職。
27日の裁判直前、女性は関西テレビに、北川被告に対峙することについて「すごく怖いが、罪を償わせなければいけない」とその覚悟を語りました。
■初公判では起訴内容を認めたが一転…
大阪地検のトップ・検事正だった北川被告は8年前の懇親会の後、酒に酔って抵抗できない状態の当時部下だったひかりさん(仮名)に性的暴行を加えた罪に問われています。
おととしの初公判で北川被告は「公訴事実を認め、争うことはしません。被害者に深刻な被害を与えたことを反省し、謝罪したい」と起訴内容を認めていました。
当時、現職の検事だったひかりさんは、初公判の後、「被害実態を伝えることで性犯罪を撲滅したい」と、会見で訴えていました。
【ひかりさん(おととし10月)】「性交をやめるよう訴えました。しかし、被告人は、それを無視して、『これでお前も俺の女だ』などと言って、性交を続けました」
しかし北川被告は、それから2カ月もしないうちに無罪主張に転じました。
■「すごく怖いが、罪を償わせなければいけない」
2年ぶりに法廷で開かれる裁判に向かうひかりさんに、北川被告と2年ぶりに対峙するという覚悟はどう決めたのか聞くと「すごく怖いが、罪を償わせなければいけない」と話しました。
【ひかりさん】「対峙するのはすごく怖いし同じ空気を吸うのもいやですけど、検事正が姑息な弁解を続けて被害者を苦しめ、社会に悪影響を及ぼしていますので、そういう犯罪者はきちんと罪を償わせなければいけない」
ひかりさんは、事件に関する誹謗中傷が検察庁内部で広がるなどしたため、第三者委員会による調査を求めるも叶わず、8月に検察庁を退職しました。
裁判にはひかりさんの夫も同行しました。
【ひかりさんの夫】「不安もありますけど、ようやく始まるということですね。これが進まないことには回復しないので。少なくともそういう意味では前向きにとらえています」
■ひかりさん「虚偽のストーリーが作れるんだなと思って怒りに震えた」
そしてきょう=10月27日、2年ぶりに証言台に立ち、無罪を主張した北川被告。
弁護側は、ひかりさんが北川被告を強く慕っていた関係が背景にあり、飲酒の影響もあって気が大きくなり、性交等に同意したと推認できると主張。
そのうえで当時の状況について、懇親会の後、ひかりさんは歩行や会話に支障はなかったことから、性的暴行を加えた際、酩酊状態にはなく、抗拒不能とは認められないとも述べました。
では、なぜ初公判で起訴内容を認めたのか?その理由について弁護側は、当初は早期に事態を終息させようと、認識とは異なるものの罪を認めたと説明しました。
【北川被告の弁護人】「検察組織に迷惑をかけたくないという強い思いから1日も早く裁判を終えて終息させることを考えた。
しかし、ひかりさんが検察批判を会見で訴え、罪を認める方針が誤っていたのではないかと思い悩み、実際の記憶と認識に従って主張を変更した」
■「被告は検事正という立場で性犯罪の被害者の心理も熟知していた」
一方、検察側は、ひかりさんが「帰りたい」と何度も懇願していたことや当時の体調から、抗拒不能で性交に同意していないと指摘。
さらに「被告は検事正という立場で性犯罪の被害者の心理も熟知していた」と述べ、北川被告が、性犯罪の被害者が被害を言い出しにくいことなどを認識していたと指摘しました。
27日から法廷での審理が再開した裁判の争点は、「抗えないほど酒に酔っていたのか」そして、「性交に同意していたと誤って信じるような状況があったのかどうか」の2点です。
■一転の無罪主張に「本当に恥知らずだなと思います」
閉廷後、ひかりさんは会見で胸の内を語りました。
【ひかりさん(27日午後4時ごろ)】「自己保身でこういう主張(同意があったと誤信)を繰り返していることに本当に腹立たしい思いと悔しい思いでいっぱいです。
頭のいい人が知識を悪用すると、一見破綻のない虚偽のストーリーが作れる。本当に恥知らずだなと思います」
来月6日には、ひかりさんへの被害者尋問が予定されています。
■尋問で中央に座るが…「私が座る場所はここじゃない」
すでに検事の職を離れたひかりさんは、その複雑な心中を関西テレビの取材に明かしました。
【ひかりさん(10月26日取材)】「証人尋問で中央の席に座るんですけど、私が座る場所はここじゃないと。被害者を守る検察官の席だって思うと思います。
被害者の方に落ち度はないんだっていうことを証明してもらえる場が刑事裁判だと思っていて、被害者が一歩前へ進んでいくっていうところを私は検事としてずっと見守ってきているし、私自身もそうあって欲しい」
裁判は来週以降も行われ、判決は来年3月に言い渡される予定です。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月27日放送)
