新潟市が旧・西堀ローサの今後の活用に向けて6つの案を示した。市の実質負担額は約85億円から約160億円に上る試算で、有識者からは「古町全体の将来像と一体で議論すべき」との指摘が相次いだ。昭和の新潟市を彩った地下施設の将来像が問われている。
かつては年間50億円を売上げた西堀ローサ
新潟市中央区古町地区の地下商店街だった西堀ローサ。
1976(昭和51)年にオープンし、ピーク時の売上は年間50億円ほどあったが、古町地区の衰退とともにお客が減少。2025年3月にその役割を終えた。
運営していた第三セクターは解散し、新潟市は貸し付けていた約9億円の債権を放棄。
市有となった旧・西堀ローサは『西堀地下施設』と呼ばれ、市はプロジェクトチームを立ち上げてそのあり方を検討している。
西堀地下施設を廃止しない…その理由
26年8月に開かれたプロジェクトチームの中間報告会。
地下の構造物に詳しい専門家から「廃止するには地下に埋まっているインフラ施設を移動する必要があり、大規模な工事となる。地下施設を再活用するよりも費用が高額になる」との指摘を受けた。
これにより、西堀地下施設の廃止に否定的な見方を示した中原八一市長。
民間事業者が施設の利活用に参入することを期待した上で、「せっかくの新潟の資産なので再活用していきたい。市民からは、市の財政を考えるべきという意見もある」と述べ、全面的なリニューアルよりも費用が抑えられる可能性のある“地下施設の分割活用”に関心を寄せた。
地下街?通路?6つの活用案
こうして新潟市が26年10月に示したのが、西堀地下施設の6つの活用案とそれぞれに伴う費用の試算だ。
いずれも地下2階の駐車場の使用を前提にしているほか、国からの交付金の活用を想定している。また、今後30年間使用した場合の維持管理費を含んだ金額だ。
【パターン①】
中央広場のみを通路として活用(市の負担約85億円)

【パターン②】
全体を通路として活用(市の負担約95億円)

【パターン③・④】
片側を地下街、片側を通路として活用する(市の負担約130億円)

【パターン⑤】
全体を地下街とし、中央から段階的に活用範囲を広げる(市の負担約145億円)

【パターン⑥】
全体を地下街としてフルリニューアルする(市の負担約160億円)

新潟市経済部の小野秀之部長は、「必要経費を積み上げるとかなりの金額になったが、安全に使用していくためにはやむを得ない」と説明したほか、片側を地下街として活用するパターン(③・④)と、全体を地下街として活用するパターン(⑤・⑥)の差額が予想よりも大きくなかったという認識を示した。
一方、廃止の場合にかかる費用は160~170億円と見込まれている。
「工事費用が安すぎないか」「駐車場は必要か」有識者の意見
6つの活用案が公表された後に開かれた有識者会議で、大阪公立大学大学院都市経営研究科の准教授・池田千恵子委員は、地下2階の駐車場の必要性をただした。
小野経済部長は、「駐車場の6~7割は(ふるまち庁舎・中央区役所などの)来庁時に使用されていた」と説明。「駐車場に関しては復活の声が非常に多い」と返答した。
池田委員は、「『地上の駐車場よりも地下2階の駐車場を維持したほうが人のにぎわいに波及する』などのストーリーがあれば、古町のビジョンにつながるのではないか」と指摘。
このほか、初期工事費の試算が安すぎるのではないかという意見に対して、市は、「事業が先延ばしされれば、今回の試算よりも増える恐れがある」と回答した。
「縦割りでは解決しない」古町全体のビジョンと西堀地下施設の関係性
活用案とともに議論となったのが、古町全体のまちづくりとの整合性だ。
一部非公開で行われた有識者会議のあと、早稲田大学理工学術院の教授・佐々木葉会長が「委員から最も多く上がった意見」として明かしたのは、“古町全体のビジョンと西堀地下施設の関係性について”だったという。
「今、別途検討されているという古町のビジョンでどういうものが出てくるか。やはり、街全体との関係で考えなければいけないという意見が複数の委員から出ていた」(佐々木会長)
「別途検討されている古町のビジョン」とは、現在、新潟市の経済部以外で検討されているもので、26年10月の時点では、西堀地下施設の検討とリンクしていないという。
小野経済部長は佐々木会長の言葉を受け、「お金のかかる話なので市民が納得できる使い方にするためには、西堀地下施設がどういう役割となって(他部署で)検討中のビジョンに資するのかが大きな観点だと思う」と述べた。
これに対し、佐々木会長は「縦割りではどんな問題も解決しない。オール市役所で考えて」と、アドバイスを欠かさなかった。
将来負担の可能性も…昭和の遺産はどこへ向かうのか
この日の有識者会議で、別の観点から目を引いた意見がある。NPO法人自治経営の三宅香織委員が指摘した、若い世代からの意見聴取についてだ。
現在、新潟市は若い世代から西堀地下施設の今後の活用について意見を募ろうとしているが、三宅委員は「『古町はどんなところだと思う?』というただのイメージ調査なのか。あるいは、場合によっては若い世代に将来負担が発生するかもしれないということを理解してもらった上で意見を募っているのか。ここは大事なところだと思う」
と強調した。
新潟市は今後、市内の大学で西堀地下施設の再活用に関して講義を行う予定であることを説明した。

26年12月には最後の有識者会議が開かれ、会議は市に報告書を提出。市は26年度中に活用方針を決定する考えだ。
西堀地下施設が古町再生の核となるのか、それとも新たな負担となるのか、賢明な判断が迫られている。

